夏期講習
とても大きな存在…
この日は、塾開催の合宿だった。
湯ノ峰の山のホテルというところを借りて県内にある同じ校舎の塾たちの子を集めて60人くらいでの合宿だ。
1泊2日するこの合宿にもちろん自分は乗り気じゃなかった。
「…〜ー!!」
さっきから塾の先生の声が遠い。授業を何一つ聞いてない。
ずっと座っているからか体に気持ち悪い感覚が走り落ち着きがなくなる。
「……はい。じゃあ15分間休み時間にします。」
塾の先生がそう言うと周りは立ち上がり中がいい子たちと談笑し始める。
そしたら自分が浮いてしまう……。
それが嫌で席から立ち上がり外に出る……あの場にいると周りの視線が怖かった。
みんなの話し声がまるで1人でいる俺のことを話しているんじゃないか……?
そう思えば全部そう聞こえてしまう…。
そこから15分そのままボケっとし、教室へ戻った。
◇
「すみません。予定があるので……迎え呼んでもいいですか…?帰ります。」
多分今みんなは自分たちの部屋にいてお風呂に入ったり、遊んでたり、出された宿題をしているだろう……。
だけれど、俺は部屋に一歩も入ってないし…なんなら今日初めて喋った……。
そんなみんなに馴染めてもないし浮いてしまっているし自分の居場所がなくて……今、予定と嘘ついて帰ろうとしている。
「……うん、分かった」
塾の先生は許してくれた…。
◇
「夜ご飯は食べてきたんだよね……?じゃあ、帰ったらさっさとお風呂入っちゃいな…。」
「うん……」
帰りの車の中。もちろん空気は重かった…。
そして今になって帰ったことに罪悪感が出てくる……。
でも、あの場にいたらきっと自分は……普通とはなんなのか…俺にはわからないことをぐるぐると考えてしまった……。
◇
お風呂に入り終わり自分の部屋に行って今日配られた宿題に手をつけようとするが……何も集中力が上がらない……。
「……ダメだ…」
俺は引き出しからイヤホンを出し、スマホに接続する。
そして、YoaTubeを開く。
好きなアニメ、ゲームの解説、音楽………いろんな動画が流れるがほんとんどが何回も見ている動画…。
それだけ、勉強から逃げて動画を見てしまっている……。
まぁ、それもダメなんだけどな……。
おすすめ動画に面白そうな動画を探していた時…自分には関係ない横動画を誤って押してしまう。
その動画は広告を挟まずすぐ始まってしまう。
「…あぁ…ぁ……って……」
流れてきたのはとある舞台の一部シーン。
そして、開始数秒で惹かれてしまった…。迫力があったのだ。
役に入り戦闘シーンや涙を流して語り合い…時にはミュージカルのように歌い出し……。
ダイジェストで短い動画だったけれどその時間はとても長く感じた。
そしてそのキャストのうちの1人にものすごく目がいった…。
画面の中でその人は輝いて見えた…その人ばっかり追ってしまう……。
その間に俺はものすごく笑顔になって…気づいたら涙を流していた………。
凄かった……今自分ダメだな、やる気出ないな、と落ち込んでた人をこんなにも揺さぶることができるなんて…。
「……なんて…名前の人だろう……」
舞台のことよくわからないけれど、多分あの人はものすごく演技が上手…。
そして人を惹きつける魅力がある…。こんな普通じゃないダメな自分から見たら輝いてて仕方がない……。
「……榎本…拓海……。」
それが榎本さんと、舞台の出会いだった……。
そしてこの日から俺は塾に行かなくなってしまった…。
◇
今日は8月24日。東海大会当日だ。
みんなで朝練して、今は荷物を積んで出発の準備をしている。
「お前ってさ、なんでいつも夏場でそんな長袖着てるんだよ……。暑くないの?」
部活中顧問の青髙先生にそんなこと言われる…。
今俺は学校指定の長袖ジャージを着ている。
夏になったらこの質問が増えるのが厄介だ…。
理由は自分の身体が大っ嫌いで見せたくないしからだ。
そのせいで脱ぐのが怖いなんて言えない……。だから……
「大丈夫です……!暑くないんで……!!」
結構前から夏にも長袖を着てきたせいか、感覚が鈍ってきていて本当に暑くない…。
これも普通だったらみんなみたいに夏でも半袖ファッションを楽しめて、感覚もおかしくなることはなく、周りかの心配もかけることはないんだろうな………。
やっぱり、こんな自分のことが嫌だった…。
「あ!そうや…!!」
そう言って学先生が話しかけてくる。
「そういやな……先生、聞きにきてくれるって…!!」
「え……!ほんとに!?」
なんか一気にやる気が出てきた。
先生に常日頃の感謝を込めながら舞台に立ち演奏した。
中学最後の夏の大会……中部大会は銀賞で終わった。
改めて作品を読んでくださりありがとうございます!
ランキングが毎日絶えずに告知がくるのでものすごく嬉しいです!!
本当にありがとうございます!
次の更新は5月20日水曜日の予定です。
ありがとうございました!!




