アルトニアの迷宮、決着
こんにちは!
アルトニア編最後です。
1万PV有り難うございます。これからも見守って貰えるように頑張りたいと思います。
オブリウスの怒濤の連撃を避け続けながら、ヒルトは決定的な隙が生じさせる為に考えを巡らせ、自分が今放てる中でも最大級の魔法を準備していく。
お互いの距離はオブリウスの持つ、斧の攻撃範囲ギリギリを保ったままだ。少しでも距離を間違えると致命傷となる一撃がヒルトに直撃するのは間違いないだろう。
チラリと後ろを確認する。
一瞬の余所見が大きな隙となり、薄皮一枚の所を斧が通りすぎていき、大きく飛び退くとゴクリと唾を飲んだ。
追い詰められた、部屋の角になる場所、そこにヒルトはオブリウスが誘導していた通りに追い詰められてしまった。
しかし、これはヒルトにとってもチャンスだ。
オブリウスの持つ斧は、持ち手の長い両手持ち用の斧なので、この場所だと攻撃の種類が限定されてしまう。
突きか降り下ろし、そのどちらかを見極める事ができたのならば、それはヒルトにとって二度は無い攻撃のチャンスになるだろう。
「後が無いぞ、大人しく潰れるがいい!」
「っく」
このやり取りが二人の命運を分けたと言っても過言でも無いだろう。
数秒のやり取りだったが、ヒルトがタイミングを図る時間には十分だった。
人には大き過ぎる斧が振りかぶられる。
その斧が持ち上がる瞬間をヒルトは見逃さなかった。
どれだけの修練を積んだ戦士でも攻撃の出来ない瞬間がある。このオークの戦士も例外では無い。その一秒にも満たない時間が勝負の分かれめだ。
斧が持ち上がっていくタイミングで突きが来ないのを、ゆっくりと感じられる時間の中で見極めると、オブリウスの直ぐ横をすり抜ける様に飛び込み、転がりながらも反転、斧を振り上げ無防備に晒されている背中へと、一撃必殺を狙った一撃がヒルトの持つ杖の先から放たれた。
「クローセイム・フラップ!」
(氷獄の天使の羽ばたき)
杖の先から吹き出すのは、あらゆる物を凍りつかせる猛吹雪。
空気に触れた瞬間から空気自体が凍りつき、白い雪吹となってオブリウスへと襲いかかる。
最初に魔法金属で出来ていると思われる強固な鎧が一瞬の抵抗を見せたが、抵抗魔法ごと瞬時に凍らされた。
そして凍った鎧を着ていたオブリウスも、あらゆる命を氷付けにする突風により背中から徐々に凍っていく。
魔法の発動が終わり、死の白い霧が晴れた後には、氷像となったオブリウスが斧を振り上げたままの姿で表れた。
「見てる此方が、ヒヤヒヤしたで」
頭の後で手を組ながら、訓練でも見ていたかの様な軽い口調で、カケル(チャック)は、荒く息を吐き出しながら肩を上下させているヒルトの隣まで行くと、転がったままオブリウスの様子を伺っていたヒルトの手を取り、引っ張り起こした。
丁度、同じくしてオブリウスから他のダンジョンの魔物と同様に光の玉が散っていくと、後には銀色に鈍く光る小さい宝箱が残された。
「これは、ヒルトのもんやで、俺は見てただけやしな」
「しかし、それでは……」
ヒルトが遠慮して断ろうとする前に、カケル(チャック)が宝箱を拾い上げ、ヒルトの手に握らせると、被せる様に「お前のもんや、ええな」と真剣な顔をして言ったので、ヒルトは渋々ながらも宝箱を受け取ることにした。
「さてっと、帰るか……」
「そうだな、二人の事が心配なんだろ?」
「まぁな、夜もどっかでほつき歩いとる二人には、お灸をすえたらなアカンしな」
ギルドへ戻り、40階層守護者の討伐報告を終えると、ヒルトと別れ、真っ直ぐに宿へと帰った。
「戻ったで~、二人は帰って来よったか?」
「お帰りなさいませ、お二方とも無事にお戻りになられました。今はお部屋の方で休まれているかと思います」
「そか」
「あの、差し出がましい事なのですが、お二方とも、帰って来られた時、大変お疲れのご様子でした」
「ありがとな」
二人が何事も無く帰って来たので、心の底から安心すると、夕食を断って、二人の居る部屋へと向かった。
コンコン!
