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『転移したけど70歳のままだった件〜エルフの村で知識チート(※ただの家庭菜園)を始めます〜』  作者: 凪塩 未来


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第4話:老体と桑と、小さな奇跡

第4話をお読みいただきありがとうございます!


腐葉土を使ったポックリ草の移植作戦が本格始動。

しかし、70歳の体に「農作業」の試練が容赦なく襲いかかります……!

「いっちに、いっちに……よし、リリアさん、そこに土を盛って畝(うね)を作るんだ」


「こう? 健一師匠!」


「そうそう、上手いもんだ。水はけを良くするために、少し高めに土を寄せるのがコツだな」


作業を開始して約一時間。

元気いっぱいにクワを振るうリリアの横で、俺は木の枝を杖代わりにし、完全に指示役に徹していた。……というか、そうせざるを得なかった。


(あかん、マジで腰が砕ける……!)


最初に少しお手本を見せようとクワを振り下ろした瞬間、「ピキッ」と腰の奥で不穏な音が響いたのだ。

冷や汗を流しながら「師匠たるもの、弟子に作業を見守るのも指導のうち」と誤魔化し、それ以来はずっと口だけを動かしている。


リリアの手際の良さは素晴らしい。

エルフ特有のしなやかな身のこなしと高い体力のおかげで、あっという間に見事な畝が三本出来上がった。


「ふぅ……! 師匠、移植完了したよ!」


斜面の腐葉土に植え替えられたポックリ草たちが、木漏れ日を浴びて気持ちよさそうに葉を広げている。


「うむ、ご苦労だったな。あとは根が張るまで、朝夕に少しだけ水をやればいい。……どれ、様子を見てみよう」


俺は痛む腰を摩りながらポックリ草に近づき、そっと葉に触れた。


その時だった。


(……ん?)


指先から、ほんのりと温かい「感覚」が伝わってきた。

まるで植物の脈動のような、微弱な電流のような不思議な感覚だ。

驚いて手を引っ込めると、植え替えたばかりのポックリ草の葉が、微かに金色に輝いた気がした。


「え……? 師匠、いまポックリ草が……!?」


リリアが目を見開く。


「いや、光った……よな? わしの見間違いか?」


「ううん、光ったよ! ポックリ草が魔力を吸収して元気になるときに光るの! でも、こんなに一瞬で反応するなんて……師匠、もしかして『緑の指(グリーンサム)』の加護を持ってるの!?」


「み、緑の……なんだって?」


「植物の気持ちが分かって、成長を促進させる伝説のスキルだよ! 昔の本で読んだことある!」


緑の指:要するに園芸上手な人を称える地球の言葉だが、この世界では一種の特別な才能(スキル)として扱われているらしい。


「いやぁ……ただの70年の経験とカンだと思うんだがねぇ……」


俺は苦笑いしながら、金色がかった自分の瞳を思い出した。

鏡で見たあの瞳の色。

チート能力はないと思っていたが、もしかすると70年の「知識」とこの異世界の「魔力」が、何か小さな化学反応を起こしているのかもしれない。


「すごいや、健一師匠! これなら絶対に美味しいポックリ草がたくさん育つよ!」


無邪気に喜ぶリリアの笑顔を見て、俺は小さく息を吐いた。


「まあ、焦らず気長に育てようじゃないか。植物も人間も、無理はいかんからな」


「はーい! あ、そろそろお昼だから、お家に戻ってご飯にしよう?」


「そうだな。……帰りは、もう少しゆっくり歩いてくれると助かるよ」


膝と腰に手を当てながら、俺は苦笑交じりに歩き出した。

若返りも最強の魔法もない。けれど、この異世界での「おじいちゃん生活」は、思った以上に悪くないかもしれない。

第4話をお読みいただきありがとうございました!


ただの家庭菜園知識かと思いきや、まさかの「緑の指(グリーンサム)」疑惑……!?

健一おじいちゃんの異世界スローライフ、少しずつ軌道に乗り始めています!

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