アルトニアの迷宮、寝坊助起きろ!
こんにちは
(ん…朝か、結局カケルの奴は、目を覚まさんままやな。)
昨日から何度も呼び掛ける事はしているのだが、反応無し、自分の予想が外れてしまったチャックは、昨日軽々しく明日の朝には起きているだろうと口にした事を後悔していた。
(おはようさん、起きたか?)
何時もなら、意識するだけで返事が帰ってくる筈なのだが、やはり反応は無いので少し心配になってきた。
外傷は昨日の内に完全に回復しているので、後はカケル次第なのだが、色々と考えを巡らせてみるが答えは出そうになかった。
即死を回避するアイテムを付けていたし、チャックも、いざとなれば助けてくれる事もカケルは知っていた筈だ。
もしカケルがあの一撃で自ら死を受け入れてしまっていたら、もしかすると生きている事に気づかないまま永遠と眠り続ける事になるかもしれない。
考えたく無かった結論だが、可能性として有り得ることに納得がいかない。
自分達が意識だけの時は、時間を始め、五感の全ては感じようとしなければお互いに感じる事が殆ど無いので、意識が無くなっているとすると十年後に目覚めたとしても、本人の感覚からすれば一瞬の出来事に感じられるだろう。
厄介な事になったと目覚めて早々にもう少し早く出ておけばと思っていると、チャックが目を覚ましたのに気が付いたオーガのクロームが起き上がった。
「おはようございます、主、どうかなさいましたか?」
「ああ、おはようさん、相方が起きんくてな」
「昨日、仰っていたカケル様の事ですね」
「そうなんよ、朝には起きると思っとたんやけどな~」
「早くお目覚めになると良いのですが、まだ、謝罪もできていませんし」
「まぁ……しゃーないか、とりあえず飯食いに行くで」
手早く身仕度を済ませて、一階にある宿泊者専用の食堂へ行くと、まだ早かったのか二人は起きて無いようで来ておらず。待つ必要も無いので先に食べることにした。
朝食も食べ終わり、二人が起きてくるのを少し苦めのコーヒーを飲みながら待っていると、半分飲み終わった頃に二人が降りてきた。
二人とも、この世界では、かなり気合いの入ったお洒落をしていて、思わず飲みかけていたコーヒーを吹き掛けてしまった。
「カーケールーくーん、おはよう!」
食堂の入り口で目的の人物を発見したチノが、何時もの事だが、駆け寄ってきてカケルに抱きついてきた。
「おはよう、もう、大丈夫か?」
少し含みのある言い方でケイトが挨拶してきたので、カケルが起きているのか確かめる為だという事に気が付いた。
チノはカケルだと思って抱きついて来ているが、まだカケルが目を覚ましてないと知ったら、どんな反応をするだろうと、少し怖くなってしまう。
「え?」
くっついているチノを持ち上げて隣の席に座らせると、ケイトに目で合図して座るように伝える。
それだけでケイトは察したのだろう、一瞬表情が曇ったが直ぐに元の表情に戻すと向の席に座ってくれた。
「どうしたの皆?それよりも、なんでコイツがここにいるの!?」
「チノ、ホンマにすまん」
「どうしちゃったの、カケルくん、カケルくんが謝る事なんて………その喋り方、もしかしてチャック?」
「そうや」
「珍しいね、チャックが出てるなんて、カケルくんは起きてるんでしょ?」
「すまん」
「起きてるよね?カケルくん……」
「すまん」
「カケルくん、まだ起きてないの?まだ寝てるだけとかだよね」
「チノ……落ち着いて聞いてくれ、もしかしたらカケルはこのままずっと寝たまんまかもしれん……けどな、今直ぐに起きるかもしれん、それが分か」
「ちょっと、まってよ!ケイトが朝にはカケルくんは起きてるって言ってたよ!?冗談でも、酷ぃょ……」
「冗談や無い、真面目な話や、もし、二人が俺と別れるんやったら止めへんし、今まで通り一緒に居てくれるのでもええ、それは二人の好きにしたらええ」
「別れた場合、ヒルトの事はどうするつもりだ?」
