第11話:おじいちゃんの温泉開発と、極上の風呂上がり
第11話をお読みいただきありがとうございます!
温泉(霊泉)の素晴らしさに目覚めた健一おじいちゃんと村の男たち。
しかし、ただのお風呂で終わらせないのが70年の「知恵」と「こだわり」です……!
「ふぅ……極楽、極楽……」
お湯の温もりで腰の痛みが劇的に和らぎ、俺はすっかり機嫌を良くしていた。
だが、長く湯に浸かっていると、70歳の目にはどうしても「惜しい点」が気になり始めてしまう。
「ヘルメスさん、トールさん。この湯は最高だが……少し足元がゴツゴツして落ち着かんな。それに着替えを置く場所もない」
「た、確かに……足裏に尖った石が当たって痛いですな、健一の頭領」
トールが足をすりすりしながら同意する。
「良し、そうと決まれば少し手を加えようじゃないか。リリアさん、脱いだ服が湿気ないように、あっちの平らな岩場に服掛け用の木の枝を渡してくれ。トールさんたちは、底に沈んでいる尖った石を拾い出して、浅いところに平らな踏み石を並べてくれんかね」
「おおっ、なるほど! 踏み石があれば出入りもしやすいな!」
「よし、野郎ども! 健一の頭領の指揮のもと、極上の湯場を作るぞ!」
若い衆が脱ぎたての全裸(※腰布一丁)で威勢よく動き出す。
俺自身は温かい湯に浸かったまま「そこはもう少し右」「うん、その石は座るのに丁度いい」と口で指示を出すだけだ。老人の特権というやつである。
小一時間ほどで、ゴツゴツしていた野湯は、立派な「手作り露天風呂」へと変貌を遂げた。
脱衣所代わりの棚もでき、足元は滑らかな平石で敷き詰められ、湯船の中には半身浴ができる絶妙な腰掛け石まで設置された。
「素晴らしい……! まるで王都の高級浴場のような快適さじゃ……!」
ヘルメスが腰掛け石にドカンと座り、感銘を受けたように唸る。
「さて……しっかり温まったら、仕上げだ」
俺たちはゆっくりと湯から上がり、体を拭いた。
風が肌を撫でると、少し肌寒さを感じる。そんな最高のタイミングで、俺はリリアに頼んでおいた「秘密兵器」を取り出させた。
「リリアさん、冷やしておいた『あの木の実の搾り汁』をみんなに配ってくれ」
「はーい! 健一師匠!」
リリアが川の冷たい水でキンキンに冷やしておいた竹筒を配る。
中身は、村に生えていた柑橘類に似た甘酸っぱい果実の果汁を、湧き水とほんの少しの蜂蜜で割った特製ジュースだ。
「風呂上がりには、冷たい飲み物と相決まっておる」
俺は竹筒を手に持ち、グッと一気に飲み干した。
「――っはぁぁぁぁぁぁ……っ!!」
五臓六腑に染み渡る、冷たさと甘酸っぱさ。
温まりきった体に、冷えた果汁が駆け抜けていく快感。
地球の銭湯で飲む「牛乳」や「珈琲牛乳」に匹敵する、至高の瞬間だった。
「な、なんだこれは……ッ! 湯上がりにこんな美味いものがあるのか!?」
「う、うめぇぇぇっ! 体の芯まで冷気が染み込んでいきやがる……!」
トールたちも竹筒を掲げ、あっという間に飲み干して大絶賛の声をあげた。
「ふふふ……湯に入り、体を整え、冷たいもので締める。これが我が故郷に伝わる『温泉文化』というやつですよ」
俺は誇らしげに胸を張り、青空の下で小さく笑った。
チート能力も魔法もないけれど、70年生きてきたからこそ知っている「人生を楽しむ工夫」なら、いくらでもある。
腰の痛みもすっかり消え去り、俺の異世界スローライフはどこまでも快適になっていくのだった。
第11話をお読みいただきありがとうございました!
手作り露天風呂の完成と、極上の風呂上がりジュース!
地球の温泉文化を存分に持ち込み、異世界でのスローライフをエンジョイする健一おじいちゃんでした。




