第18話:おじいちゃんの特製料理と、真っ赤なソース
第18話をお読みいただきありがとうございます!
「龍の落とし物」こと異世界トマトの収穫に大成功した健一おじいちゃん。
今回は、そのトマトを使った地球の「絶品おばあちゃんレシピ」で、村の食卓に大革命を起こします!
「健一おじいさん、これ全部トマトの収穫だよ!」
リリアがカゴいっぱいに採ってきたのは、ツヤツヤと輝く真っ赤なトマトたちだ。
「緑の指」と腐葉土の相乗効果は凄まじく、畑からは毎日大量の完熟トマトが収穫できていた。
そのまま食べても絶品だが、これだけの量があると生食だけでは勿体ない。
「よしよし、豊作だな。リリアさん、今日はこのトマトを使って、我が家の特製スープを作るとしようか」
「トマトのスープ? でも、お肉と野菜を煮込むだけじゃないの?」
「ふふふ、ただ煮込むだけじゃないよ。『炒めて旨味を凝縮させる』んだ」
俺は痛む腰を摩りながら台所に立った。
まずはトマトを大ぶりに切り分ける。
トールが差し入れてくれた魔獣のバラ肉と、村で採れる甘みのある根菜(タマネギに似た野菜)も細かく刻んだ。
鍋を火にかけ、潰したニンニクと香草を少量の油で炒めて香りを立たせる。
そこに肉と野菜を投入し、表面に焦げ目がつくまでじっくりと炒めた。
「わぁ……これだけでもすごくいい匂い!」
「ここからが本番だ」
刻んだ大量のトマトを鍋に投入!
火を通すにつれて、トマトからジュワッと濃厚な水分が溢れ出し、肉の脂と混ざり合って美しい鮮紅色のスープへと変化していく。仕上げに塩と少量の蜂蜜、隠し味に香草を散らしてじっくりコトコト煮込むこと三十分。
「できたぞ。『特製トマトポトフ』だ」
器に盛り付けられたスープは、肉の旨味とトマトの甘酸っぱい香りが立ち上り、見るからに食欲をそそる。
ちょうど薬調合の作業を終えて顔を出したヘルメスと、力仕事の合間に立ち寄ったトールにも一杯ずつ振る舞った。
「な、なんじゃこの紅いスープは……? トマトを加熱するだと?」
「まあまあ、熱いうちに召し上がれ」
ヘルメスとトールは半信半疑のまま、木のスプーンでスープと肉を掬い、口へと運んだ。
次の瞬間――ふたりの動きがピタリと止まった。
「――ッ!!???」
「う……うまい……うま過ぎるぞ健一の頭領!!」
トールが叫ぶように声をあげた。
「肉の旨味がスープ全体に溶け込んでやがる! それにトマトの酸味のおかげで、脂っこさを全然感じねぇ! スプーンが止まらねぇぞ!」
「ば、馬鹿な……! 加熱することでトマトの甘みと旨味が何倍にも膨らんでおる……! 単に生のまま食べるより、遥かに体に染み渡る滋味深さじゃ……!」
ヘルメスも目を見開き、なりふり構わずスープを口へ運び、あっという間に器を空にしてしまった。
「おかわりはあるかね、健一殿!?」
「俺にももう一杯頼む、頭領!」
「ふふふ、たくさん作ってあるから焦らなくていいですよ」
俺は温かいお茶を一口啜り、美味しそうにスープを飲むみんなの姿を目を細めて眺めた。
地球で妻と一緒に作っていた家庭の味。
特別な調味料も魔法もないけれど、「知恵」と「工夫」ひとつで、異世界の食卓はこんなにも温かく、豊かになる。
「健一おじいさん、私、お料理も弟子にしてください!」
目を輝かせるリリアの言葉に、俺は「はいはい」と優しく微笑むのだった。
第18話をお読みいただきありがとうございました!
トマトを使った特製ポトフで、異世界の食卓に大革命を起こした健一おじいちゃん!
料理の知恵も加わり、おじいちゃんの「知恵袋無双」はますます広がっていきます。




