トーストの町にて
こんにちは‼
トーストの町、其所に二人の男が到着した。
赤をメインにした、スーツの様な物を着ており、胸には金糸でギルドのエンブレムが刺繍されている。
この男達の、目立ち過ぎる様な出で立ちは、魔物が闊歩する、この世界では不用心極まりない。
しかし、この赤いスーツを着ることが許されるのは、実力者揃いである、ギルドの特殊部隊のみであるため、赤いスーツの意味を知る者達は、出来るだけ近付かないか、憧れの目を向ける。
ギルド最精鋭の部隊、セブンナンバーの七人の内、二人である。
その二人の内、一人は獅子の特徴を持ち、黄金色に輝く鬣は、英雄を彷彿とさせるものがある。
もう一人は、一見すると、年老いた人族のお爺さんなのだが、背筋は真っ直ぐ伸び、眼光は龍をも落とさんとする程、鋭くギラギラとしている。
この二人がローグル王国、王都にある、ギルド本部に呼び出されたのは、一ヶ月程前の事になる。
この二人の任務は、トーストの町でギルド登録の際に、虚偽の冒険者情報が登録されたという報告の確認と、登録した犯人の捕縛、又は討伐。
そして情報が変更された冒険者の捕縛、又は討伐だ。
過去にギルドでは、故意に情報の変更を行う冒険者がいて、その冒険者一国を揺るがす程の事件を引き起こした事があった。
そのため、その事件以降は冒険者登録する際は、特別な例外を除き、冒険者登録後の情報改変は、死刑や犯罪奴隷等の重罪となっている。
二人は到着して直ぐに、トーストの町にある、ギルド支部に向かうと、ギルドの扉を開いた。
二人がギルドに入っていくと、職員や冒険者達に緊張が走り、ピリピリとした物になった。
赤いスーツを着た者が、ギルドに来ると云う事は、そのギルド内に重罪を犯した者が居るか、近くに自分達では対処の仕様が無い、魔物が現れた時位である。
ギルド内部に居た冒険者の数組が、外に出ようとしていたのだが、獅子の特徴を持つ者に阻まれている。
ざわつくギルドを無視して、老人の方が、受付カウンターに行くと、緊張で何時もの笑顔が引き釣っている受付嬢が、ぎこちない挨拶をした。
「リ、リンドウ様、よよようこそトーストの町へ」
「ほっほっほ、お嬢ちゃん、此処で悪戯をした者が居ると、本部から聞いて来たのじゃが、知らんかね?」
「ほ、本部からですか!?どどどどう言った、内容でしょう」
魔物討伐であれば、まだ良かったのだが、トーストギルド内部で、犯罪が行われたという事実を知り、受付嬢の顔がみるみる内に、蒼くなっていく。
「一ヶ月程前に登録した冒険者の情報が、書き換えられとると、聞いたんじゃよ、ちょっと確認させて貰えんかな?」
「う、うそ!?・・・・分かりました、ギルドマスターを呼んで参りますので、少しお待ちを」
走ってギルドマスターを呼びに行く、受付嬢の後ろ姿を見送る老人の目は、獲物を探すワイバーンの様に鋭かった。
「大変です!!セブンナンバーの御二人が、来られました!!」
ドアをノックもせずに、ギルドマスターの執務室に受付嬢が飛び込むと、ギルドマスターを半狂乱になりながら引っ張っていこうとしていた。
「お、おい、ナエラ!落ち着け、何があったか説明してくれ」
「リ、リンドウ様が来て、こ、此処で、登録情報の改変が行われたと、あー!どうしたら!?私達も共犯にされたら、嫌だー!」
「大丈夫だ!大丈夫だから、落ち着け、リンドウ様がその様な事をされる筈が無いのは、ナエラが一番知っているだろう、この目をよく見てくれ、俺が嘘を言ってると思うか?」
「はぁはぁはぁ・・・そうですよね、リンドウ様が、そんな理不尽な事する訳無いですよね」
「お前は此処で休んでろ、俺が対処する」
執務室に置かれている、ソファーにナエラを座らせると、ギルドマスターは自分の両頬を叩き、気合いを入れてセブンナンバーの元へと向かうと、カウンターにはリンドウが待っていた。
「ほっほっほ、お嬢ちゃんはどうしたのかね?」
「あれは、気分が優れないみたいなので、休ませています。遠路遥々トーストギルドへおいで頂きありがとうございます。ギルドマスターをやらせて頂いています、ボイドと申します。トーストギルドで登録情報の改変が行われたと聞きましたが、何時頃の事でしょうか?」
「一、二ヶ月程前の事じゃ」
「分かりました、少々お時間を頂いても?」
「そうじゃな、儂も立ち合う事にしとうかの」
「リンドウ様、此方へ来て頂けますか?」
「ほほほ、ジャバ坊、そっちは任せたからの」
「・・・・・」
カケルが登録した魔道具で、登録情報の確認作業をするボイドと、それを観察するリンドウに、ギルド内にいる全員の視線が集まり、固唾を飲んで見ている。
そして約一ヶ月前後に登録した、情報を調べていく途中、カケルの情報を見て、次を確認しようとした時に、リンドウが待ったをかけた。
「ん?さっきのやつをもう少し、見せてくれんかの?」
「何かありましたか?」
「ふむ、これじゃの、カケルというのか、何か知っておるかね?」
「ええ、彼の事は知っていますよ、何でも、何も持たない状態でこの町に来たところを、保護された様でして、たしかこの時は、ウェーグが新人の担当をしていたと思います」
「なるほどのぉ、ウェーグとやらは、今此所に居るのかね?」
「いえ、このカケルという冒険者が、この町を出る前に、突然辞めてしまい、町から出たようです」
「どうやら当たりの様じゃの、ここをよーく見てみぃ、数字が書き換えられた後があるじゃろ」
「えっと・・・・・本当だ!確かに」
「状況からみても、ウェーグとやらが犯人で間違い無さそうじゃの、しかし、行き先が分からんのではどうしようもないのぉ、カケルは何処に行ったか分かるかの?」
「少しお待ちを・・・・・一ヶ月程前にアルトニアに向かう護衛の依頼を、チノとケイトという冒険者とパーティーを組んで受けたようです」
「ほっほっほ、アルトニアか、それならまだ居るかもしれんの、分かった、此所には犯人は居らなさそうじゃし、先にカケルに会いに行ってみるかの」
「すみませんでした、ご迷惑をおかけしてしまい」
「良いんじゃよ、話を聞く限り、この件に関与しておらん様じゃし、これからも励んでくれ。ジャバ坊!次はアルトニアじゃ、ほっほっほ」
「・・・了解した・・・」
セブンナンバーの二人が、ギルドから出ていった瞬間、ギルド内に居た全員が大きく息を吐き、疲れ様にしばらくその場から動かなかった。
トーストの町を、その日の内に発って数時間後。
「のう、ジャバ坊や、どう思う?」
「・・・・・・」
「数字だけ弄ってあるのが、おかしいとな?」
「・・・・・・」
「ほっほっほ、ジャバ坊もそう思うか!儂ももしかしたらと、思っておったんじゃ。ウェーグは見つけて貰う様にしといたし、儂等はカケルに会いに行こうかのぉ」
そして数日後、アルトニアに着いた二人は、カケルが既に王都に向かっている事を知り、王都に戻る事になる。
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ー情報更新ー
大まかな時系列
カケルがこの世界に来たのは、8月の中頃
ギルドが動き出したのが、9月の半頃
今の話は、10月の始め頃




