練習試合
こんにちは!
のんびり?イゾールに向かって進みます
イゾールへの護衛は今の所順調だ。
アルトニアを囲む深緑の森で魔物に数回遭遇しただけで、それらは砂鳥のメンバーと魔法剣士の二人が直ぐに倒してしまった。
新人の俺達は未だに出番が無い状態だ。
勇者くんの事は位置的に見えないので、魔物の襲撃の最中はどうしてたのか分からないが、配置を変える様な事態にはなっていないので多少は戦力になっているのだろう。
チャックの列には前方に魔法剣士の二人の男と女が手を繋いで歩いており、更に前方に新人パーティーの魔法使いの少女が先頭を歩いているカインの方をしょっちゅう見ながら歩いている。
出発して直ぐにそんな情況だったので、危険だと判断した場合は直ぐに出れる様に身構えていたが心配は無かった。
何故かというと、アルトニアを出て直ぐにゴブリンの群れに襲われたのだが、イチャイチャとしていた二人が頷きあうと、見事としか言えない息の合った連携で次々とゴブリンを倒していったので、新人グループの出番が無かった。
魔法剣士の二人はチノとケイトよりも実力が上なのは間違いなさそうだ。
その後直ぐに何事も無かったように二人は元の世界に戻ったので、身構えていた此方が恥ずかしくなってしまった。
心配が無いようで何よりだが………
そういう訳で多少の魔物が出て来ても問題が無かったので、何事もなく順調に一日目が終わり俺達は野営の準備をすることになった。
チャックと弓使いの少年は休む場所の準備を、カッサンドラと剣士の少女は料理を担当だ。
「そっちはどうや?」
「こっちも、もうすぐ出来る。俺達と違ってカケルは慣れてるんだな」
「そら、まぁな」
「もしかして、見た目と違って中級ランクだった?」
「ちゃうちゃう、ほら、これ見てみいや、冒険者になったばっかりの新人さんやで」
そう言いながら、カケルの冒険者カードのランクの部分だけ見せると、アルトは納得の表情で頷いた。
Dランク、今のカケルの冒険者としての評価だ。
40階層を二人で攻略した時に更新されていたのだが、二人の事でDランク昇格を喜んだり、報告することが出来なかったので、初めて他人に見せることになる。
「やっぱり全然、新人じゃ無いじゃないですか。俺達よりも上だったのか~、俺達なんかこの前やっとEランクに上がったばっかりなのに」
「いやいや、まだまだやって、この前冒険者になったばっかりやし、先輩の教えが良かったんやろ」
「それでもです、これはトグサさんに報告しといた方がいいんじゃないですか?カインのバカと変わるべきです」
「ええんや、ゆっくりしたいからな、それに今更言ったとしても面倒やろ」
「そうですか、カケルさんがそう言うなら」
その後もアルトと話しながら、大人数が寝転べるサイズの簡易テントを張ったり、馬を守るための壁を作ったりしていった。
そして……………どうしてこうなった!!!
今、俺とカインはお互いに武器を持ち、対峙している。
周りには一緒に行動しているメンバーが揃って、どっちが勝つか等の話や、明日のおかずを賭けたりしている。
始まりは些細な質問だった。
焚き火を囲みながら食事をしていると、カインと話していたカッサンドラが俺に話しかけてきた。
「ねぇねぇ、カケルって武器は何を使うの?」
「なんでもある程度は使えるんやけど、今はこれやな」
そう言いながら、うっかりアイテムボックスに仕舞っていたカケルの剣槍を出したのが原因だった。
「「「ぶは!?」」」
出すところを見ていた人が殆ど全員、口に入れていた物を吹き出す程の衝撃だったらしい。
次からは気を付けないといけない。気が付いた時には遅かったけど。
「お、おま、何処から出したんだ?何かの魔法具か?」
砂鳥のメンバーの一人である、斥候役だと言っていた、小人族のリンフォードが真っ先に食い付いてきた。
「ん?いや、普通に出しただけや……、そう、次元空間から、な?」
「「「ぶほ!!」」」
また、吹き出した。
「カケル!武器は腰にあるナイフじゃ無かったのか!?魔法使いなら、先に言ってくれよ」
血相を変えてトグサが詰めよって来たのには驚いた。
どうやら剥ぎ取り用に腰に下げていたナイフをメインウエポンだと勘違いしていたらしい。
取り出した剣槍の事は忘れているみたいなので、そっと仕舞っておこう。
ブツブツと配置がどうだとか、言っているので今後気になるところだ。
しかし、そこで終わらなかった。
カインの奴が余計な事を言ったのだ。
「トグサさん、カケルはパルチザンを使うって、さっき出したから、戦士じゃないんですか?」
「ん?ああ、そうか、どっちなんだ?」
(カインのやつめ、余計な事を……)
「どっちもいけるんやけど、これを使ってやろうと思っててな、魔法はあんまし使わんつもりや」
「どっち付かずとか、使えるのかよそれ」
「これか?そういや使った事無いな、まぁ大丈夫やけど」
「ははは、何言ってんだよ、それで俺達の足を引っ張るなよ」
「カイン、止めないか!確かにそうだな、実際に使えるかどうか試す必要があるな。カイン、丁度良い、お前がカケルの相手をしてやれ」
「分かりました、でもトグサさんいいんですか?怪我させてしまうかもしれませんよ」
「ほぅ、言いよるな、相手してもらおか?怪我せん程度に」
売り言葉に買い言葉って言うのだろうか?
