第5話:おじいちゃんの知恵袋と、村の困りごと
第5話をお読みいただきありがとうございます!
移植作業を終え、村に戻った健一おじいちゃん。
ただの「お留守番」では終わらないのが、70年ものの人生経験です……!
「はー、生き返るわい……」
リリアの家に戻った俺は、木の椅子に深く腰掛け、温かいお茶(のような香草茶)を啜っていた。
体はガタガタだが、やり遂げた感はある。
70歳になってまさか異世界で一仕事終えた後の茶を味わうことになるとは、人生何が起こるか分からない。
「健一師匠、お疲れさま! スープ温め直すね」
「ああ、すまんねリリアさん。助かるよ」
パチパチと薪がはぜる音を聞きながら一息ついていると、外の通りからドタバタと慌ただしい足音が近づいてきた。
「リリアちゃん、大変だ! 師匠はおらんのか!?」
勢いよく扉が開いて飛び込んできたのは、額に汗を浮かべた体格の良い中年男性だった。粗末な革の胸当てをつけている。村の自警団か何かだろうか。
「トールさん? 師匠なら隣町の流行り病の治療で、あと数日は戻らないよ?」
「なんだと……! くそっ、よりによってこんな時に!」
トールと呼ばれた男はガシガシと頭をかきむしる。
「どうしたの? 何かあったの?」
「いや、村の備蓄庫の干し肉と穀物が、害獣に荒らされ始めてな。このままだと冬を越す前の貴重な食料が全滅しちまう。師匠の持ってる『魔除けの香』を分けてもらおうと思ったんだが……」
「ええっ!? でも、魔除けの香は師匠が調合の材料を持って出かけちゃったから、今は在庫がないよ!」
「そんな……! 八方塞がりじゃないか……!」
トールが頭を抱えて絶望的な声をあげる。どうやら薬師の師匠がいないせいで、村の危機に対応できないらしい。
俺は静かにお茶をすすりながら、二人の会話を聞いていた。
害獣、食料荒らし、魔除けの香がない……。
(ふむ……異世界の害獣がどんなものかは知らんが、やることは地球のネズミやイタチと大差ないんじゃないか?)
俺は「よっこいしょ」と重い腰を上げ、杖をつきながら二人の方へ歩み寄った。
「トールさん、とおっしゃったかな。少し話をいいかね」
「ん? 誰だこのじいさんは……リリアちゃんの親戚か?」
「私の『薬草の師匠』の健一おじいさんだよ! すごく物知りなんだから!」
リリアが胸を張って自慢する。
師匠の師匠というややこしい立ち位置になっているが、今は突っ込まないでおこう。
「その害獣というのは、どういった習性があるんだ? 匂いに敏感だったり、暗がりを好んだりするのかね?」
「え、ええと……『ツノネズミ』っていう体長30センチくらいの魔物でな。すばしっこくて、夜になると忍び込んで木箱をかじり破るんだ。匂いにはすごく敏感で、特にすっぱい匂いや刺激臭を嫌うんだが……だからこそ魔除けの香が効くんだよ」
トールの説明を聞いて、俺の頭の中で70年分の引き出しが「カチャリ」と音を立てて噛み合いました。
「ふむ……刺激臭を嫌う、か。リリアさん、この村に『唐辛子』……いや、かじると口の中が辛くなるような赤い実や、ツーンと鼻に抜ける強い草はあるかね?」
「えっ? あ……『カラカラの実』なら、裏山にたくさん生えてるけど……辛すぎて誰も食べないよ?」
「よし、それだ」
俺はニヤリと口角を上げた。
「魔除けの香がなくても、害獣を追い払う方法ならいくらでもある。地球の……いや、わしの故郷に伝わる『知恵』を見せてあげようじゃないか」
剣を振るう必要も、高度な魔法を使う必要もない。
害獣駆除なら、70年の歴史を持つ「おばあちゃん(とおじいちゃん)の知恵袋」の出番だ。
第5話をお読みいただきありがとうございました!
エルフの村を襲う「ツノネズミ」の害獣被害!
魔法の香がなくても、健一おじいちゃんの生活の知恵(害獣対策)が牙をむく……!?




