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最後の教室

救われた僕と、救われた君…

「…っうぁぁああ」


まだ教室で何もしていないのに、涙は止まらなかった…。


先生はズルかった………。


もうほんといつも俺を泣かせてくる……。


今も生徒は教室戻ってきて、先生は職員室に用があるのか帰ってこない。


……少し待っていたその時、教室の扉が開き先生が入ってくる。


クラスメイトはずらずらと自分の席に戻り静かになる。


「みなさん、お疲れ様でした。」


明らかな鼻声先生…。こんな声聞いたことない。


「…今から、全員分の卒業証書を預かりました。僕からになってしまいますが、名前を呼ぶので、取りに来てください。って、結局まだ、みんなの名前呼びますね……」


少し笑いが入り準備をする。


涙は流れてないけれど、目は赤く分かってしまうくらいの鼻声。


先生は、俺たちのために泣いてくれたんだ……。


再び名前を呼ばれて取りに行く。


俺はずっと泣き止むことができなかった。


「…ありがとう」


証書を渡すときに小さくそう言ってくれた。


その先生の言葉にもっと涙が溢れてしまう。


全員に証書が受け渡されて、先生は教卓の中から今度は箱を出す。


「…で、これは僕からみんなへの…プレゼントです!……1人一個持っていってください。」


それは手のひらサイズの小さな植物のフィギアだった。


たくさんの種類があり、何が当たるかはお楽しみ。


順番が回ってきて俺は一つ掴んだやつを出す。


「それは、ホヤ系ですね…。ハートの葉っぱが可愛らしい子です。」


「……ホヤ……」


そういや、先生にあげる植物もホヤだな………。


そんな偶然あるのか…みたいな感じだ。


そこから先生は5組だけのスライドショーを作ったので、と動画を見せてくれる。


それから、動画が終わり、あ…!と何か思い出したかのように言った。


「もう一つ、渡さないといけないものがありました…!もう……証書と一緒に渡す予定だったのに……」


そう言って、教卓の中をあさるが……


「…な、…ない……職員室かな………」


何を渡されるかもわからず先生は独り言かのように言う。


最近先生はよく喋るようになったと俺はそう思う。


それは自分の中でとても嬉しいことだ。


「僕、天然とか、ドジって言われるんですよ………すみませんちょっと職員室行ってきます」


そう言って廊下を猛ダッシュで走っていった。


先生は、自分のことを見つめ、話してくれるようになった。


自分のダメなところだけではなく。


どんなことでも声に出して教えてくれるようになった。


走って帰ってきた先生の手には小さな紙のようなものがたくさん重ねられていた。


そして、戻っていた目の赤さが復活している。


なんだろう…俺が考える前に先生は口を開いた。


「僕から、皆さんに…個人的な、お手紙です……!よければ…受け取って欲しいです…」


その言葉を聞いた瞬間本当に嬉しくなって涙が止まらなくなった。


先生は言葉を伝えるのが苦手。……だったのかな……?


