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海行きたい…

総合評価が1000突破していました。

みんなありがとう!そしてありがとう!

今更だけど、これを書く前にずっとタイバニ見てました。超面白かったです

個人的に天元突破グレンガランに以来の大ヒットです。

映画を見に行くまであるね!

街壁の前には広大な焼野原が広がっていた。

いや、焼け野原というよりは灼熱の鉄板といった方がいいだろうか。

大地が焼けただれて、一枚の大きな板となっている。

街壁の上にいるというのに熱気が届いているようだ。

そろそろ日が落ちる時間だが、未だに冷える気配を見えない。

街壁から聞こえてくる剣戟の音も途絶えて久しい。

訪問者(ヴィジター)のクランの中でも、トップクラスのヴァニルクランに所属している徹だが、所詮兵隊に過ぎない。

そのために、事後処理に追われることもなくのんびりと街壁の上で、再び(ぬえ)が押し寄せてこないか見ていた。


「お疲れ様」


声に反応して振り返ると、徹とは対照的にぼろぼろの格好のカシアが水筒をもって立っていた。

水筒の中身はややぬるくなった水だったが、炎天下の中に補給もなしにいた徹には、嬉しかった。

もともと、今回の襲撃は、完全にカーマインを落とせるだけの戦力を整えた、(ぬえ)による襲撃だった。

それを追い返せたのも、徹がでかい一撃をぶっ放したために、(ぬえ)も恐慌に陥ったためだ。

そのために、ヴァニルクランではほとんど負傷者はいない。

だが、ほかのクランの場所では、(ぬえ)が浮足立ったとはいえ、少なくない被害が出たと徹は聞いた。


「カシアか。大丈夫?けがはなかった?」

「うん。ありがとう。ちょっと、(ぬえ)に腕をかまれてちぎれかかっちゃったけど、トオルからもらったポーションを使ったらきれいさっぱり治っちゃった」


何でもないことのように言っているが、相当痛かっただろう。

確かに、カシアの腕にはひじの部分から手先に向けて服がちぎれてない。

残っている服は血で真っ赤に染まっていた。


「役に立ったなら何よりだ。こっちも、フィーネとエッカルトは無事だよ。コンラドもさっき会って、無駄に元気だったよ」


カシアは、徹の話に何も言わずに隣に腰かけた。

それっきり、会話が途切れて不思議な空気のまま時間だけ立っていった。

徹は何かを言おうとするが、何をしゃべってもしっくりこなく自然と沈黙が続いている。

それでも徹はもらった水筒の中身を少しずつ空けながら、話題を探した。


「そういえば、うちのクランでも何人か故郷が心配だって言っていたけど、カシアのとこも結構いるのか?」

「え!?あ、うん。私のとこも何人かいたかな。でも、街の外は危ないからみんな集まって見に行くってことになったみたい。この街に生まれた人の方が多いんだけど、どうしてもね。徹はどうするの?ついて行くの?」

「ん?俺?んー、俺はいいかな。うちのパーティーは誰も行かないんだろ?」


徹のパーティーは、徹以外の全員がこの町の出身だった。

そのために、心配して町の外に出るという危険を冒すことはないのだろう。


「そっか…。うん、そうだよね」


カシアは、少し悲しそうな、あきらめたような顔をする。

それからまたぷっつりと会話が途切れて、二人の間には沈黙が下りた。

長い沈黙の後次に口を開いたのは、カシアの方だった。


「……ありがとう」


(うん?ありがとう?何について?ん?(ぬえ)を追い払ったこと??)


