卒業式前日
おめでとう、先生…
今日は卒業式前日。
とうとうここまできたか………と心の中で思うが明日で卒業という実感があまりない。
授業は昼までで、全部卒業式のリハーサルだ。
パイプ椅子に座って長い時間じっとしている練習と、礼や返事、合唱、クラスの代表は卒業証書をもらいに行く練習。
通しでやると意外と時間もかかるのもだ。
特に卒業証書の練習では担任がクラス全員の名前を呼び終わった後クラス代表を呼び代表者が卒業証書を取りに行くという流れ。
7組あるし、1クラス約35人なので本当に長い。
だけれど、先生達からしたら、一人一人の名前を呼んでその子との思い出を思い出す大切な時間。
だから俺もこの時間を大切にしたかった。
一回リハーサルが終わったらその後みっちりと合唱の練習をして、休憩時間となった。
一応一通り今日やることは終わったが帰りの時間までまだまだあった。
この後は何をするんだろうと周りがざわついている。
確かにいつもならもうこれだけやったら練習は終わる…。
前日だから細かくやるのかな?
まだ、体育館にいてと言われているから練習の続きでもするのだろうと俺は思っていた。
はぁ……友達が少なくていつも先生に相手してもらっているからこういう時、話し相手がいない……。
また、俺だけ浮いて見えてる…。
もう変わらないな……俺は。
このまま……卒業してもこんなままだったら、俺は生きていけるのだろうか…。
こういうマイナス思考もすでにダメなんだけれどな…………。
そう考えていると、青髙先生がマイク越しで話し出した。
「そろそろ自分の席に座ってくださーい。」
その合図に周りがどんどんと自分の席へと戻っていく。
長い卒業式練習でも終わってほしくないな……全員が座り終わり静かになったところで青髙先生が再び喋り出した。
「では、今日の卒業式練習はこれで終わりたいと思います。で、……今からの時間は、お楽しみ時間になります!準備するので、少しその場で待っててください。」
周りがザワザワしてきて俺もなんだろうと楽しみになってくる。
すると、体育館の舞台の方から大きなモニターが降りてくる。
何か動画でもあるのかとワクワクする。
モニターの画面が見えやすいように体育館全体のカーテンを閉め電気が消される。
「じゃあ、準備ができたので、お楽しみの時間にしたいと思います。内容は、3年生の先生全員から卒業生に向けた3年間の思い出動画です!楽しんで見てください!!」
モニターにカウントダウンが表示されて、動画が始まった。
俺らが1年生の時からの写真が次々と出てくる。
その度にいろんな思い出が蘇って懐かしい感覚になる。
入学式から、体育祭、文化祭、遠足や、修学旅行、授業や部活などの日々の日常の写真までどんどんと出てくる。
─本当にたくさんのことがあった3年間だった。
中学嫌いから始まった中学人生は180度変わってしまった。
2年生、3年生に上がっていくたびに、時間の流れを早く感じるようになって、自分にはちょっと大きすぎる出来事の数々だった。
そうしているうちにアルバムスライドショーは終わり、周りからは自然に拍手が起こった。
俺も周りに負けずと大きく手を叩く。
もう終わりかと思ったその瞬間だった。
体育館が明るくなり、先生たちが前に立った。
そこから、先生一人一人からメッセージですと話し始めた。
日石先生、林先生、それから伊田先生。
「私、伊田は駿藤先生と結婚することになりました!!」
「えぇぇえええええ!?」
周りの驚きの声これは自分もびっくりだ。
駿藤先生は俺らが一年生の時に学年にいた先生でその後違う学校に行ってしまった先生。
そのため、俺らは1年しか関わりはなかったが、癖のある人でみんなの記憶にちゃんと残っている人だった。
驚きは隠せないが、先生たちのお話はどんどんと進んでいく。
碕山先生、そして先生の番が来た。
「みんなに会えて一緒に過ごしてとっても幸せでした!!」
先生の言葉ひとつひとつがとても深くて重かった。
涙が出そになったけど、この涙は明日の卒業式に取っておきたくて引っ込めた。
そこから、学先生、駒城先生…そこから副顧問や授業を担当してくれた先生たちに移った。
大我先生からは…。
「みんなと離れるのは本当に寂しいけれど、今年の夏!第一子が生まれる予定です!これからはお父さんとして頑張っていきます!」
「えぇえええ!?」
再び驚きの発言だった。
こ、子供?
