第14話:おじいちゃんの土壌改良と、奇跡の灰
第14話をお読みいただきありがとうございます!
白いカビ(うどんこ病)に侵された獣人族の畑。
魔法もチートもない70歳のおじいちゃんが、身近な「あの材料」を使って、驚きの畑再生術を披露します!
「いいかい、まずは『病気にかかった葉』をすべて摘み取って燃やすんだ。これを放置しておくと風でカビの胞子が飛んで、新しい葉に感染してしまうからね」
「は、はいっ! 健一おじいちゃん!」
ルークをはじめ、集落の獣人たちが俺の指示に従って一斉に動き出した。
最初は「なんだこの人間のじいさんは」と半信半疑だった集落の大人たちも、俺のあまりにも手慣れた手つきと迷いのない指示に、あっという間に呑み込まれていた。
「さて……問題は『ミルクバークの木』だ」
俺は集落の隅に積み上げられていたミルクバークの倒木を指さした。
「トールさん、集落の若い衆を集めて、この木を蒸し焼きにして『木炭』と『灰』を作ってくれんかね」
「炭と灰……ですか、健一の頭領? 暖を取るわけじゃなさそうですが……」
「そうだ。この灰にはアルカリ性の成分がたっぷり含まれている。水に溶かして薄めたものをスプレー……いや、葉に吹きかければ、酸性を好むカビ菌は全滅する。おまけに土に混ぜれば、肥料のやりすぎで酸性に傾いた土壌を元通り健康にしてくれるんだよ」
「な……なんですって!?」
ヘルメスが目を見開いて叫んだ。
「灰と水だけで……カビを退治し、土まで浄化するだと……!? 術式も薬草の抽出もなしに……!?」
「なーに、地球……わしの故郷では『草木灰』と呼ばれるごく当たり前の知恵ですよ。自然のものは、自然の巡りで治すのが一番体に優しい」
俺は温かい茶を一口啜り、いつものようにフッと笑った。
その日のうちに、大量の草木灰が作られた。
俺たちは薄めた灰汁を散布し、病気の葉を処理した畑の土に灰と腐葉土をたっぷりと混ぜ込んだ。
すると――数日後。
あれほど白い粉に覆われていた畑の土は、見違えるほどしっとりと深い黒色を取り戻し、生き残っていたイモの苗から、青々とした力強い新芽がぐんぐんと顔を出し始めたのだ。
「す……すごい……! 新芽が出てる! 葉っぱが緑色に戻ってるよーっ!!」
ルークが泣きながら畑を駆け回り、集落の大人たちも「おおお……っ! 畑が蘇ったぞ!!」「奇跡だ……! 人間の老賢者様が奇跡を起こされたぞ!!」と大歓声をあげた。
「いやあ、ただの家庭菜園のノウハウなんだがねぇ……」
俺は苦笑いしながら腰を摩った。
剣も振れない。最強の魔法も使えない。
けれど、70年かけて蓄えた「生きる知恵」は、この異世界でたくさんの笑顔を咲かせている。
皺だらけの顔に自然と浮かんだ笑みとともに、俺の「知恵袋スローライフ」は、またひとつ温かい絆を結んだのだった。
第14話をお読みいただきありがとうございました!
草木灰を使った見事な畑の再生術!
魔法を使わず、自然の摂理と知恵でピンチを乗り越えた健一おじいちゃんに、獣人族からの信頼も絶大です!




