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目覚めたら全裸で森でした  作者: マッタ・LI
アルトニアの迷宮
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アルトニアの迷宮、変身ってロマンだよね

こんにちは‼


魔物種特有の現象、進化が始まった。

滅多に野性の魔物が進化するところなど見れないだろう。


急激な身体の変化に伴いミシミシと軋むような音が、離れた場所に隠れているケイトにまで聞こえていた。


「今のうちだ、逃げるぞ」

「ちょい待ちぃな、最後まで見せてえや」

「は!?何を、流石に不味い……大丈夫、なのか?」


朝稽古の時に感じたチャックの強さを思い出しても、強さの次元が違い過ぎる為に勝負の行方が全く分からない事に不安になるが、カケル(チャック)は見せ物でも見るように楽しんでいるようにしか見えない。


「心配要らへんて、進化したところで、たいして変わらんさかいな」


そうこう話している間にも、黒いオーガだった物の身体は2メートル位まで縮み、全体的にスマートになっていく。


「戦隊もののTVでなんで待つんやろ?って思ってたんやけど、なんか分かる気がするわ」

「何の事を言っているか分からないが、今のうちに倒さないのか?」

「なに言っとんねん、変身はロマンやろ」


ブツブツと何やら意味不明な事を言いながら、キラキラした目でオーガの進化を見ている様子は、子供が騎士を見て憧れている姿にも見えなくはない。

憧れの目を向けているのは騎士ではなく、災厄とも呼べるような物に進化しようとしている魔物だが。


いい加減呆れてきた、さっきまでの絶望的な死の恐怖が嘘みたいに感じられなくなっているどころか、はしゃぐ子供を見ている気分になってくる。


側に居る二人を見てケイトは自分の考えが間違っていないことを改めて確認する。

チノは壊れた様に笑いとも鳴き声にも聞こえる声を上げて自我喪失しているし、ヒルトに至っては限界を越えたせいで意識を手放している。


これが絶対的な強者である魔物に出会ったときの正常な反応だろう?と二人を見てケイトは思うと、改めて目の前のアレは無いなと、ドン引きしてしまう。


「お!くるで、きよるで!」


はぁ、と場違いな溜め息を吐きながら、考えるのも面倒になってきたケイトは、魔物の進化を見守る事にした。こうなったら私も珍しい光景を楽しもうと思って。



黒いオーガだった頃は、3メートル近くもある巨大な身体と、その巨体でも不釣り合いな程太い腕をしていた。

進化し終わったソレは、体長が2メートル程にまで縮み、細くスマートな筋肉質な身体となった。


顔半分を覆うような紅い刺青らしきものが燃える様に光を放ちながら腕まで続き、赤黒い身体を禍々しく紅く照らしている。

髪は逆に青白く冷たさを感じさせる様な色をしており、そこから太く短い二本の深紅の角が飛び出している。

上半身は裸で、袴みたいな物を履いているだけで裸足だが、その肌は鋭く研いだ刃物も通さないような雰囲気があり、実際に生半可な物では傷を付ける事すら叶わないだろう。


その目は鋭く野性的ではあるが、知性を感じさせる輝きをもっており、長い修行を終えた武人のような顔付きをしている。


「ハッハッハ!力が、力が溢れて来る……、今なら負ける気がしない」


腕を広げ天を仰ぎ見るような格好で、酔ったような目をカケル(チャック)に向けるとそう言った。


「おぉぉ!喋りおったでケイト!」

「あ、ああ、そうだな」

「こりゃ、よかったわ、謝ってもらえるで」

「「は?」」


オーガとケイトの言葉が思わず重なってしまった。

オーガは脆弱な存在が理解不能な事を言ったことに対して。

ケイトは話せる様な知識を持つ魔物がどれ程の脅威かを知っていた為に。


「何を言うかと思えば、この俺様に謝らせるなどと、ほざくとは、いい度胸をしているな」

「そ、そうだぞ、見逃して貰えないか、交渉するべきだ。私なら…な、なんでもするから、私を使ってくれてもかまわない」

「ほほぅ、そっちの雌は分かっているようだが?」

「アホか!分かっとらんのは、お前方やで、どたまかち割って、ヒィヒィ言わせたるさかいな」

「フハハハ!脆弱な存在の強がりも、そこまでいくと面白い、何処までやれるか遊ん……で……やる?」


オーガが話している時に、カケル(チャック)の気配が変わった。

チノが一度、チャックと手合わせした時よりも、絶対的な力を感じる。


