アルトニアの迷宮、渓谷を抜けて
こんにちは!
最後のオークに見つかる所を少し変えました。
快く二人の事を快諾してくれた、強面御姉さん(エイミーさん)達のパーティーと別れた後、信じられない程のハイペースで攻略を進めていた。
現在37階層、比較的歩きやすい川原を移動用スキルの多重発動を行使しながら爆走している。
爆走といっても、移動が煩いわけでは無い。
二人の移動は地面を滑るように、馬よりも早いスピードで歩いているだけで、普通に歩く音位しか発していない。
何が(爆)しているのか、それは不運にも二人を見付けて襲いかかった魔物達だ。
只の二人組ならばこの階層の魔物達であれば容易く葬り去ることが出来ただろう。
前方を歩く魔法使い風の男が、空に向けて杖を一振りすれば、鋭く尖った氷の塊が形成され、降下を開始していたワイバーンの頭部を弾けさせた。
後ろを歩く、奇妙な剣?を持った男に後ろから襲いかかろうとしたブレードパンサーは、自慢の牙と爪を1度も使う事なく、頭から真っ二つに切り裂かれると、襲ってきたままの勢いで男の左右に派手な音を立てて転がっていく。
普段であれば狩る側であった大型の魔物達の断末魔と倒れる音が何時もは静かな渓谷を、今日は騒がしくさせていた。
「なぁ、そろそろ、昼飯にせえへんか?」
「もう少し、もう少しだけ、後でも良いのではないか?」
「何回目やねん、もう少しって、アカン、ここで休むで」
この世界の男子なら誰でも一度は夢に見たであろう、この世界の何処かに居る英雄や勇者の様に強大な魔物を次々と倒していく姿を。
子供達は英雄や勇者に憧れて、勇者ごっこや英雄ごっこをしながら大人になり、現実を見て成長していく。自分達では勇者の様になれないと分かってしまうから。
ヒルトもその大多数の中の一人だった。リリアと結婚し子供を授かり、自分達の納める領地を少しでも良くしようと働く人生になると思っていた。
カケル(チャック)に装備を貰うまでは。
今のヒルトは自分が英雄になったかの様な気分に酔いしれている。
一人では倒せない到底倒せると思えない、ワイバーンを一撃で倒し、次々とダンジョンを攻略していく。
今でもたまに読む、子供の頃に父上から貰った英雄の話に出てくる、英雄と一緒に邪悪な龍と戦った賢者と自分を重ね合わせて。
移動用スキルが切れる。
どうしたのかとヒルトは振り替えると、呆れた顔で肩を竦めたカケルが此方を見ていた。
「腹が減っては、戦はできぬって話は知っとるか?」
「いや、初めて聞くな、カケルの故郷の教訓か何かか?」
「教訓って程でも無いかもしれんけど、俺はこの言葉を、万全な状態で物事に挑め、って理解しとる。空腹で倒れそうな兵士より、腹一杯食った兵士の方が余裕あるやろ?」
「確かにな、すまない、急ぎ過ぎていたようだな」
「それに、疲れてないと気持ちで思ってても、結構身体は疲れとるもんやで、特に今日みたいな時とかな」
「なるほどな、では、休むとしよう」
「ワイバーンでも焼いて食うか、さっきの奴、尻尾を残しとったやろ?」
「ああ、それでは、これは任せるとしよう。私は他の物を用意しておく」
大きさにして、数メートルはあるワイバーンの尻尾を前にどうやって焼くか考える。俺はカケルみたいに料理は得意では無い。
なので以前、カケルの元いた世界のアニメでやっていた、漫画肉という物に挑戦してみようと思う。
確か、Y字型の器具に肉を乗せて、回しながら焼いていくって、言っていた気がするので、アイテムボックスから金属を取り出して、クラフトスキル・初級を発動し土台にY字型の棒が伸びる様に加工していく。
ワイバーンの尻尾は、先程作った器具に収まるサイズに輪切り〈包丁では無理なので、綺麗に消毒をした愛用の武器を使いました〉にすると、骨の中心に鉄の棒を挿し込み、器具に設置し回しながら皮を剥いでいく。
後は、カケルが買い貯めしている香辛料と塩でも振っておけば大丈夫だろう。
早速焼いていきますか。
一ヶ所が焼け過ぎないように、一定の感覚でワイバーンの尻尾をグルグル回しながら焼いていく。
「良い匂いが………って、そのサイズ、食べきれるのか?」
「ん?そういや、デカいな、考えとらんかった」
「考えて無かったって、絶対残るだろ!」
滅多に料理せえへんのやから、しゃーないやろ。と心の中で言い訳しながら、改めてみるとデカかった。
流石に二人で、自分の胴廻り以上のサイズのある肉を食いきれる訳が無いなと、言われてから気がついた。