「それも、話さなアカンな、もし、一緒に行かれへんって言うんやったら俺が面倒みる。俺にこの街に居て欲しく無いって言うんやったら、俺の手持ちから好きな装備を二人に渡すで」
「そうか」
「俺は席を外すさかい、後は二人で決めてくれんか?」
「ちょっと、待ってくれ」
席を立ち、部屋から出ようとしたところでケイトから待ったがかかった。自分で言い出しといて投げ出すようで二人には悪いけど、今日は二人居るとダメになりそうで、言うことを言ったら早く離れたかった。
「カケルを目覚めさせる方法はあるのか?」
「どうやろ……そうやな、感情が高ぶったりしたりしたら、衝撃で起きるかもしれんけど、確証はないわ、後は精神操作系のマジックアイテムかな」
「そうか」
俯いた二人を置いてその場を放れると、クロームが森で少しは楽に暮らせるように知識本や生活に必用な買い物などを済ませると、深緑の森の中で生活しやすそうな場所を探して回った。
クロームを放り出しても良かったのだが、一応ダンジョンから連れ出した責任も感じるので、生活に支障が無いくらいの所までは面倒を見るつもりだ。
「主、ここが良いと思います」
「そやな、ここならええやろ」
二の鐘(2時頃)の時間になった頃に、深緑の森のかなり深い所、俺とクロームの身体能力なら近くの街や村まで2時間位の所で、なかなか良さそうな場所が見つかった。
此処なら、直ぐそばに川も有るし、キャンプ場としても良さそうな場所なので、小屋を建ててしまえば何も困ることはないだろう。
「ちょっと待っときや、クラフトスキル・中規模家屋」
「おぉぉ、流石、主様」
クロームが驚きの声を上げるのも無理は無いだろう。俺のスキル発動を合図に、指定した範囲内の地面が整地され、近くに有った資源、川原にあった岩が独りでにブロック状に別れて、並んで積み重なっていく。
近くの木も同じように何本かが、始めから用意されていたかのように分かれると、支柱や屋根に形を変えていき、僅かな時間で石と木で出来たロッジが出来上がった。
今回もなかなかの出来だと我ながら上出来だと感心できる出来映えだろう。
このクラフトスキル・中規模家屋は仕事の性質上、被災地域などに行くことが多かった為に、仮設でも少しの間暮らすのだから被災者がすこしでも安心出来るように、練習を重ねて、こだわりの一軒を建てられるようにしたものだ。
その後、視察でその星に行った時、そのまま其処で暮らし続けている人が多かったので、その土地の建築関係者から悔しさ混じりに「これを簡単に建てられたら俺達の仕事が無くなる」と文句を言われたのは良い思いでだ。
オーガのクロームも大袈裟な程に驚いているが、初めてこのスキルを見た人は大抵こんな感じになるので気にしないことにした。
「凄いと思っていましたが、まさかここまでとは、このような立派な物を建てていただき、ありがとうございます」
「こんなん、練習したら、誰でもできるで」
「そうですか……」
「最低限の家具も有るやろうし、後は好きにしてくれや、お前やったら、ここら辺の魔物でも余裕で狩れるやろしな」
「そうですね、後は、一人でやります」
「そんじゃ、なんかあったら、昨日渡したアイテムで連絡してきいや」
後は何も心配は無いだろう、今も近くにワイバーンやキマイラ等の魔物が潜んでいるが、クロームからしたら、道端で散歩している犬くらいの存在でしかないので脅威になることはない。
少し時間をかけてアルトニアまで戻ると、日も傾いて空が紅くなった頃に宿に到着した。
読んで頂きありがとう‼
ー情報更新ー
クラフトスキル・中規模家屋
最大、二世帯が暮らせる位の広さを確保できる建築物を作成する。間取りや形、それに伴う強度は発動者のイメージに大きく左右されるために、殆どこのスキルを使用する物は居ないが、資源さえあれば手早くできるため、仮設住宅の設置に多く利用される事も有るが、大抵は初級~小規模までとなる。