「ほう、遊んだる、か、なら、遊んでもらうで、覚悟はええよな?」

「な、なんだ、貴様は、」

「どうでも、ええやろ」


そう言いながら、カケル(チャック)が中空に手を伸ばすと、前から有ったかのように、何時の間にか武器が握られていた。


カケルの身長と同程度の長さだが、持ち手が中心にあり、そこから左右に二本の刀身が伸びている。

武器全体から僅かに神々しい光のような物を放っているが、眩しくなく辺りを照らすこともない。

持ち手は、二匹の蛇ような生物が絡みあった様な形状をしており、刀身が伸びる蛇の頭の後ろに龍の翼が生えている。

蛇の口から伸びる刀身は魔法的な何かなのか、カケル(チャック)が軽く振った時に伸びていた様にもみえた。


「双頭剣ウロボロス、特別につかったる。俺の仲間を泣かせた罪を、しっかり払ってもらうで!」


刹那、オーガが吹き飛んだ、何とかガードをすることに成功したようだが、攻撃を防いだ腕はズタズタに引き裂かれ、オーガの血が足元に流れ落ちていく。


「ぐぅ、これしきの攻撃で倒せると思うな!」

「言ってる事と、やってる事が違うで」

「な!?」


無意識に身体が逃げようとしていた。その事実にオーガは言われて初めて気が付いた。


「っく、何故だ!?この力は絶対だ!」

「何故って、俺のほうが、強かった、それだけっや!」


また、吹き飛ばされる、今度はガードも出来ずに直接食らってしまった。

進化した時に感じた力は何だったのか?

どうして、容易く此方がやられる?

二回の攻撃を受けただけで、オーガの力に対する自信が音を立てて崩れていくようだった。


「がは!、ごぼごぼ!」


口から血が溢れて来る、内臓をやられた。


「どうしたんや?さっきまでの自信はどうしたんや?もう一発いっとくか?」

「あ、あ、あ、!」

「なんや、終りかいな」

「敗けだ……、見逃してくれ……」

「ほな、誠心誠意、心を込めて、怖がらせてすんませんって言えたら、許したる」

「っく………す、す、すまなかった」

「ふーん、まぁ、ええやろ、お前みたいなのが、ダンジョンにいたら迷惑やろうし、外の森まで連れてったる。言葉を話すような奴を殺すのは趣味や無いしな」


全身の緊張が抜けていくのがわかる。

何時の間に緊張していたのかオーガには分からないが、とりあえず命だけは助かったと安堵した。



「カケル、そいつを連れて行くのか?」

「まぁな、進化させたのは、俺の責任やし、話せる奴を殺しても、後味悪いしな」

「私にはどうしようもないから、任せるが、しかしな……」

「ヒルトを運ぶのに丁度ええと思うけどな」

「……………」

「チノは俺が運ぶさかい、着いてきいや」


その後、チノが俺の顔を見て発狂したり、ヒルトの濡れた服を着替えさせたりと色々あったが、背中にチノを乗せると息が苦しい位に抱きついてきて落ち着いたので良しとしよう。


最短距離を進んでいく、移動用のスキルを全員にかけて、壁を切り崩しながら有り得ないスピードで一直線に進んでいく。今日は街に戻って二人を休ませてあげたい。

ケイトとオーガの乾いた笑いが後ろから聞こえるが無視だ。

そしてその日の内に30階層のボス部屋、階層主の所までたどりついた。

たしかストーンゴーレムやったと思うけど、他の魔物と一緒で弱かったから殆ど覚えてないな。


扉が一々重々しい音を立てて、ちんたら開いていくけど、遅くなって宿が一杯になると嫌やし、待ちきれんし扉ごと粉砕させてもらうで。


「レイ・イレイサー」

「へ!?」


全てを消し去る光の極大光線が扉にぶち当たると、チュン!っという音と一緒に消し飛び、中の物も一緒に消し飛ばしていく。


中に居た階層の守護者も何か起きたと気付く前に消え去ったであろう。

部屋の中には、溶けたガラス状になった地面だけがあるだけで何も残ってなかった。


「ぁぁ、なんて奴と戦ってたんだ、俺……」

「いや、カケル?いや、いいんだが」

「行くで?」

「「はぁ……」」



読んで頂きありがとう‼


ー情報更新ー


獄鬼・白夜


鬼族の進化し到達できる頂きの一つとして伝説に残る魔物。特に武術系のスキルに優れており、獄鬼・白夜の怒りに触れた国を一夜にして一国を滅ぼしたとされている。

その時、暗闇でも映える蒼白い髪と闇の様な身体を見たものが生き残り、後に獄鬼・白夜と呼んだことから、知られるようになった。


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