アルトニアの迷宮、チノとケイト・砕斧のオブリウス
こんにちは!
終わらなかった、次で倒せると良いんですけど。
てか、ちょっと強いオーク位、早く倒せよ!!
ヒ「無理を言うな!!」
カケル(チャック)とヒルトの二人が、渓谷エリアを攻略している頃、チノとケイトの二人は宛もなく、無言でアルトニアの街を歩いていた。
初めは、もしかすると二人が迷宮に潜らずに、街の何処かでダンジョン攻略に必要な物を集めていると思ったのかもしれない。
昨日は別の安宿を見つけて、そこでお互い一言もカケルと今後の事について話し合わないままに、今日になってしまった。
二人とも昨日の朝から、殆ど食事も喉を通らないし、着ている服も昨日のままで、髪もボサボサになっている。
宛もなく歩き始めてから、どれくらい時間が経っただろう。急に立ち止まったケイトに気付かずに、歩き続けようとするチノを引き留めて、震える様な声でケイトが、「あそこで、話さないか?」と言った。
今、ケイトが話すとしたら、意識を失って何時目覚めるか分からないカケルの事と、チャックと今後どう付き合っていくかの二つしか思い出せない。
どちらもチノにとっては話したくない事であり、話し合わないといけないと分かっている。
現実から逃避できても、後一日か二日位だろう。
カケル(チャック)が大急ぎでダンジョンを攻略して帰ってくるのが、容易に想像できる。
少し悩んだ後、チノは一言も言葉を話さずに、頷くとケイトの後に続いて、静かな雰囲気の漂うカフェの中へ入っていった。
一番奥の片隅の席、そこに座るとこの店のマスターだろう、立派な髭を蓄えた獅子系獣人の叔父様がメニューを持ってやってきた。
「いらっしゃいませ、ご注文は如何なさいますか?、本日のお薦めは、ハニービーのハチミツを使ったメドヴィクがお薦めとなっております」
「………それと、適当に軽いものをお願い………」
「お飲物は如何なさいますか?」
「……適当に………」
「畏まりました」
その後も、軽い食事を無言で食べ終わり、オススメのケーキも終始無言で食べ終わると、漸くケイトから今後どうしたいかの話が切り出された。
「……チノは、どうする……」
「………分からなぃ……」
また、二人の間に沈黙が訪れて、店内に食器を片付ける音だけが聞こえている。
「どうすれば良いのか分からないんだよ、カケルくんの事は好きだよ、目が覚める方法が有るなら何だってできる……でも……どうしたらいいのかな?」
泣きそうな、震える声でチノが沈黙を破ると、今の気持ちをやっと話してくれた。
「それは、私も同じだ。私もどうすれば良いのか分からない。」
「そっか………」
二人の話は、その後、日が落ちても続いた。
そして、一つの結論に至った二人は、それをカケル(チャック)に伝えるために、宿へと帰っていった。
場所は替わって、40階層
前衛のオークを崩しにかかったカケル(チャック)は、かなりの手加減と、ヒルトがより良い戦闘経験を積める様に配慮しながら、ある程度オークの陣形を乱した後は、ヒルトの守りに徹していた。
「そろそろ、増援が来る頃やで」
「分かっている、それまでに間に合えば良かろう」
「分かってるならええわ、その調子でやりや」
ヒルトの奮戦振りは、他の冒険者が見れば驚きに値するものだろう。
二人で40階層の守護者の間に挑戦するという命知らずな行為は、誰もしようとは思わない。
30階層をメインに活動している冒険者であれば、オーク数匹であれば苦労せずに倒せるだろう。
しかし、その倍の数のオークに襲われれば撤退を選ぶだろう。数の暴力とは恐ろしいものだ。
獣人含む人類が、魔物が生きるこの世界で繁栄出来たのも数のおかげだ。いくら強大な魔物でも、疲労はたまり、小さな傷も集まれば、大きな傷となり致命傷となりえる。
40階層の守護者、オークジェネラルは統率された数の暴力と、自身の戦闘能力によってこれまで40階層を守護してきた。
もちろん要塞を突発され、オークジェネラルも倒された事は何度もある。
しかし、この40階層は冒険者にとって鬼門と呼べる存在なのは間違いがない。
挑むのであれば、複数のパーティーで前日から泊まり込み、作戦を練り上げた上での挑戦になるだろう。
