アルトニアの迷宮、ニンニン
こんにちは‼
黒いオーガの噂を聞いてから、今からじゃ遅いのは分かっているけど、チノから魔物をいち早く発見して戦闘を極力回避する方法を教えて貰いながら23階層まで降りてきた。
「そんな事してたら、先に見つかっちゃうよ」
「えー、これも、ダメなの?」
「私達と違って、魔物は鋭いんだからねー」
そう言いながら、床に耳を当てたりしながら実際に魔物の存在を感知するための方法を教えてくれる。
俺のやってた事とは大違いだ。
さっき俺は、何処かのスパイみたいに壁から少し顔を覗かせて、通路の先を確認したんだけど、これも駄目だった。
「うんうん、この先の通路を曲がって、左に行ったらオークが居そうだね、臭いもするし」
「何度も見せて貰ってるけど、全然分かんないや」
「んー、馴れだよ、馴れ」
チノの真似をして、耳を当てたりしてみるが、俺には何も感じないし聞こえない。経験と言うより種族の違いも大きく影響しているのかもしれない。
「全然、分からない……」
「仕方がないよ、始めたばかりじゃねー」
「気長にやるしかないか」
「そうだねー、感知系のスキルを覚えるまでガンバレー」
「へぇ~、そんなスキルも有るんだ」
「そそ、気配とか魔力とか色々あるよー、今やってるのは、気配感知の練習だね」
「なるほどねー、取り敢えず、オークの近くでもう一回やってみるか」
チノの言うとおり、通路を進んで行くと、曲がり角の向こうから、オークの鳴き声や足音が聞こえる様になった。
どうやら何かを食べている様で、咀嚼する音や、何かを引きちぎる音が聞こえてくる。
オークは臭いに敏感で今居る場所だと気付かれそうだが、食べるのに夢中になっているお蔭で俺達には気が付いて無いようだ。
さっきチノがやっていた様に、壁に耳を当てたりしてみると、オークが少し動く音がほんの僅かに聞こえた様な気がする。
この音があの場所で聞こえていたとか、チノはやっぱり凄い。さっきの場所から此処までは100メートル以上は離れてると思うから、その凄さに思わずヒルトの方を見ると、ヒルトも俺を見ながら、お手上げだ、とでも言うように肩を竦めていた。
しばらくオークが発する音を聞きながら、何匹いるか等を把握したつもりで、答え合わせの為にオークが居る通路を、少し顔を出して確認してみた。
俺の予想では、オークは5匹で全員が獲物を囲むように食べている筈だったが、実際は3匹で此方方向に向いているオークが二匹で、もう一匹は此方に背を向けている状態だった。
しかも、間の悪い事に、大丈夫だと思ったタイミングで覗いたつもりが、此方に向いているオークが一匹顔を上げているタイミングで覗いてしまったから、直ぐに見つかってしまった。
オークは警戒するような声を上げて仲間のオークに知らせると、警戒体制に入ってしまったようだ。
「あちゃー、見つかっちゃった」
「悪い……」
「ふふ、カケルが先頭だな」
「後ろは任せて貰おう」
「それじゃ、俺が引き付けるから、ヒルトは隙を見て頼む」
俺達が強くなるために、此処まで極力チノとケイトには戦闘に参加せずに辺りの警戒をしてもらっている。
お蔭でヒルトとの連携が良くなっている気がする。
通路に俺一人が出て、ヒルトには魔法の準備ができるまで、通路の角で隠れてもらう作戦を直ぐに決めると、作戦通り何時でも防御できる体制でオークが居る通路にでた。
オークとの距離は3メートル位だろうか、前に、こん棒構えた二匹、後ろにシミターみたいに見える反りの有る片刃の剣を構えた、少し大きいオークが一匹が此方を警戒しながら威嚇してくる。
体格も数もオークに負けているので少し心細いが、ヒルトの準備が出来るまで、時間を稼がないといけないので、攻撃の構えでジリジリと距離を詰める作戦で時間を稼ぐ事にした。
もし、オークが一気に攻勢に出たら、俺にはどうする事も出来ないのが分かっているので、少しでも俺は強いぞ!と威嚇しながら、オークが一気に来ないことを祈りながら時間を稼いでいく。
