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立ってるヤツぁ賊でも使え

 戦闘シーン?

 そんなものはないよ。


 アネッサの風属性魔法でまとも立っていられなくして、

 私が順次しばきまわす。


 これだけだ。語るに値せん。


 あんなに威勢がよかった連中も、今や伸びきって何も言わん。


「まったく。なーにが


『魔法だと!?』

『なんつー威力だ!?』


 だよ。

 私らどうみても、騎士の格好しとるだろうが。


 どいつもコイツも、女だからってナメすぎなんだよ」

「フューちゃんフューちゃん。どうせ聞こえてないよ」


 ハルバードの石突(いしづき)でボスの頭をコツコツ叩いていると、アネッサが渋い顔をする。

 そうだったな。殿下の御前で、品性がなさすぎるな。


「それでどうするの? 今はノックアウト状態だけど。


『生まれてきたこと後悔させる』


 って言ってたじゃん」

「あー」


 かと思えばこの発言。

 私たちも過酷な山道で山賊化しているのかもしれん。


 え? 元からオマエらヤクザな気性だろ、って?

 黙れよ。


「しかし殿下が見てらっしゃるしな」

「置いてくの? 目が覚めたら追い掛けてこないかな?」

「しかし縛っておくロープもないしなぁ」

「そもそもこんな山の中で縛って放置したら、どのみち渇くか食べられて死ぬよ」

「うむ。だったらひと思いに……」


 ひと思いは人想い。

 サクッとやればニワトリの屠殺みたいなもん、殿下もあまり気に……

 騎士学校時代、いいとこ育ちの同期がニワトリ〆るのドン引きしてたな。


「とりあえず、殿下の目に付かんところで」


 と、ここで私、ひらめいてしまう。

 いや、私がひらめいたのではなく、


 悪魔が囁いたのかもしれん。


「アネッサ」

「はぁい」


「私は向こうで始末着けてくるから、オマエは殿下たちを護衛しろ」

「りょーかいでーす」






「さて」


 殿下たちから見えない位置。

 河原まで連中を引きずって。


 武器を奪ってから


「起きろ、ならず者ども」

「ぶわっ!?」


 まずボスを川の中へ蹴落とす。


「ぎああ! 何す、ガガボァ!」

「すまんな。桶はキャンプに忘れてきた」

「溺れたらどうする!」


「まだ10人ほどいるが?」


 発言の意味を理解したらしい。

 男は川の中で、あぐらをかいて固まる。


「なんだ、腰まで浸かりもしない。

 浅瀬じゃないか。騒ぐなよ」

「うぅ……」


 そっちだって殺意持ってきてたんだ。

 文句言う筋合いはないだろうさ。


「それよりオマエに話があるんだよ」

「話? 見逃してくれるのか?」


 安易に都合のいいこと言われると、否定してやりたくなるが。


 今はそれどころではない。


 周囲を確認しろ。


 他のヤツはまだ気絶してるな?

 殿下たちからは見えていないな?

 アネッサが覗きに来ていないな?


 よし。


「どうした? なんかオレより顔色悪いぞ?」

「うるさい黙れ足先から数センチごとに刻むぞ」

「黙ります!」


 心を乱すな。深呼吸深呼吸。


 気にすることはない。


 こうして山賊にも勝ったじゃないか。

 ハインリヒ派からも逃げられている。

 今日はよく晴れて、春の日差しも暖かい。


 あぁ、外で寝っ転がって昼寝とかするのに最高の日だろう。

 朝だけど。


 だから、そう。



 今から起きることは全て夢。

 夢なんだ。



 夢なんだよ!!!!



 キレるぞ!!!!



「あ、あのー?」

「ねぇ」

「はいっ!」

「山賊なんでしょ?」

「まったく持ってそのとおりでございます!」

「じゃあさ」


 仕方ない。

 川の中から引っ張り出してやろう。


 そんでもって、マントで濡れた顔を拭いてやる。

 その流れで頬にボディタッチだ。



「お兄ちゃんたちのアジトに、連れていってほしいな♡」



 さて、あとは念のため、連中を1人ずつ起こして人数分繰り返すか。


 そしたら私は鑑定士のババアを人数分叩き殺し、


 人数分川に沈みたい。











「あぁ、素敵。サッパリしました♪」

「お着替えもございますわ、殿下」


 アデライド殿下は久しぶりの湯浴(ゆあ)みを堪能したらしい。

 しかしまさか、


 山賊のアジトで風呂に入るとは思わなかっただろうな。


 こんなところで裸とか。

 字面だけなら投稿サイトのセルフレイティングに引っ掛かる感じだ。


「フューちゃんもお風呂入ってきたら?」

「私はあとでいい。まだコイツらと詰めることがあるからな。

 先に入ってろ」

「ちえっ」

「おぉ妹よ。久しぶりに兄ちゃんが背中流してやろうか」

「1回目がないんだよ叩き殺すよ」

「シャーッ!!」

「アネッサ」


 カオスな状況にはなってしまったが、助かってはいる。

 多少は我慢しよう。


 ていうかコイツ『久しぶりに』とか、実際に妹がいて私と混濁してるのか?

 兄貴がどこぞで山賊に身を()()()()いるとか、妹泣いてるぞ。


「さて、お兄ちゃんたちにお願いしたいことなんだけどね?」

「なんでそんなヒソヒソ声なんだ? 普通に話せばいいのに」

「静かに」


 オマエらのアジトが狭いからだろうが!

 普通に話したら殿下に聞こえるんだよ!


 アデライド殿下にはすでに妹魔法の痴態を見られてしまった。

 だからといって、ドミニク殿下にまで恥を晒す理由にはならん。


 ほーら、普通の声のボリュームで話してると、すぐ聞こえるんだぞ。

 こんなふうに。


「ほらジジ、おいで。久しぶりにお腹いっぱい食べられるよ」

「でも、この人たちは山賊なのでしょう?」

「そうだね。でも腐ってもいないし、変なものも入っていないよ」

「そうではなくて」


 おや、どうしたどうした。

 ここ最近まともに食えていないのに、なおも食欲に抗うのか。


「つまりは、この食事も、私がいただいた着替えも。

 どこかから奪ってきたものなんじゃないかしら」


 あぁ、高潔なお方であるな。

 だが今それは強さではない。


「ちょっとごめん。殿下とお話ししてくるね」


 コイツら魔力はないからな。

 放っといてもすぐ妹魔法の効果が切れたりはするまい。

 それだけの力があったら、山賊にならずにやっていけている。


「アデライド殿下」

「ミュラーさま」

「であれば、なおさら食べるべきです」

「そうかしら」

「今からこれを持ち主のところへお返しすることはできません。


 であれば、ひとまず生き延びること。

 しかるのち、殿下から民に還元すればよいのです」


「しかしそれは」


 アデライド殿下はわずかに視線を逸らす。

 ドミニク殿下を見ようとして、やめたような。


「流浪の私たちには難しいことでしょう」


 あるいは、それを踏まえたうえで。


 なお成そうとするには、ある大きな問題に触れなければならない


 そのことを察したのかもしれない。



 しかし殿下が明言を避けるなら、私が言って差し上げよう。


 なぁに、元から私はそのつもりでいたのだ。


 欲望とは関係なく、生き残るにはこれしかない。


「えぇ。ですから、



 両殿下がお座りなさい。

 ハインリヒ殿下を破って、全てを救えるその玉座に」

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