ついイラっときて挑発してしまったチャックに対して、カインの闘争心に火を付けてしまったようだ。
そして今に戻る訳なのだが、正直カインでは相手にならなさ過ぎて逆に困ってしまう。
「二人共いいか?全力は出すなとは言わないが、実力を知るための戦いで怪我をするなよ」
トグサの注意に二人共頷くと、トグサの手を叩くのを合図に始まった。
「新人だろ?収納魔法が使えても、それだけだろ?ハンデで先を譲ってやるよ」
どうやら、先手を譲ってくれるみたいなので、アルトに目線を贈ると、思いっきり顔を横に振られた。
予想より弱いと仮定した方が賢明そうだ。
「ほな、お言葉に甘えさせて貰うで」
ゆっくりと、スキルも何も使わないで、極力カインでも余裕をもって避けられる様に剣槍を前に構えて近付くと、カインの予想よりも速かったのだろう、焦りの表情を浮かべると後ろに飛び下がった。
「お、おう、速さだけはあるみたいだな、攻撃に繋げられないと、どれだけ速くても意味が無いっぞっと!」
カインは飛び下がった場所から、カウンターのつもりなのだろう。
未だに何もしていない、近付いただけのチャックに対して、大振りで隙だらけの上段からの切り下ろしを繰り出してきた。
(おっっそ!!新人研修でもこないな雑魚はおらんかったで。新人から素人に格下げやな)
時間にすると数秒の攻防なのだが、チャックからすれば欠伸が出るほどの遅さに感じてしまう。
(受けるか、避けるか)
どっちでも良いだろうが、カウンター?を受けた方が盛り上がるだろうとカウンター?受けることを決めると、ギリギリで受けましたという感じに受け止めた。
おぉぉ、というどよめきと、全く手応えの無いカウンターの感覚を感じて心の中で溜め息を吐いていると、カインが剣をがむしゃらに振り始めた。
どうやら、カウンターからの連撃のつもりらしい。
「なに!?コソコソと避けると思っていた、が、これで終わりだと思うな!」
「はいはい」
「おらららららららーーー!どうだ!!」
カインの中では完成された連撃だったのであろう、渾身の力を込めて振り下ろされる剣は決まった動きを数回繰り返すと、決めの一撃としてドヤ顔をしながら突きを放ってきた。
全部、カインの理想道理に動けるように受け流したのだが。
「はぁはぁはぁ、俺様の実力が分かっただろ?」
何時からお前のお遊戯の披露会になったんだ、と心の中でツッコんだ。
「もう、ええか?」
「はぁはぁ、そうだな、特別にお前の攻撃をうけてやる、どっからでもこい!」
実力を隠すのも面倒になってきたので、速攻で終わらせる事にする。
最初よりも速く近付き、剣槍の刃の付いていない部分を一瞬の内に数十回、カインの露出している肌に触れさせていく。
余計な事を言ったカインの服を恥ずかしい感じにズタズタにするおまけ付きで。
そして最後はカインの頬っぺたに剣槍の腹の部分を当てて終わりにした。
一連の動作が終わるまでカインは当然だが、この場に居た全員が殆ど反応できてなかった。
「………………へ?……ひゃわ!」
「俺の勝ちでええやろ?」
「は、はい………」
「……何がおこった?」
「早すぎて、俺にもさっぱり、ジルは?」
「あたいにもサッパリだったよ」
読んで頂きありがとう‼
ー情報更新ー
今回一緒に護衛をしている勇者くんパーティー(パーティー名が無いので、チャックが勝手に呼んでいるだけで、実際の勇者パーティーでは無い)
アルトニアで育った元冒険者等の子供達。
カイン:元冒険者夫婦の長男で無駄に自信家。
自分の事を剣の天才だとか秘められし力を持つ英雄だと勘違いしている。
その為しょっちゅうカッサンドラに怒られているが諦めない。気が付かない。
勝手に自分がリーダーだと名乗っている。
カッサンドラ:カインの両親と同じパーティーメンバーだった父親を持つカインの幼馴染。
常に自分勝手に行動をするカインの事を常に見張っているお姉ちゃん。
カインより一つ歳上で、実質このパーティーのリーダー。
アルト:アルトニアにある飲食店が彼の実家。
アルトニアで産まれたからアルトと名付けられた事にコンプレックスを持っている。
実はパーティーの中で一番料理が上手い。
リーウェ:アルトニアの孤児院出身の少女。
幼い頃に両親をダンジョンで失っており、何時の日かアルトニアのダンジョンに復讐をする事を誓っている。
パーティーの中で一番の実力者。




