第7話:おじいちゃんの収穫祭と、本物の薬師
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ツノネズミを撃退し、一躍村の「知恵者」として一目置かれるようになった健一おじいちゃん。
今回は、放置されていたあの薬草畑にいよいよ大きな変化が訪れます!
ツノネズミ騒動から一週間が経過した。
「よしよし……いい顔をしておるな」
俺は杖をつきながら、朝日がやわらかく差し込む斜面の畑に立っていた。
腐葉土をたっぷり含んだ畝の上で、ポックリ草たちが青々と、いや、少し黄金色の光を帯びながら瑞々しく葉を広げている。
かつて湿地で根腐れを起こしかけていたひょろひょろの姿はどこにもない。
茎は太く、葉の先まで張りがあり、生命力に満ち溢れていた。
「健一師匠ー! 見て見て、これ!」
リリアが泥だらけの手で、一本のポックリ草を慎重に掘り起こして見せてくる。
その根は、俺が地球で見ていたゴボウのように太く、力強く張っていた。
「すごいよ……! 今までのポックリ草の三倍……ううん、五倍くらい根っこが太い! こんなの、師匠の調合本にも載ってないよ!」
「ふむ、予想以上の出来栄えだな。腐葉土の栄養と、朝日の光合成がうまく噛み合ったらしい」
俺は痛む腰を庇いながら、しゃがみ込んでその太い根にそっと触れた。
すると、指先から微かな温もりが伝わり、ポックリ草全体が『ぽわん』と淡い金色に発光した。
(やっぱり、この『緑の指』とやらは伊達じゃないらしいな……)
70年培った知識に、この世界の僅かな魔力が作用しているのだろう。
特別な魔法は使えなくても、丹精込めて育てた作物が応えてくれる感覚は、地球の家庭菜園時代と同じで何とも心地よかった。
「これなら、隣町の流行り病に効く特効薬がたくさん作れるよ! 本当にありがとう、健一師匠!」
リリアが感激のあまり俺の首に抱きついてくる。
「おっとっと……リリアさん、おじいちゃんの腰が折れてしまうよ」と苦笑いしながらも、目頭が熱くなるのを感じた。
「おい、リリア! 一体どういうことだ!?」
その時、坂の下から怒鳴り声のような低い声が響いた。
振り返ると、立派な薬草鞄を肩にかけた、長頭の気難しそうな老エルフが喘ぎながら坂を登ってきていた。
「し、師匠!? 帰ってきたの!?」
「隣町から戻ってみれば、村人たちが『リリアの新しい師匠が害獣を追い払った』だの『伝説の薬草を育てた』だの大騒ぎしておる! 留守の間に怪しい老いぼれを家に連れ込みおって……ん?」
息を切らして駆け寄ってきた老薬師――リリアの師匠であるヘルメスは、俺たちの足元に並ぶ太いポックリ草を見た瞬間、言葉を失って固まった。
「な……なんじゃこのポックリ草は……!? 茎の太さ、魔力の充満度……馬鹿な、こんな極上品、王都の薬草園でもお目にかかれんぞ!?」
ヘルメスは地面に膝をつき、震える手でポックリ草に触れた。
「これを……この老いぼれが育てたとでもいうのか……!?」
ヘルメスが驚愕の眼差しで俺を見上げる。
俺は温かい茶を一口啜り、いつものようにフッと深みのある笑みを浮かべた。
「いやあ、ただの……70年の経験がある年寄りですよ」
異世界の本物の薬師を前に、俺の「知恵袋スローライフ」はさらに面白い展開になりそうだった。
第7話をお読みいただきありがとうございました!
ついに帰ってきたリリアの師匠・ヘルメス!
本物の薬師も驚愕するポックリ草の出来栄えに、おじいちゃんの評価はさらに高まることに……!?




