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「…長閑で良い所。」
「風が最高に心地良いよ。」
俺等はシエラより牛車を利用し、半日程西へ移動した先にある川縁の町アルタベルクへ来ている。
アルタベルクへ来ている理由はアーマークラブと呼ばれるアルタベルク近郊の川に生息する陸カニ型のモンスターの討伐。アーマークラブは田舎の川に単体で棲息するモンスターで、ウーゴのリストの上位にある。
「アル、行くぞ。」
俺はウーゴの合図でアーマークラブの前に出る。アーマークラブは俺に気付くが鈍足で迫って来る事は無く、逆に俺が距離を詰める。
アーマークラブ最大の特徴は鉗脚の左右差と、鋼鉄の鎧を彷彿とする殻の硬度、俺は発達している左鉗脚の振り下ろし攻撃をパリィする。
「…マジか。」
往なした、とはお世辞にも言えず、感じるのは腕が千切れるかと思う程の衝撃、俺は左腕を2度目する。俺のパリィに合わせて左鉗脚を斬るべく特攻したポロの剣は真っ二つに折れた。
「エリシア!」
ウーゴがエリシアへ指示を出し、エリシアが酸ビンを投げる。ビンは左鉗脚の節に命中し、煙を上げ、体を溶解して行く。アーマークラブは声にならぬ叫声を出して泡を吹く。その隙にウーゴが剣を降り、今度こそアーマークラブの左鉗脚を斬り落とした。
「エリシア、続けて!」
「ウーゴ、お前は脚を!」
左鉗脚を失ったアーマークラブは鋼鉄の塊と同義である。エリシアもほぼ前衛まで来て甲殻へ向けて酸ビンを複数投げる。ポロは攀じ登って折れた剣を刺して殻を割り、ウーゴは歩脚と目を潰す。
後は地味で地道な作業である。
漸くアーマークラブを倒した頃には日も傾いて来た。
「早々上手く行かないよね。」
ウーゴは戦利品を回収しつつ俺を見て首を横に振る。新鮮であれば肉も売れて保存出来れば殻も売れるが、酸ビンを使ってしまったので売れるのは精々殻の欠片と左鉗脚だけ。旅費に加えてエリシアの調合する酸ビン代、折れたポロの剣代を差し引けば収支はマイナスである。
「ウーゴ、日が暮れるよ。」
「あぁ、アルタベルクへ戻って宿を取るよ。皆、今集める事の出来たものだけ回収して撤収で。」
クラウスが声を掛け、ウーゴも頷く。
「取り敢えずエリシアとパメラ、先に沐浴してくれ。その間に俺等は換金と食事の調達をして来る。俺とポロで換金、アルとクラウスで夕食で。」
アルタベルクは赤レンガ造りの家々を特徴とするシエラとは異なり、木造建築が多く、ウーゴは全員で泊まれるバンガローを1個借りて、俺等に指示を出す。俺はウーゴに金を貰ってクラウスと町へ。
夜のアルタベルクは新人冒険者の集まるシエラと異なり酒場も多く無く静かである。
「町も静かで良いよ。」
「…クラウスも田舎生まれ?」
「僕は北西部のナルタ村の生まれ。俺が1番上で他に弟と妹が5人居て…本当は早く仕送り出来るようにしたいんだけど…。アルは?」
「…俺はラナイラ村。」
「え!意外と近いよ。」
俺はクラウスを見上げて答え、クラウスは地元談義でテンションを上げる。
「他の皆も田舎なのか?」
「エリシアとパメラは知らないけれど、ポロはティーロックで、ウーゴは王都セラヴィだよ。」
「…何でウーゴ、態々西のシエラまで?養成学校も王都の本校に行けば良いのに。」
「…実はそこは僕も知らなくて。前に聞いた事あるんだけど、笑って誤魔化すんだよ、ウーゴ。」
「…へぇ。」
俺等はその後、他愛も無い会話をし、閑散としている町の中心へと歩くのであった。




