第16話:おじいちゃんと、謎の黒い種
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宴を終え、再び平和な日常に戻った健一おじいちゃん。
しかし、お隣の獣人族から「お礼」として届いたのは、なんと正体不明の「謎の黒い種」でした……!
宴の翌朝。
無事に村へと戻ってきた俺たちを待っていたのは、ルークの集落の使いが届けてくれた大きな木箱だった。
「健一おじいさん! 獣人族のみんなからのお礼だって!」
リリアがワクワクした様子で木箱の蓋を開ける。
中には珍しい果実や布製品、そして小さな革袋が入っていた。
俺が革袋の紐をほどき、手のひらに中身をあけてみると――コロコロと転がり出たのは、艶のある小さな黒い種だった。
「む……? これは何の種じゃ?見たことがないな」
ヘルメスが拡大鏡を取り出して覗き込む。
「獣人族の古い伝承で『龍の落とし物』って呼ばれてる種らしいよ。どんなに植えても芽が出なくて、誰も育て方が分からないんだって」
「芽が出ない、ねぇ……」
俺は黒い種を指先でつまみ、じっくりと観察した。
表面はプラスチックのようにカチカチに硬く、爪で引っ掻いても傷ひとつ付かない。
(ふむ……これは地球でいう『硬実種子』の類いだな。蓮の種やウルシの種みたいに、種皮が硬すぎて水や空気を吸えないパターンだ)
誰も育てられない「伝説の種」などと聞くと難しそうに思えるが、原理さえ分かれば対処は至ってシンプルだ。
「リリアさん、やすり……いや、少し目の粗い平らな石を持ってきておくれ」
「え? 石……?」
俺は受け取った石の表面に、黒い種をこすりつけた。ガリガリと音を立てて、種の端っこにほんの少しだけ傷をつけ、中の白い部分を露出させる。
「健一殿!? 何をする、種を傷つけては台無しになるではないか!」
「これでいいんだよ、ヘルメスさん。皮が硬すぎて水が吸えないなら、水が入る『抜け道』を作ってやればいい。あとは……そうだな、ぬるま湯に一日浸けておくとするか」
傷をつけた種をぬるま湯の入ったコップに沈めると、カチカチだった種皮が少しずつ水分を吸い、微かに膨らみ始めた。
「あ……! 種が大きくなってる……!?」
リリアが驚きの声をあげる。
「あとは明日、あの腐葉土の畝に植えてやるだけだ。どんな芽が出てくるか、楽しみじゃないかね」
「うーむ……本当に芽が出たら、それこそ異世界薬学の歴史がひっくり返るぞ……」
ヘルメスが呆れたように、しかし期待に満ちた目でコップを見つめていた。
70歳の家庭菜園知識は、誰も発芽させられなかった「伝説の種」すらもあっさりと攻略してしまうかもしれない。
俺は温かい茶を啜りながら、明日の種まきに思いを馳せて微笑んだ。
第16話をお読みいただきありがとうございました!
獣人族から贈られた「発芽しない謎の種」!
地球の「種皮削り(傷つけ処理)」の技で、ついに発芽の兆候が……!?




