第9話:おじいちゃんの腰痛と、湯治(とうじ)作戦
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頑固薬師ヘルメスとも打ち解け、いよいよ平和なスローライフへ……と思いきや、70歳の体に「異世界の洗礼」が容赦なく襲いかかります!
「あたたたた……! あかん、動けん……!」
翌朝。俺は布団の中で、完全にフリーズしていた。
昨日、調子に乗ってヘルメスに腐葉土の作り方を実演指導したツケが回ってきたのだ。
何度も腰をかがめて土を掘り返したせいで、俺の腰は文字通り「鉄板」のようにカチコチに固まっていた。
「健一おじいさん!? どうしたの!?」
部屋に飛び込んできたリリアが、青ざめた顔で駆け寄ってくる。
「腰が……腰が悲鳴を上げておる……。すまんがリリアさん、わしの腰の下に丸めた布を敷いてくれんか……」
「大変! 今ヘルメス師匠を呼んでくるね!」
数分後、薬箱を抱えたヘルメスが慌ただしく駆け込んできた。
「健一殿! 大丈夫か! 湿布薬の試作品を持って……む?」
俺の腰に手を当てて診察を始めたヘルメスが、うーむと首をかしげる。
「骨折や打撲の類いではないな。長年の疲労と、昨日の過度な作業による筋肉の収縮……要するに『老衰に伴う慢性の腰痛』じゃな。こればかりは上級の回復魔法でも一時ごまかせる程度で、根本治療は難しいぞ」
「分かっておるよ……地球にいた頃からの付き合いだからな……」
俺は痛みに耐えながら苦笑いした。回復魔法ですら「加齢による腰痛」は完治できないらしい。
異世界のシステムも、妙なところでリアルだな。
「温めれば……少しは楽になるんだがねぇ。どこかに温かい温泉でも湧いていればいいんだが」
「おんせん……? ああ、湯が湧き出る『霊泉』のことか?」
ヘルメスが指をポンと叩いた。
「この村から半日ほど歩いた山奥に、温かい水が湧き出る硫黄の谷がある。危険な魔物も出んが……道中の山道が厳しくてな、村の者もめったに行かんのじゃ」
「半日……山道……」
今の俺の腰で半日歩いたら、途中で命を落とす自信がある。
「じゃあ、車押し(リヤカー)を作ろう!」
リリアが拳を握りしめて提案した。
「リヤカー……?」
「健一師匠が前に教えてくれたでしょ! 木の輪っかと台車を組み合わせれば、おじいさんを乗せて押していけるって!」
「おお、あの時の雑談を覚えておったのか……!」
こうして、俺の腰痛を治すための「異世界・温泉バカンス計画」が急遽持ち上がったのである。
トールたち村の若い衆が突貫工事で頑丈な木製リヤカーを作り上げ、俺は毛布にくるまれてその上に乗せられた。
「よし、健一の頭領! 温泉まで安全にお送りしますぜ!」
「安全運転で頼むよ、トールさん……揺れると腰に響くからね……」
エルフの若者たちにリヤカーを押されながら、俺はドナドナのように山道を進んでいく。
70歳にして、異世界で「湯治」に向かうことになるとは。
(やれやれ、どこへ行っても腰痛との戦いは終わらんなぁ……)
ガタゴトと揺れるリヤカーの上で、俺は青空を見上げながら、まだ見ぬ異世界の温泉に思いを馳せるのだった。
第9話をお読みいただきありがとうございました!
チートなし70歳最大の敵、それは「慢性の腰痛」!
次回、おじいちゃんは無事に異世界の温泉に辿り着き、腰を癒やすことができるのか……!?




