第2話:ポックリ草と、70年目の新弟子
第2話をお読みいただきありがとうございます!
膝の痛む70歳のおじいちゃんですが、早くも知識という名の「武器」が役に立ちそうな気配です。
楽しんでいただけたら幸いです!
「……で、でも健一おじいさん! ポックリ草は、この『静寂の森』の湿地帯にしか生えない貴重な薬草なのよ? 朝日の当たる斜面なんて、日照りで枯れちゃうんじゃ……」
リリアはスープの器を抱えたまま、半信半疑といった様子で首をかしげる。
「そこが素人考えというやつだな、リリアさん」
俺はフッと一口含みを持たせて笑ってみせた。
だてに70年、人生の酸いも甘いも噛み分けてきたわけじゃない。
こういう時は、少しだけ勿体ぶって話すのがコツだ。
地球の孫に昔話を聞かせる時の感覚に近い。
「直射日光をそのまま当てれば当然枯れる。
だから『落ち葉の腐葉土』と『朝日』なんだ。
日中の強い日差しは木々の木漏れ日で遮りつつ、東からの柔らかい光だけを数時間当てる。
そうすれば光合成が促され、根に栄養が蓄えられる。おまけに、腐葉土が適度な保水性と排水性を両立させて根腐れを防ぐんだよ」
「な、なるほど……! 日陰すぎると根が細くなり、日に当たりすぎると枯れる……だから『朝日の当たる斜面』……!」
リリアの瞳がキラキラと輝き始める。少女の素直な反応に、なんだか鼻が高くなるな。
地球で孫に家庭菜園のトマトの育て方を教えていた時を思い出す。
「よし、決まり! おじいさん、ちょっと待ってて!」
リリアはバタバタと部屋を飛び出していった。
華奢な体つきに見えて、案外すばしっこい。エルフの身体能力というやつだろうか。羨ましい限りだ。
俺が急に立ち上がったら、間違いなく腰がいってしまう。
しばらくすると、リリアは奥の部屋から大きな革張りのノートと、羽ペンを持って戻ってきた。
「おじいさん! 私に……私に薬草の育て方を教えてください! この村の薬師である師匠が、いま隣町の流行り病の治療で出かけてて……村の薬草が足りなくなってるの!」
「ほう、流行り病か」
「うん。だから、ポックリ草をたくさん、早く育てられるなら、村のみんなを救えるかもしれないの! お願い、健一師匠!」
「し、師匠!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
70歳にして、異世界でエルフの少女から「師匠」と呼ばれることになるとは。
「まあ……わしで分かることなら、いくらでも教えるがね。だが、まずは現場を見ないと何とも言えんよ。そのポックリ草が生えている場所へ案内してくれるか?」
「本当!? ありがとー、おじいさん……じゃなくて健一師匠!」
飛びつかんばかりの勢いに苦笑しながら、俺はよっこいしょ、と声を上げて立ち上がった。案の定、膝がピキッと鳴る。
(やれやれ……異世界無双とはいかないが、老後の暇つぶしにしては上出来な冒険になりそうだな)
こうして、70歳の俺とエルフの少女による、怪しい薬草栽培プロジェクトが始動したのだった。
第2話をお読みいただきありがとうございました!
エルフの少女・リリアから、まさかの「師匠」呼びをされてしまった健一おじいちゃん。
果たして地球の家庭菜園知識は、異世界の薬草にも通用するのか……!?
「おじいちゃんの知恵袋、がんばれ!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や、下の評価欄から評価をよろしくお願いいたします!




