第10話
視点:バレーノ
そこは荒れ果てた荒野だった
乾いた風が俺の頬をかすめ、一面に広がる雲はまるでのしかかってくるように重々しかった
俺はそこを見慣れた風景だと感じた
当たり前の、俺のいるべき世界―
いや、もう違う
俺の「当たり前」は壊されたんだ
果てのない、永遠に見えるこの荒野にも終わりはあるんだ
1歩足を踏み出す
その瞬間、目の前の荒野にヒビが入り、バラバラと崩れ落ちた
そして細く、入り乱れた道に変わった
俺はこの先多くのことを知り、悩むのだろう
アムンストを…人間を助ける方法がわからなければ、殺す必要もあるのだろう
この入り乱れた道で、俺はきっとたくさん苦しむ
時には間違える
…それでもかまわない
何もない、何も起こらない荒れ果てた世界とは違う
仲間がいる
一緒に歩んでいける人たちがいる
ゆっくり、自分にとっての正解を見つけていけばいい
これが、俺の新しい道なんだ
乾いた風が背中を押すように吹く
俺は細く、入り乱れた道へ足を踏み出した
が、すぐに足は止まった
頭にある言葉が浮かんだからだ
「俺の前提」
俺の物語を進める上で一番大切なもの―
あれ、俺のこれまでの物語は正しかったっけ?
俺は普通の人間じゃないから、これまでの道のりは俺が思っているよりずっと長かったのだろう
その長い期間、俺はずっと奴隷だった…そう記憶している
―ほんとうに?
浮かんだ疑問を確かめずにはいられなかった
俺は後ろを…荒野であるはずの後ろを振り返った
そこは荒野ではなかった
真っ暗で何も見えない
目を凝らしても、そこに道を見つけられない
俺の過去は、途中で書き換えられたのか…?
俺は本当はどんな道を歩んできたんだ?
わからない…思い出せない
俺の物語は…前提は…
ふと、暗闇の先に小さな光が現れた
ずっとずっと向こうにある…とても小さな…あれはなんだ?
目を細め、光を見つめる
そこには人影があった
人影は動かなかった
こっちを見ている?
すると突然、胸に見知らぬ感情が込み上げてきた
なんだこの感情は?
目が熱くなる
頬に何かが流れる
光に向かって走り出したいと強く思う
だが足は動かない
過去に戻ることはできないということか
人影に向かって手を伸ばす
届かないとわかっているのに…なぜ?
人影は尚も動かない
こちらに気づいているのかもわからない
胸がざわつく
自分では抑えられない
自分のことなのに何もわからない
俺はあの人影が誰かを知っている…?
ふと、人影が動いた
こちらにむかって手を振っている?
と、小さな光が弱くなっていく
「待って!」
無意識のうちに叫ぶ
光はその声に答えることなく、小さくなっていく
そしてついに見えなくなってしまった
足元がぐらつく
直感的に夢から覚めるのだとわかる
目がさらに熱くなる
視界が歪む
頬を伝うものが止まらない
夢から離れる瞬間、俺は俺自身の意思にはないままに叫んでいた
「絶対、絶対会いに行くから!約束を果たしに!だから…だから!」
そして俺は夢から覚めた
第11話へ続く
※次回からは前書きを注意してご覧ください
前書きを飛ばして読むと、混乱される可能性があります