そして、もう少しでお互いの間合いに入ると言うところで、後ろからヒルトの魔法が飛んできた。
此処から一気に攻めて前の二匹を倒せたら、作戦成功で後ろのシミター持ちを倒すだけになる。
失敗したら、恐らく一気に攻めて来るだろうから、チノとケイトが待機している所まで下がって、助けて貰う事になるだろう。
「ファイヤーボール!」
「くらえー!」
ヒルトのファイヤーボールが左に居るオークに当たると、爆発して炎が広がり、直撃したオークの上半身を吹き飛ばした。
眩しさと熱が俺の方まで少しくるが、突然の魔法攻撃で動きが止まっているオークを逃したら奇襲の意味が無くなるので、右側のオークの首を切り飛ばして反撃が来る前に後ろに飛び退いた。
ファイヤーボールの爆発で舞い上がった煙を掻き分ける様に煙の中から、シミター持ちのオークが目を押さえながら無茶苦茶にシミターを振り回しながら走ってくるが、前が見えなくなったのか、壁にぶつかりながら検討違いの方を切り続けている。
一瞬ヒルトと目を合わせると、俺は剣槍と身体に魔力を込めて、最近覚えたスキルを間合いの外から突き放った。
「疾風突き!」
スキルの発動と同時に、身体が一気にオークまで近付くと剣槍の届く距離の少し前に居るオークの首を狙い通りに吹き飛ばした。
この新しく覚えたスキルは、夜にチャックが書き残してくれていた方法で練習していて、最近形になってきたスキルで、まだ少し溜めが必要だけど、リーチが伸びて威力も結構ある無属性の使い勝手が良いスキルだ。
今回初めて実践で使ってみたけど成功して良かった。ヒルトも俺がスキルを使ったことに驚いているみたいで、信じられないって顔をしながら目を擦っている。
「お、おい!カケル何時の間にスキルなんて覚えたんだ?」
一応ヒルトにはチャックの存在は内緒にしてるから、誤魔化さないと……
「えっと、ちょっと、ね……練習してたら出来るようになった」
「ちょっとって、誰にも教わらずに、スキルなんて覚えられる訳が無いではないか、もしかしてカケル、槍技のスキル持ちだったのか?それなら話は分かるが」
「槍技?いや、どんなスキル持ってるか俺分からないけど」
「はぁ!?」
「はぁ!?って、ビックリする事でも無いでしょ、スキルなんて見れないんだし」
「はぁ…カケル、二人から何も聞いて無いのか?」
「聞くって何を?」
「神殿の事だな」
「神殿?初めて聞くけど……見れるの?」
「常識であろう、10歳の誕生日に連れて行ってもらったであろう?忘れたのか?」
「え……と………どうだったかな?」
「信じられない……カケルがそんな奴だったとは」
「そう言われてもな、昔の事は覚えてないんだ、記憶喪失ってやつかな?一ヶ月以上前の事は分からないんだ」
「………悪かったな、そう言う事だったのか、もう少し早く教えても良かろう」
(騙す様で気が進まないけど、仕方がないよね)
「そうだったな、言っとくべきだった」
「まぁ、よかろう、次からは隠し事無しで頼むぞ」
「ああ、気を付ける」
ここで新しい常識を知るなんてな、後で聞いておかないと。どんな感じにスキル出るんだろう。
無事に戻れたら、一番最初に行きたいな。
読んで頂きありがとう‼
ー情報更新ー
オーク
この世界のオークも、食欲、性欲共に旺盛で、メスを見つけると、鼻息荒く襲っていく。
ダンジョンに出現するオークは、ランダムで武器を持って産まれて来るので、場合によっては有り得ない強さの武器を持って産まれることがあり、ギルドでは要注意モンスターの一種としている。
ダンジョン外のオークは群で行動しており、外見に似合わず知能が高く、大きなオークの群では鍛冶や農業をするオークも居るほどだ。
しかし、その性格は野蛮で、街道を行く人々を始め、近くの村や町を襲って略奪行為を働く事がある。




