エピローグ
人生の出発点
「え………先生!?」
「おはようございます。3日ぶりですね。」
今日は後期の高校受験日。
もうほとんど受からないってことが分かっているけれど申し込んだからにはやる価値がある。
そして、朝、受験会場に来たらまさかの、先生がいたってことだ。
「き、来てくれたんですか……?」
「当たり前ですよ!調子はどうですか?」
「…先生も分かってますよね…?学力が足りないってこと……」
俺は意地悪そうに聞いてしまったことにやっぱり何ともないと誤魔化そうと思ったが、それよりも先生が先に口を開いた。
「受けるだけでもよっぽどの勇気です。大丈夫。結果がどうであれ、高校には行けるんですから。」
「…先生」
受けてくるだけでも、今までも苦しかった努力も全部よくやったねと褒めてくれる…そんな言葉……。
この瞬間もまた宝物だな……。
「校舎開きました!受付を順番ずつお願いしますー!!!」
受験の担当の先生が昇降口まで叫びのが聞こえる。そろそろだ……
「じゃあ……頑張ってきてください。」
「はい……。行ってきます!!」
先生に大きく手を振り俺は校舎の中へと入っていった。
◇
「そ、その………高校の制服は、こっちがいい………」
そう言って俺が指を指したのはスラックス。そして─
「そして、部活は、演劇部に入る………」
その意外な言葉たちに聞いたお母さんは大きな目を開き冷たい口調で…
「……もう知らない」
そう言って、家を出ていってしまった。
後期受験の結果はもちろん不合格。
最後の1ヶ月塾に戻ったがほんの少し偏差値が上がっただけで、県立に受かるなんて夢のまた夢だった。
落ちた時点でお母さんは怒ってたのに、それに俺がさっきの言葉を言って、もっと怒らせた。
普通に生きるということはこんなにも難しい。
それはやっぱり変わっていないな……。
そう思っていると、スマホの着信音が鳴る。
お父さんからだ。
『お母さんから聞いたけど、何でそんなこと言ったん?』
お母さん人に伝えるの早い……。
多分もうどう対応したらいいかわからないんだろう……。
でも…でも、いつもだったらここで死にたいだなんて思っていたけれど、今は、生きなきゃに変わっている。
どんなに辛いことがあっても、何が何でも自分で決めたけじめに到達するまでは……死ねない……。
その時、家の電話がかかってくる。
………俺は、決心をつけて、一呼吸起き電話に出た。
「もしもし、先生?高校… 曙光になったよ」
『そうですか…』
沈黙が続く……多分反応に困っているんだろう…。
「曙光にファゴットがないって言ってたから新しい道で演劇に入ろうと思ってます。」
『そうですか…ファゴットともお別れとなると本当に悲しいですね……』
「うん……でも、高校では頑張っていきたい…。人生なんとかしたいなーって。」
『はい!応援してますね!!……あ、そうだ、曙光は僕の家から近いんですよ……いつでも会いに行きます!』
その言葉に俺はぷっと笑ってしまう。
先生、励ましてくれてるのかな……。本当にありがたい。
『……それと、あの、また峰中にも来てください……!僕まだ移動じゃないので!!!』
「………っはい!もちろんです!!てか、先生移動じゃないって言っちゃダメなやつでは?」
あはははと2人で笑う。
もう先生とこんな話すことなんてなくなる。
だけれど、またいつか会えることを願って………。
『じゃあ、そろそろ切りますね』
「はい。電話ありがとうございました!」
これからは自分の足で頑張っていく。
新しい環境に怖いけれど、逆に周りは俺を知らない人。
じゃあ、どんどんと自分というものを出していけばいい。
先生とそうだったかのように………。
それから、半年。
俺は今曙光高校の一年生として日々を過ごしています。
そして念願の演劇部に入部し、みんなに頑張って追いついていけるよう活動をしています。
部活は楽しいけれど、楽しいだけじゃ活動できないというリアルな現実がある……。
だけれど、それがあってこそ達成感や得られるものは多い。
そして、一緒に活動をしてくれるたくさんの仲間ができました。
みんなで作る演劇はとっても大好きで自分には勿体無いんじゃないかってくらいいい場所。
とても生きづらい身体になっちゃったけれど、みんなが一緒にいてくれるから、まだここにいていいって思える。
まだまだ怖いことばかりで、未熟だけれど、俺は生きていきます。未来のために……。
◇
自分の部屋の棚の上には推しグッズがずらっと並んでいる。
缶バッチからキーホルダーアクリルスタンドなど種類も様々だ。
その真ん中に飾られているのが………
「いつ見ても綺麗な字……」
先生から貰った手紙……。
久しぶりに中見ようかなと思いシールを剥がす。
ちっちゃい紙だけれど文字がびっしりと詰まっていた。
『改めて、ノートやお喋りでいろんなことを話し合いお互いのことを知り、素直に嬉しかったです!
誰よりも優しくて面白い…きっと素晴らしい人になっていくことでしょう!!
本当に色々ありがとうございます……!!』
『先生へ
まず、結婚おめでとうございます!
とうとう左薬指が輝く時が来ましたね!!
とっても嬉しい気持ちでいっぱいです!
そして、2年間ありがとうございます。
本当に先生には助けられてばかりで感謝の言葉じゃ足りないくらいです。
…実を言うと、もう卒業だっというのにまだ高校生として学校に通っている自分を想像できません。
学校に行っても先生がいないという生活が本当に想像できません。
まだ、怖いことがたくさんあるしまた逃げ出してしまったり戸惑ったりしたりすることもあるかもしれないけれど、先生と過ごした日々を思い出して前に進んでいこうと思います。
これから先生はいろんな生徒に会うと思います。
生徒の数ほどそれぞれ悩みがあり複雑になっていくと思います。
だけれど、先生は今のまま日々を過ごしていってほしいです…!
今のままの天然だけれど、ものすごく頼りがいのある先生が生徒も一番安心するでしょう。
俺が救われたかのように。
未来は怖いけれど、前を向いて歩いていきます。
頑張って生きます。
生きていきましょう。
幸せに生きた先であの頃、あーだったねこうだったねって未来でそんな話をしたいです。
約束です。
人生100年時代。
まだまだ何が起こるかわかりません!
未来の先で笑い合えるようにそう願っています。
先生の幸せを願っています……。
ホヤ・カルノーサリップカラーの花言葉は─人生の出発点。』
Fin.
改めて最後まで作品を読んでくださり、ありがとうございます!
「人生の出発点」完結いたしました。
たくさんの応援ありがとうございました!!
7月25日土曜日に活動報告の方で「人生の出発点」の裏側情報を公開する予定です。同時に重大発表もする予定なのでお楽しみに。
この作品が誰かの心にそっと残っていくことを願っています。
本当にありがとうございました!




