第15話:おじいちゃんと、獣人族の感謝祭
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草木灰と土壌改良で見事に獣人族の畑を蘇らせた健一おじいちゃん。
集落のピンチを救ったお礼に、獣人族から思わぬ「ご馳走」が振る舞われることになります!
「健一の老賢者様! 本当に、本当にありがとうございました!!」
集落の長である大柄な獅子獣人の男が、俺の前で深々と頭を下げた。
畑が見事に蘇り、飢餓の恐怖から脱した集落は、まるで祭りでも始まったかのような狂喜乱舞の騒ぎになっていた。
「いやいや、頭を上げてください長さん。わしはただ、昔取った柄杓で知恵を出しただけですよ」
「滅相もない! 貴方様がいらっしゃらなければ、今年の冬に我が一族から何人の餓死者が出ていたか……! さあ皆様、今夜は宴です! 最高の宴で老賢者様をもてなすのです!」
『おおおおおーっ!!』
歓声が山々にこだまする。
広場には巨大な焚き火が焚かれ、何頭もの巨大な肉(どうやら異世界の猪のような魔物らしい)が丸焼きにされ始めた。
香ばしい脂の匂いが漂ってきて、胃袋がグウと鳴る。
「健一おじいちゃん! これ、おいらたちの集落の名物なんだ! 食べて!」
ルークが満面の笑みで差し出してきたのは、こんがりと焼けた大きな肉塊だった。
熱々の肉にかじりつくと――ジューシーな旨味と独特のスパイスが口いっぱいに広がる。
「……う、美味いな……! 肉質が柔らかくて、臭みがまったくない!」
「ふふん、この『ハーブ焼き』は、おじいちゃんが教えてくれた腐葉土の近くに生えてる草で味付けしたんだよ!」
「ほう、あの香草か。臭み消しにピッタリだったわけだな」
俺が美味そうに肉を食んでいると、リリアとヘルメス、そしてトールたちも肉や自家製の果実酒を片手に集まってきた。
「健一殿……あんたは本当に大したものじゃな」
ヘルメスが果実酒の杯を傾けながら、しみじみと呟く。
「薬草の育て方を変え、害獣を追い払い、温泉を開発し、果ては獣人族の畑まで救ってしまう……。魔法も使わん老いぼれ(失礼)が、これほどの偉業を次々と成し遂げるとは」
「がはは! ヘルメス師匠、健一の頭領を舐めちゃ困りますぜ! 頭領は俺たちの英雄なんだから!」
トールが豪快に笑いながら俺の肩を叩く。強烈な衝撃に「フゴッ」と妙な声が出たが、心地よい温もりが胸を満たしていく。
「健一おじいさん、ここに来て良かった?」
リリアが銀色の瞳を細め、首をかしげて尋ねてきた。
「ああ……最高の気分だよ、リリアさん」
俺は温かいお茶(今夜は特別に果実酒を一口だけいただいた)を啜り、賑やかな宴の風景を眺めた。
地球での70年は、決して悪い人生ではなかった。だが、定年退職してからの毎日は、どこか消化試合のような寂しさがあったのも事実だ。
ここ異世界では、俺の70年分の些細な知識や経験が、誰かの笑顔に直結している。
若返りも、最強の魔法も、伝説の剣もない。
けれど、ここには「必要とされる喜び」と「かけがえのない仲間たち」がいる。
(70歳からの異世界生活……悪くない。いや、最高の第二の人生じゃないか)
夜空に広がる紫色の星々を見上げながら、俺は皺だらけの顔に、今日一番の満足気な笑みを浮かべたのだった。
第15話をお読みいただきありがとうございました!
獣人族の集落での賑やかな宴と、健一おじいちゃんのしみじみとした決意。
チートがなくても、知識と優しさで異世界を豊かにしていくスローライフはまだまだ続いていきます!