まじか………周りの子達ももうこの話を他の人たちと喋りながらじゃないと聞けないと気付いたのかざわざわが止まらない。
そして、過去に別れてしまった先生とかもサプライズ登場なんかしちゃって…。
懐かしさを感じ、だいぶ手の込んだお楽しみの時間だ。
そして最後に登場したのは、見覚えのある女の人だった。
周りもこの人見たことあるけれど……と言っている子が多かった。
俺は頭をフル回転させ記憶を辿った。
覚えてないから結構前だったか俺はこの人と会ってる気がする…。
しかも少しだったと思うけれど喋った気もする。
若くてちっちゃくて可愛い女の人……。
「あ………」
その時、ぴーんとくるように思い出した。
あの人……保健室にいた……。名前は確か……
「内蔵田先生………。」
修学旅行の時大我先生に教えてもらった名前だ。
その時内蔵田先生が個人のメッセージを言い終わり拍手が止んだその時だった。
「…この度私は─」
一呼吸を置いて内蔵田先生が再び話し始めた。
そして、列の端にいた内蔵田先生が歩き始める。
…このフレーズ、周りは結婚だ…!と勘づき…。
相手は誰!?誰!!って大騒ぎになって俺もなんだか緊張してきたと思った瞬間。
…内蔵田先生が足を止め、隣にいたのは、俺が一番よく知っている顔─先生だった。
「この度私は、先生と結婚することになりました!!」
周りは、今日一の驚きの声で、今日は泣かないと決めていたのに俺は止まらないほどに涙を流してしまった…………。
◇
「うわぁぁぁああああ」
「ちょ、そんな泣かないでくださいよ〜」
「っだって……先生、、結婚……おめでとう……ございます!」
あの後教室に戻り、先生が改めて内蔵田先生と結婚することを発表した。
クラスや他のクラスでも、先生おめでとうの言葉が多く飛び交っている。
それに先生は大きな笑顔で答えている。
今の先生、幸せそう………。
俺もこの幸せ空間にまだいたいけど…今日はやることがあった……。
涙を拭いてこの雰囲気に優しく微笑みカバンを持った。
「……っよし!先生!!俺帰ります…!さようなら!!!」
「…あの!……」
「ん?」
先生に止められて振り向くそこには何言いたげな先生がただ俺の顔をじっと見つめていた。
「あ、あの………その、、さ、さようなら……」
そう言って小さく手を振った。
俺はそんな先生にびっくりしたけれど聞き返さず、先生に手を振り俺はとある人に会いに行った。
◇
「明日の実行はこんな感じです。まず、明日必ず手ぶらで来ないといけないルールですが、先生の寄せ書きを持ってこないといけないため、ここは持ち込み手口を使います。」
「なんかええ方法があるん?」
「……まぁーなんとか……なんとか頑張ります…」
「お前決まってそうな雰囲気出しといてなんやねん!」
放課後完全下校まであと10分を切っている。
俺はやっと大我先生を見つけ明日の行程を話している。
「お前植物はどうすんのや?」
「それは親に持ってきてもらいます。教室での時間が終わり最後外で写真撮影時間があるのでそこで渡そうと思っています。」
「ふーん。なるほど。」
「あの………大我先生?ひとつお願いがあるんですけど………」
「ん?」
「あの、明日、式が終わったら教室に戻ったタイミングで5組に来て欲しいです…」
「……それは無理やな」
「えぇぇえ?!」
やばい、それは困った。
先生の寄せ書きと大我先生の寄せ書きおんなじタイミングで渡そうと思っているのに……。
植物を教室に持ってこれない分その他はクラスのみんながいる前でやりたいのに………。
「ほ、本当に、無理ですか……?」
「うん。俺、式の片付けあるし、色々仕事があるし…」
大我先生頑固だから……もう押し切るしかない………
「何がなんでも絶対に来てくださいね!!!絶対に!!!」
俺がそういうと大我先生はびっくりしたような顔をして、ぷっと吹き出した。
「お前それ、もうゴリ押しやないかい!分かった分かった!!頑張って行くな」
「本当ですか…!!ありがとうございます!!!」
そして、俺は帰る支度をし、自転車を進めた。
◇
手紙と便箋を用意した。
どっちも植物仕様になっていて可愛らしい。
俺はあともう一つ明日に備えてやることがあった。
「式が終わって……教室の時間の後にしようかな…これを渡すのは」
明日で終わり、そう思って自分で書いた手紙を読み返せば涙が止まらなくなってしまった。
改めて作品を読んでくださりありがとうございました!!
土曜日投稿できなくて本当に申し訳ありません。
気づいたらリアクションがものすごく増えていて今ニヤニヤしております…笑!
次の投稿は7月15日水曜日を予定しています。
ありがとうございました!




