魔法薬の店
こんにちは‼
翌朝というか、まだ夜と言える様な時間。ゴソゴソと音が聞こえるので目を覚ますと、案の定というかなんと言うか。予想通りジルが寝起きのドッキリのつもりなのだろうか。俺の部屋に侵入し、全裸でベッドに潜り混もうとしていた。
「おはようさん」
「あれま・・・起こしちゃったかぃ?」
「そやな。所で何故に俺の部屋に居るんや?昨日、話したやんな?」
ベッドの中からジト目でジルを睨むと。ジルは身体を隠す事無く、苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
出来れば、早急に見事としか言えない秀峰を隠して欲しい。何がとは詳しく言えないが、色々と危ない。
「そうさねぇ、二人と離れ離れになった、カケルを慰めてあげようかなっと」
「そうかー、ありがとな。気持ちだけ貰っとくわ、昨日も言った通り、そういうのは無しで頼むで」
「はぁ、分かったよ」
ジルは物欲しそうな目をしながらバスローブだけを着ると、下着等を持って出ていった。
そして日が昇って朝になると、一足先に宿の一階で待つことにした。
五の鐘が鳴り、暫くするとジルが降りてきた。ホットパンツに、背中で結ぶタイプのビキニの様な服で、編み上げサンダルを履いている。
「へぇ、ジルらしい格好やな」
「もう少し言うことは無いのかぃ?」
「なんや?似合ってるんやさかい、それ以上無いと思うんやけど」
「ダメだねぇ、そっちの教育もした方が良さそうさね」
「お、おう」
朝食を食べに適当な店に行く途中、ジルにあれこれと説教をされ、適当な店で朝食を食べた後。
昨日、目を付けていた錬金術師が営んでいる薬屋に行ってみた。
「いらっしゃい。げ!ジルちゃんと旦那か」
このお客様に向かって、「げ!」とか言ってる細い男は、この薬屋の主人であるマイナイだ。
昨日チラッと見に来た時も同じ反応をしていたので、過去にジルと何か有ったのだと予想できる。
「ジルの旦那、ちょっといいですか?」
マイナイが手招きして俺を近くに来させると、ジルの方を伺いながら、小声で話しかけてきた。
「旦那、俺が言うのもあれなんだが、ジルちゃんだけには、アレ系の薬を買わせちゃ駄目だ。旦那も注意してくれ」
「なんや、なんか有ったんか?」
「そ、その、なんだ・・・ジルちゃんに全部吸い取られた」
「そ、そうか、なんかすまんな」
「旦那も分かってるだろ?ジルちゃんと一緒に居るんだ。只でさえアレなのに、薬を使うとどうなるか」
「いや、俺は何にも無いから、何処まで凄いんか知らんけど、気を付けるわ」
「なんだい、二人してコソコソと。ナイ、これ頂戴」
そう言いながらカウンターに置かれたのは、如何にもアレな感じのする、濃いピンク色の液体の入った小瓶だった。
ジルとこの小瓶の組み合わせを見た瞬間、絶対買ってはいけないと、頭の中で警報が鳴り響き、マイナイの表情が新たな犠牲者の誕生を哀れむ様に変わる。
「「絶対」」買わん!」売らん!」
見事にマイナイと意見が一致した。
「な、何でそんなに息が合ってるのさ」
「俺の危機察知能力が発動した」
「犠牲者は俺だけで十分だ」
「なんだい、まだあの事を気にしてるのかい」
「お、俺はな!あの後三日間、店を休んだんだからな!ジルに、それは売らん!」
「だらしないねぇ、そんなに細いからだよ。アタイの旦那は強いから大丈夫さね」
「待て、強い云々は良いとしてや。俺は未経験で、今の所ジルとそう言う事をする気は無いさかいな」
「なんだい二人してさ!アタイは淫魔じゃ無いんだからね!」
「分かってくれジル、アレ以外なら何でも言うことを聞くさかい。な!?」
「本当かい?」
「ほ、ホンマやで、アレ系以外やったらええで」
「それは良いことを聞いたねぇ、これは買わないよ、その代わり此を貰うからね」
「そ、それだったら大丈夫だな(旦那スマン)」
ジルが赤に近いピンクの香水瓶を買ったので、そろそろ本題を聞くとしよう。
「ほんでやマイナイさん、飛びきり効く目覚まし薬みたいなの知らんか?死人でも飛び起きそうな奴がええんやけど」
「気付け薬ですか、精神系の呪いを掛けられた人でも居るんですか?」