「これの、食べ方は持ち手を持って一気に食べきるって聞いてたけど、無理そうやし切り取りながら食うか」
「何処で聞いたんだ!?………でも、なんというか、ワイルドな食べ方だな」
「では、早速」
ナイフで表面の肉を切り取ると、中はまだ完全に火が通って無かったようで、焼けた所と半生の所が一緒になっている。
新鮮な肉なので問題は無いだろうが、赤い肉汁が垂れる様は、野生的で男心をくすぐられる。
少し大きく切り取ってしまったが、そのまま口に運ぶと、野生味溢れる味と香で口一杯になった。
これを酒で流し込めると最高なのだろうが、まだ40階層までも道程があるので、水で我慢する。
「カケル、前に貰った、焼き肉のタレは無いのか?家の料理人では再現出来なくてな、また食べたいのだが」
「タレ?ちょっと待っと、探してみるわ」
たしか、香辛料を探している時に、一緒に出していた気がする。壺に入っていたような。
「お、これか?有っとるか?」
「前に見た物より、赤い気がするが、おそらくそれだろう」
お皿にタレを入れて、肉にたっぷり付けて食べる。
「「!!!!辛!!!!」」
「なんだ、ごほ!これは、前の、ごほ!と全く違うではないか」
「ひぃーーーー、辛っら~~。間違えたわ、すまんすまん」
その後、何個もある壺の一つから、焼き肉のタレを見つけて事なきを得たが、タレを見つけるまでの味見でカケル(チャック)は大変な目にあうことになり、カケルが目覚めたら、壺や香辛料の入った袋に名前や用途を書いて貰おうと決めた。
そして夕方、二人は40階層にたどり着いた。
予定では既に宿に帰っている筈だったのだが、昼食を食べるのに夢中になってしまい、予定していた時間から大幅に遅れてしまっていた。
この先にある大扉の先に行くと、休憩ができなくなるので、疲労が出始めたヒルトの回復のために、小休止を挟んでから階層主に挑むことにした。
40階層の階層主は、オークジェネラルで、オークジェネラルが統率する、オークの軍勢を一緒に相手にしなければならないので、今までの様に一体の魔物を倒して終わりという訳にはいかない。
30分程の休憩の間に、ヒルトをメインにした作戦を話し合い、休憩を終わらせた。カケル(チャック)が一人でオークに突っ込めば直ぐに終わるのだが、ヒルトの頼みである程度は苦労をさせてくれという事で、ヒルトメインでの攻略となった。
大扉の先にある空間は、天井の高い洞窟を利用して作られた要塞の様な場所になっている。
扉を抜けると、洞窟要塞前にあるオーク達が訓練に利用していると思われる運動場の様な場所に出た。
その奥に見える、洞窟に埋め込まれたかの様にそびえ立つ要塞が、オークジェネラルが率いるオーク軍団の本拠地となる。
運動場には何十という数のオークが訓練の最中だったのか、訓練用と思われる武器で模擬戦をしたり、敵に見立てた藁人形へ魔法を放つオークの姿があった。
そして、それだけの数のオークが居るので、直ぐに侵入者に気が付いたオークの一体が、大声で仲間のオークに侵入者だ!(オークの言葉なので、実際は何を言っているのか分からないが、ニュアンスで大体の予想はついた)と伝えると、要塞の方から緊急事態を伝える激しい鐘の音が鳴り響き、訓練をしていたオーク達が見事な早さで陣形を組んでしまった。
先頭に立つのは、大剣と盾を構えたオークで、フルプレートアーマーを着用しており、前衛に相応しい格好をしている。
中央には、槍を構えたオークが並び立って、前衛のオークの間から此方の出方を伺っているようだ。
後衛には弓と魔法職が広がる様に展開しており、既に詠唱を始めている。
それにこのままだと、要塞から完全装備をしたオークの軍団が大量に出て来て、取り囲まれるのは時間の問題だろう。そうなれば面倒くさい。
「俺が先頭を崩すすから、ヒルトは魔法防御を張りながら、後ろの奴と、崩れた所に魔法を頼むで」
「分かった、心配はしていないが、頼んだぞ」
こちらも直ぐに決めることを決めると、一番最初にカケル(チャック)が前衛のオークを狙って動き出した。
読んで頂きありがとう‼
ー情報更新ー
氷炎のロンド
カケル(チャック)がヒルトに結婚祝いだと理由を付けて、プレゼント(在庫処理)したセット装備。
氷属性と炎属性の魔法の威力と装備者の能力を上昇させる効果があり、氷と炎への耐性を高めることができる。
杖、ローブ、手袋、炎の指輪、氷の指輪の5セットを揃えると、上記の効果の上昇と、詠唱破棄(氷と炎限定)、疲労回復、魔力上昇の効果を得ることができる。