「カケルや、帰っとるんやろ?」
「………入ってくれ」
少し間があった事に引っ掛かりがあるが、部屋に入ると二人が向かい合わせにベットに腰掛けて、カケルの方を見ていた。
「……なんってたら、ええんや……おかえり」
「チャックも「おかえり」」
「二人とも、心配したんやからな、なんも悪いこと無かったんやな?どっかのアホに連れ回されたとかやったら言うんやで」
「ん、大丈夫だ、少し二人で話がしたくてな、帰りが遅くなってしまった。チャックが心配する様なことは何も無かった」
「そか、それならええんや。その様子やったらどうしたいか決まったようやな」
珍しくチノが何も話さないで、此方を見ているので大体の予想はついたが、本人達の口から聞くまでは、何も考えずに待つことにした。
数分間何も話さない時間が過ぎた頃、ケイトが覚悟を決めたのか、真剣な眼差しでカケル(チャック)を見ると二人で話し合った結果を、喉の奥から絞り出すように話し始めた。
「少し…時間が、欲しい」
予想と少し外れていた事に、少し安堵する。
チノの顔を見た瞬間に完全に別れる話が切り出されると思っていたのだが、時間さえ過ぎれば又一緒に旅が出来るのであれば、最悪の予想が当たるよりは大分マシに思える。
「そか、ヒルトの事はどうしたいんや?」
「私達が、後は、引き継ご、う。チャックは、カケルを、頼、む」
「分かった……、ここのマスターに色々渡しとくさかい、後で受け取ってくれ………行くわ」
これ以上、二人の元に居ても今は二人を苦しめるだけだろうと思い、部屋を出ようとドアノブに手を伸ばした所で後ろに近付いてくる気配が有ったので振り返ると、ケイトに抱き締められそのまま口付けをされた。
カケルとチャックの中で、二人の存在はいつの間に大きく大切な物になっていたのだろう。
その事に今更ながらに気が付いたチャックもケイトに答える様に抱き締め返すと、ケイトが目を大きく見開き、目を閉じると少しの間そのままの状態で時間が過ぎていった。
「王都で、待ってる……落ち着いたら来てくれや」
「すまない、私達の我が儘で……」
「ええんや、こういう時間も必要やろ?」
「……お前達は……何時もそうやって、私達を甘やかす………絶対、待っていてくれ、必ず行く……絶対だぞ」
「わかった、二人の事を絶対に待つと約束する」
その後も少し話していたが、このままではズルズルと先伸ばしにしてしまいそうなので、ケイトから離れると振り返らないように気を付けて部屋を出た。
二人の部屋の扉が閉まると、その場で大きく溜め息を吐き、二人が自分の所へ来るまでに、何も困らないように準備を始める為に、一旦部屋へと戻って行った。
読んで頂きありがとう‼
次回からは王都へ向かって行くと思われます
ー情報更新ー
アルトニアダンジョン、40階層、階層守護者
砕撃のオブリウス
オーク種の進化した姿であるオークジェネラルという種族だが、(砕撃)という二つ名と個別に名前を持つ程の実力を持った、オークジェネラルの上位個体。
通常のオークジェネラルよりもガッシリとした身体をしており、生半可な攻撃では痛みすら感じられない程の頑丈な肉体を持つ。
その頑丈な肉体をを守る鎧も一級品で、魔法金属を使用して作られており、堅い守りを更に強固なな物へと昇華させている。
そして、二つ名の由来となった斧は、ハンマーの様に重く、全ての物を粉砕される事から冒険者の間で恐れられている。




