15
「皆、隣村まで仕事に行くぞ。」
「…隣村?」
朝、ウーゴは俺等に告げる。
「昨日の夜、冒険者組合で勧められて。隣村の奥の山でゴブリン数体の目撃情報があって、様子を見て来て、見つければ討伐をって。」
「…隣村の山にゴブリン?」
「アルも理解している通りあの山は棲息範囲外ではあるんだけど…近くの森を逃れて新しく棲家を求めた個体の可能性もあるし。」
ウーゴが答える。
「準備してくれ。今夜は隣村に泊まるので泊まりの準備もよろしく。」
ウーゴの合図で俺等は準備をして出る。
隣村は隣接する山で山菜を採集したり、林業をしたりして生計を立てている集落である。牛車で到着した俺等は、宿舎へ荷を預けて山へ。
山と言っても標高は微々たるもの。それでも木々が密集して生えており高低差もあるので登りにくく、俺等は所々ある山菜採りに使われる木道に沿ってゆっくり山を登り、ゴブリンの姿、痕跡を探す。
「ウーゴ、疲れたし、ゴブリン居ねぇぞ!」
登り始めて暫く、早々にポロが根を上げる。1番重装備のクラウスも汗だくで足取りは重く、パメラも遅れている。ウーゴは足を止める。
「敵地でデカイ声出すなよ。」
「山の中探すよりデカイ声出して目立って、そしてアル見つけて貰えば終わるっしょ?」
「…まぁ、それは。」
ウーゴはポロの質問に対して歯切れを悪くして頬を掻く。そして俺を見た。俺は何故、冒険者組合が俺等に仕事を勧めたのか察する。
「お、来たぞ!…あ?」
ポロは木陰を指差す。ゴブリンである。
1体、2体…見える範囲でも10体。更に別の木陰より4体。俺は素早く周りを見る。
「ポロ!」
「…お、俺?」
「不味いぞ、ウーゴ!」
「あぁ、取り敢えず逃げるぞ!」
ウーゴが声を掛ける。狙われるのは俺、俺はゴブリンを連れて行くべく、木道を外れて山の中へと走る。ゴブリンは全匹、俺を追って来ている。
「アル!村側へ逃げても他の冒険者は居ないし、村も襲われる。取り敢えず撒くぞ!」
「撒くって…。」
俺は、俺の背後のゴブリンを追って来るウーゴと大声で話し、森を走る。
「ウーゴ!ポロは?」
「居るぞ。他の皆も来ている。」
「あの斜面で受ける。その間にゴブリンを倒せ。」
俺は土の盛上がる斜面を指差す。あの斜面を背にすれば背後を気にせず正面を向けて、ウーゴ、ポロにゴブリンの背後を任せられる。
「了解!」
俺は斜面まで辿り着いて反転、ゴブリンを見た。ゴブリンは鬼気迫る表情で俺を狙って突進して来る。俺は短剣に気を付けてゴブリンを受ける。
盾で受ける衝撃。
…そして地面の浮く感覚。
湿気で柔らかいのとは異なる、地面そのものの浮く感じである。
「オラァ!」
間髪入れずウーゴとポロが最後尾のゴブリンを斬りに突入して来る。
更に地面の浮く感覚は酷くなる。
足元で地面の崩れる音がした。
「ウーゴ、待て!」
俺はゴブリンの波の中でウーゴに伝えたが、時既に遅く次の瞬間、地面が抜ける。俺とゴブリン、そしてウーゴとポロが落下した。
「危ねぇ!」
響くポロの声、俺も天井を見上げて息を吐く。見上げる地面と空は遥か上ではあるが、地面の砂が柔らかく難を逃れたようだ。
俺はすぐ体を起こして立て直し、一緒に転落したゴブリンを見る。
ゴブリンの中には絶命している個体、怪我をして動けなくなっている個体もおり、動けるゴブリンは数体であった。俺とウーゴとポロは残りの数体のゴブリンを討伐する。
「良し、登るぞ!」
「あぁ。」
「焦るなよ。」
「ポロ!今、ここに俺とお前が居て、アルまで居るって事は、上はアルの囮無しのクラウスとエリシアとパメラで…最悪の場合死ぬ。急ぐぞ。」
ポロも徐々に状況を理解して顔を青くする。
「…待て、何の音だ?」
俺はウーゴとポロの会話を止める。砂の擦れる音…足元である。
「離れるぞ!」
俺等は穴の壁際へ逃げ、次の瞬間、砂の地面を割って、茶色の環形モンスターが現れる。
「…サ、サンドワーム?サンドワームかよ!」
ポロは、金等級冒険者でも苦戦するモンスターの名を連呼するのであった。