でも今は、形に残して俺たちに送ってくれる。


それが本当に嬉しかった。


「……っあはは!っもう一回名前呼びますね…!!」


そう言って一人一人に小さな手紙を渡して行く。


これほどまでやってくれる先生なかなかいないだろう。


便箋がちゃんとありシーンが貼っつけてある。


先生は率先して何かをする人じゃなかった。


なのに、生徒のためにここまで…。


「家に帰ってから見るんですよ!!恥ずかしいので…!!!」


そう言って、笑う。


先生は、あまり笑わない人だった。


笑い声なんて声に出さない人だった。


それなのに、今は……生徒と笑い合い幸せそうだ。


こっちも返さないとな……。


「じゃあ、これで……最後と………」


「…あの!先生!!……ちょっと生徒からも先生に…!!」


そう言って、俺は引き出しから先生に向けた寄せ書きを出し教卓へと向かった。


先生は、とうとう自分では止められないほど泣き始めてしまった。


─そう。はっきりと俺たちはその顔が見たかった…。


泣きたければ泣いていいんだ。


悲しいと思ってくれている心の本心の表情を…


「……先生。本当に1年間お疲れ様です。そしてありがとうございます……!!」


「……っそんな、いいんですかっ………?」


「…受け取ってください…。」


クラスのみんなも暖かく見守ってくれている。


寄せ書きを最後先生に渡す人を誰にするか決める時に、まさかのクラスのみんなからお願いされてしまった。


お前にしかできないと。


みんな俺が先生と一緒にいることを当たり前のようになっていて、こういうのはいつも譲ってくれるし文句も言ってこない。


本当にいいクラスだなそう思ってた。その時………


「…はい。来てあげたよ。で、なんや?」


「あ、大我先生!!ちょうどいいところに!!」


教室の前の扉がガラガラと開き約束通り大我先生が来てくれた。


「じゃあ、はい。大我先生もここ立って」


先生がほれほれと楽しそうに真ん中に大我先生を立たせる。


「これ5組全員からの寄せ書きです!1年間ありがとうございます!!」


「え!?まじ?じゃあ、ありがたく貰っておきます………」


クラス全体に笑いが起きる。


もう本当に変わらない人だな…。


だけれど、喜んでもらえたのなら一番。


俺は、自分の席に戻った。


「……っ!!あと、俺が来たのは注意やぞ!5組解散時間とっくに過ぎとんで!!はよ、教室出ろ!!」


「本当ですね……じゃあ悲しいですけれど、最後の挨拶しますね」


そして、みんな自分の席の前に立つ。これで、本当に最後のお別れ………


「はい!じゃあ、1年間いや、中学校3年間本当にありがとうございます!!さようなら!!」


先生は大きな声で、笑顔で言った。


クラスメイトも笑顔でさようならと言葉にし、教室を後にして行く。


俺は……涙が溢れ過ぎて動けなかった。


その場で崩れるようにしゃがみ込んでしまった。


嫌だ……このクラスも先生とも別れたくない。


「大丈夫ですか……?」


「……せん…、せい…」


俺は先生と目を合わせるためその場に立つ。


気付いたら教室には先生と俺しかいなかった。


「…先生っ…これ、個人的な…やつなんですけれど………っ……受け取ってもらえませんか…?」


そう言って渡したのは昨日の夜に書いた先生宛の手紙。


俺の言葉で伝えたいことたくさん書いた手紙。


先生は手紙を受け取るとありがとうございますと言った。


「…本当に、っ2年間ありがとうございます…。こんなにも…支えてもらってっ………毎日が……楽しかったし…っ嬉しかったし………先生のおかげだと思ってい……」


「あの…!!!」


思っています。と言いかけたところで、先生が止めてくる。


それにびっくりして、先生の顔を見た。


その顔は今にも泣いてしまいそうな…だけれど、涙を我慢しているそんな顔だった。


「……っ僕も…!!!本当に、ありがとうございます……。あなたはいつも、僕のおかげって言って、感謝して…嬉しい言葉もくれる…!!だけれど、僕も、おんなじなんです…!!僕も、そうやって毎回、すぐに…感謝や、嬉しい言葉をかけれるようになりたい……!本当にすごい……僕がこんなにも、頑張って言ってることを…君は、当たり前かのように、度々言ってくれる……っ本当にすごいっ……」


自分の手じゃ涙を抑えられないほど流して、少し下を向いて言う。


「……っそんな、何もしてないのに………」


少し小さい声で言ったけれど多分先生には届いている。


先生は、一旦落ち着かせ前を向いて言った。


「……だって、僕は、あなたがいるから学校に通えてたんです……。あなたのおかげで……学校に来られていたんです…。…こんな僕でも、毎日話をしてくれて…学校が楽しい場所って……気付かせてくれたんです……僕の、この想い…受け取ってください……」


その言葉を聞いて、思いっきり涙が溢れた。


俺は1年前の自分の言葉を思い出す。


─「先生がいるから毎日学校に通えてるんです……」


……そう、クラス替えの時の質問で言った言葉。


先生は伝わっているよね、と言うような眼差しを送る。


1年前に言った言葉の返しが今来た。


俺の想い、先生はいつも、ありがとうございます。で返していたけれど、ちゃんと届いていたんだ………。


それじゃあ俺もありがたく受け止めよう。


そして前に進もう。


「……ほんと、いっつも、ズルい……。先生の言葉一つ一つが、本当に嬉しい…。よかった…先生の成長は…先生から、教えてもらわなくとも、ちゃんと伝わってきてますよっ………俺も……救われてばっかで………変わりたいな……今の先生、とってもかっこいい……」


「……大丈夫です。僕から見ても……ものすごく成長しましたよ………お互い、ね?」


そう言って、俺の手をぎゅっと握りしめてくる。


「……僕も、救われていたんです……!本当に、2年間、ありがとうございます……!!」


そう言って、2人で笑い合う。


俺が一方的に救われたと思っていたことが、俺も救っていた……。


それが本当に嬉しくて、よかったと思っている。


この安心感は、まだまだ続いてほしいけれど、俺たちは成長したから止まってはいけない。


前へ進まないといけないから…。


「おーい!悲しいのも分かるが、外でろよー」


「あ、大我先生!」


「写真撮影時間30分しかないんだから、ほら!行くぞ!!」


「「はい!!」」


……大我先生は多分俺たちの会話を聞いていたと思う…。


だけれど、もともと事情を知ったような、当たり前に接してくれる。


最初は苦手だったけれど、先生の1番の仲良しな先生っていうことも分かってきた気がするな……。


「僕も、この時間……安心します…!!」


「はい…俺も…。……先生!外行ったらもう一つ渡す物があります!また合流しましょう!!」


「はい!一緒に写真撮りましょうね!!」


そう言って、俺は昇降口から、先生は職員玄関からへとみんなのいる、外へと向かった。



 「3の5ー集合写真撮るぞー!!!集まれー!!!」


声のする方に近づくとみんな結構集まってきている。


そして、先生も集まりいい感じに並び写真を撮る。


そんな些細な時間が、何だか悲しいけれど嬉しくて、この時間が終わってほしくなくて、そう願っている。


「おい、今全員いるぞ。植物渡そ」


「うん…そーやね」


クラスの子に言われ、写真を撮るため下に置いていたていた植物を持つ。


「…先生!!」


先生は足を止め、こっちを見る。


「改めて!!本当にありがとうございます…!!これもう一つ3の5の生徒からのプレゼントです…!!」


そう言い、先生に植物を渡す。


「…うわあ!ホヤですか!!!ありがとうございます!!!」


見ただけで分かるって本当に愛がすごいな……喜んでもらえたのなら十分。


「こちらこそ!改めてありがとうございます。」


そう言って、みんなで笑い合う。


本当、人との関わりを考えさせる1年だった。


この人生において素晴らしい出会い…経験どれも大切にして、これからも生きていこう。


そう胸に刻み中学校に別れを告げた─。

改めて作品を読んでくださりありがとうございます!

まだ、完結ではないです…!!まだもうちょっと続くので乞うご期待を!

また、裏では今年の夏に向けていろんな計画が進んでおります。お楽しみに…!

次の更新は7月23日水曜日を予定しています。

ありがとうございました!!

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