それでも死傷者を出しながら、ギリギリで攻略できるかどうか、結果は分からない。ここでの戦闘は、まるで冒険者と魔物の戦争の様な様相になるのだから。
ヒルトが訓練をしていた最初のオークの軍団を殲滅し終わった。カケル(チャック)は最初に前衛を攻撃した後は、攻撃を控えてヒルトの守りに専念していたのに、だ。
快挙と言って良いだろう。
今のヒルトは、強力なセット装備を一式装備しているお陰なのもあるが、殆ど一人で戦闘訓練を積んだオークの一団を撃破したことになる。
オーク一匹の力量も、これまでのオークとは違う戦士としての強さを持っていたのにもかかわらずだ。
「もう、出てきよるさかい、中に入るまでは俺がやるで」
「頼んだ」
既に数匹のオークが要塞の入り口で守りを固めようと行動を開始している。
そのオークのどれもが、ダンジョンを徘徊する、弛んだ腹をしたオークとは違い、鍛え上げられた身体を持つ、戦士として鍛えられた存在だと分からせてくれる。
さしずめ、オークウォーリアーやオークアーミーと呼んでも差し支えないだろう。
要塞に向かって人外のスピードで走り出したカケル(チャック)は、それらを迅速に倒すと入り口を確保し、ヒルトをハンドサインで呼んだ。
後少し遅かったら、ヒルトは死んでいただろう。
ヒルトが要塞内に飛び込むと同時に、要塞入り口に大量の魔法と矢が降り注いできた。
「あぶな!」
「ああ、ギリギリだったようだな」
入り口近くで炸裂した魔法にギョ!!としつつも、油断なく周囲に気を配りながらも、これからの事を手短に話すと、以前オークジェネラルが居た場所へと潜入を開始した。
ここからオークジェネラルまではカケル(チャック)の仕事だ。
いくらセット装備の効果で、炎と氷の魔法を詠唱破棄して直ぐに発動出来るとしても、倒しきる前に増援を呼ばれる危険が高いので、スニークスキルの中から〈消音・気配遮断〉の二つを自分とヒルトに発動し、できるだけ戦闘回数が少ない様に進んでいく。
そして要塞最奥にある、今までの要塞内で見かけたどの扉よりも装飾の入った扉に入ると、謁見使われる様な、豪華な装飾に囲まれた階段状になった部屋の奥で、オークジェネラルが完全装備に身を包み待ち構えていた。
「ようこそ、我が居城へ、歓迎は楽しんで貰えたかな?」
「おま!?俺らの言葉が分かるんか?」
「カケル、前に来たんだろ?」
「いや、前は見付けた魔物全部、瞬殺やったさかい、知らんかったわ」
「はぁ、カケルらしいな……」
「ごほん!!我を無視するとは良い度胸をしておるな、死ぬ覚悟はできたか?二人同時でも構わぬ、我が斧の錆びにしてくれよう」
「んじゃ、コイツは任せるさかい、死なん程度にがんばれ」
「っふ、相変わらず軽いな。私が相手をさせてもらう、このヒルデルト・フォン・マスルドの魔法に貫かれて逝くといい」
「一人ずつか……よかろう、オブリウス・ハムカッツェ、参る!!」
何処の時代劇だよ!と心の中でツッコミながら、ヒルトの戦いを見守ることにした。
まず最初に仕掛けたのはオブリウスの方だった。
魔法職と距離が有るのは、近距離用の装備しか持っていないオブリウスにとって不利にしかならないので当然だろう。
その巨体と超重量の装備には思えない程の軽やかな動きで、一気にヒルトへと接近すると、そのスピードの乗った動きのまま、両手に持った巨大な斧をヒルトの頭上から叩きつけた。
瞬間、要塞が揺れる程の衝撃によって、石で出来た床が粉砕され、周囲に破片が飛び散りヒルトに襲いかかる。
高速の突進を避けた直後のヒルトは、まだ体制が直っていない所への追撃に、舌打ちをすると瞬時に氷の障壁を張ると何とか凌いだ。
「ほう、あれを避けるとは、我に一人で挑むだけの技量は有るようだな」
更なる追撃、に次ぐ追撃。
部屋中に立っている柱に斧が当たれば粉砕され周囲に被害をもたらす。
床に当たる時も同様に、周囲に破片を撒き散らしながら次々とヒルトを追い詰める様に壁際へと誘い込んでいく。
ヒルトもオブリウスの攻撃を避ける隙を狙って、牽制で魔法を放つが、強固な鎧に守られたオブリウスには効果が有るようには見られない。
読んで頂きありがとう‼