「そやな、それに近いな」
それからカケルとチャックの事を暈しながら、何が有ったかを説明すると、マイナイが残念そうに首を横に振った。
「そんな事があったんですね。そうなると俺の作れる薬では効き目が無いかもしれません」
「そか・・・」
「落ち込むのは早いですよ旦那、俺の師匠がトーストの町街に住んでいる筈なので、師匠なら作れるかもしれません」
「おぉぉぉ!!マジか!?何て人なんや?」
「ローズ師匠です」
「ローズ?もしかしてゴミ屋敷のか!?」
「はぁ、まだ師匠は片付けをギルドに依頼してたんですね。あれだけ言ったのに変わってない」
「そやな、あれは酷かったで」
「取り合えず師匠が片付けが出来ない事は置いといて、ああ見えても腕だけは確実なので行ってみてください。今から書く物を見せれば、あの師匠でも協力してくれる筈です」
マイナイが手紙を書くのを待っている間、店の商品を見て回る事にした。
この世界では怪我や病気を治すのに大きく分けて三つに分類される。
一つが薬草や魔物素材を調合して作られる、薬や軟膏、薬液。
二つ目が、治癒魔法を代表とする、スキルや魔法。
三つ目が、マイナイが営んでいる店で売られている様な、特別なスキルや魔法を使って作られる、ポーション等を代表とする魔法薬。
魔法薬には個々の技量に、効き目が大きく左右されるので、確実に効く魔法薬を作れる人が少なく、高名な錬成師は国のお抱えになることが多い。
話を戻そう。マイナイの店に並ぶ商品棚には、色の付いた水が入れられた様々な大きさや形の瓶が並べられており、商品の下に説明書きがされている。
二、三点挙げるとしたら、骨折や部位欠損まで治せるポーションが金貨五枚。日本円に換算すると約五百万円位になる。骨折や部位欠損が直ぐに治るとしても、高いのか安いのか分からない。
次に、魔物討伐以外使用厳禁と書かれた毒薬。大銀貨八枚(約80万円)。オーガやミノタウロスにも効果有りと書いてある。人に使うと確実に死ぬだろう。
それ以外にも、腰痛を治すポーション銀貨五枚、髪を美しくするポーション銀貨10枚、脂肪の吸収を抑えるポーション銀貨1枚、二日酔いに効くポーション銅貨六枚、意中の人に振り向いて貰えるかもしれないポーション大銅貨三枚、魚が寄ってくる(魚類の魔物には気を付けて)ポーション大銀貨四枚、魔物避けポーション大銅貨五枚、等々生活に密着した魔法薬もあれば、何処に需要があるのか分からない魔法薬まで様々だ。
ジルが買ったポーションは、意中の人に振り向いて貰えるかもしれないポーションと同じ様な色をしていたから、多分これやろ。
結構な時間が経ち、マイナイにローズに渡す手紙とポーションの入った小瓶を二つ渡された。
手紙を書くだけでやけに時間がかかると思っていたら、ポーションを作っていたようだ。
「態々ありがとな、っでこれは?」
「えっとですね、此方の黄色い方は師匠の部屋が散らかっていた時飲ませて下さい。もう一つは、個人的な依頼です。新しいポーションを、師匠に見てもらいたいので、それの配達と返事を貰ってくる依頼ですね。期限は決めてないので、二人の都合が良い時に師匠までお願いします」
「なるほどな、分かったで確かに引き受けた」
「では、これが依頼料の金貨三枚です。くれぐれも、そっちの白い瓶の方は奪われたり無くしたりしない様にお願いします」
「了解や」
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ー情報更新ー
マイナイの魔法薬店(正式名:ローズ魔法製薬・イゾール支店)
師匠であるローズに師事していた弟子達が集まり、師匠の乱雑な金銭管理や生活の支援を行う為に、現オーナーのローズの反対を無視して設立された。
現在、ローグル王国に数店舗と隣国に二店舗構えるまでに成長しており、将来的にローズの弟子の弟子も出店する可能性があり、これからのローズ魔法製薬の成長を国内外から注目されている。
ローズの弟子達の夢は、錬成師を育成するための教育機関を作る事で、ローズをその学園通の初代校長に据えようと日夜努力をしているが、師匠であるローズには何も知らされていない。