「あー、うん。どうしまして?」











「……ありがとう」


トオルの隣に座ってからずっと悩んで意を決して、この気持ちを伝えようとして出た言葉がこれだった。

全く意識しなかった言葉だったけど口から出てみれば、これほど今の私の心を表現した言葉はなかった。

でも、案の定というべきか…


「あー、うん。どうしまして?」


トオルにはなにも伝わらない。

自分の気持ちを表現することと自分の気持ちを相手に伝えることにここまで違いがあるとは思わなかった。

だけど、まったくうまく伝えられる気がしない。

心の底から、トオルには本当に感謝をしている。

ずっと干されていた私やコンラドをひろってくれて、道を示してくれた。

いつも馬鹿ばっかりやっているけど、その裏では想像もつかないほど深いところまで事実を見通している。

空恐ろしいほどに。

そう、あの時もそうだ。

初めて会ったとき、私が迷宮に違和感を持っていたこと、そのことに警鐘を鳴らしていたことを肯定してくれた。

それは、私が、ずっとずっと守ってきたもの、クランで干されても馬鹿にされても狂人だと蔑まれても耐えて、意見を曲げなかった。

あのとき、初めて、嘘や下心なく私と同じものを見ている人間と出会った。

でも、それは勘違いだった。

トオルは、もちろんのこと私を慰めようとしたわけでもなく、それどころか私を見ていたわけですらない。

私よりももっと先のところにいて真実に迫っていただけだった。

あの時から、ずっとトオルの背中を見ている。

彼は光だ。

私の希望であり、私を守り導いてくれる光。

今回の事もそう、ほとんどの死傷者を出さずに今回の(ぬえ)の襲撃を跳ね返せたのも彼がいたから。

本当に私たちは守られている。

だからだろう。


「…ここに居てくれて、ありがとう」


これが、本当に伝えたかった言葉。

この町でもあの村の出身ではない徹が、ここにいる奇跡を。














「ここに居てくれて、ありがとう」


改めて言われた礼に、再び徹は面食らうことになった。

正直いって、ヴォルフ(理不尽)によってこの世界に落とされて、必死に生きるため(魔術を使ってみたい)ためにこの街にたどり着いたに過ぎない。

その上、旅の恥はかき捨てとばかりにやりたい放題していただけだ。

自重という言葉の意味もしばしば忘れだしている今日この頃。

礼ならむしろ徹の方からしなければならないと思っているくらい。

だけど、かといって日本人よろしく謙遜するのも逆に礼を言うのも変な話だ。

徹が礼を言うには、説明していないことが多すぎる。

秘密というほど意識的に隠してはないが、意図的に語っていないことは多い。わざと勘違いさせているという点もある。


「あー、なんていうか。それには、どういたしましてとはいえないわ。俺はまだここで何もやってないからね」


だけど、礼を受け取る気にもなれない。


「そんなことはない。私は徹がいなかったら…」

「いや、いいさ。カシアが感謝しているのは十分伝わっている。でも、俺が何も満足してないってのが問題なんだよ。だからさ。さっさと迷宮攻略しちゃおうぜ」


礼を受け取れない徹は、無理にでもカシアの言葉をさえぎって我を押し通す。

それを軽口ととったカシアは、一つため息をついた。


「なにさ。その反応は、俺は本気で言っているんだよ?」

「本気で言っているのは知っているけど、まだ先の話でしょ。私たちはやっと10層を抜けたばっかりなんだよ」

「それは、外から見た評価だろ?実際問題、俺たちのパーティーの実力はゾネのとこともほぼかわんねーよ?チェイサーとだって普通に勝てるクラスの力はある」

「そりゃあ、トオルがいればチェイサーとだって勝てるわよ…」

「いやいやいや、俺抜きでも勝てるって。エッカルトの回避能力とコンラドの攻撃力を馬鹿にしちゃいかんぜ?それにフィーネちゃんだって魔法馬鹿ってわけじゃなくて弓の腕も相当なもんだ」

「たとえチェイサーに勝てたとしても、今まで、誰も最下層にたどり着けた人はいないんだよ」

「多分だけど、あれ、階段下りて行っても最下層にはたどり着けないと思うぜ」

「は?なにいってるの?」


カシアにとって徹のセリフは青天の霹靂だった。

階層を下に潜っていく。

そしてディーナシーがいる最下層にたどり着く。

これは、すでに無意識的に刷り込まれた常識だった。

でなければ、皆がなぜ、より深く、より長く、より危険を冒して迷宮に挑むというのだろうか。

『最終階層に大ボスやら宝やら何やらがある。そして、迷宮を深く潜れば最下層にまでたどり着く』これは大前提だ。

これで1Fをよく探したらボスだの迷宮の宝だのがありましたでは、笑えない。


「え?文法間違ってた?あっれー?おかしいなー」

「そうじゃなくて!最下層にたどり着けないって、なにそれ!」

「ちょいちょい。落ちつこ。唾飛んでっから」

「あ、う、ごめ…」


怒りながらも素直に謝るカシアにかわいいなーと思ってしまう。


「いやね。多分最終階層に続いているのは、あの隠し部屋の奥にあった縦穴もしくはそれに準ずる縦穴だと思っている」

「えっと、つまり徹はあの隠し部屋にまた行きたいってこと?」

「あの隠し部屋の縦穴が、下とつながっているかどうかは微妙なとこなんだよね。俺が使ってみようと思っているのは、落とし穴の方」

「落とし穴?今日見たのだよね」

「そうそう、あの落とし穴のこと。なんていうか、あからさますぎるんだよね。誘ってるっていうのかなー。隠し部屋にあったあれとはなんか違う感じがする」

「…根拠は?」

「勘!というほどお粗末ではないけどね。カシアは俺のスキルのこと知ってる?」

「えっと『持たざる者』だっけ?うちのクランの人が言うには無能になれるスキルとか…あっごめん」

「いやいや、いいの、いいの。これは、確かに無能になれるスキルだけど、そう簡単なものじゃないからね」

「えっと、どういうこと?」

「説明しづらいんだけど、『何もないとわかっている』のさ。今回の場合で言えば、俺は迷宮に入って3回もイレギュラーに出会った。ほとんどの人間が出会わないような珍しいものにね。これがただの人間ならば、幸運や凶運。いわゆる確率の偏り。もしくは、そういうものを引き寄せる体質とか、それに類するスキルの所持の可能性がある。だけど俺の場合はそれがないという前提がある。という事はだ」


そこで徹は一息ついた。

『持たざる者』は何もないという証明。

偶然も奇跡も幸運も悪運もない。

あるのは必然だけ。

原因があって、結果がある。

無意味に結果だけは出てこない。

それ故、徹はすべての物事を理詰めで、詰めていけば、結論にたどり着けるという特権を持っている。

そして、神崎司の残した技術―魂の強化。

魂の強化によって、思考能力・情報処理能力・想像力を魂に作った新しい回路で行っている。

このため、すべての脳内で行う能力が人間の限界を大幅に上回っている。

結果として、徹はあらゆる出来事を理解できるようになっている。

この二つが『持たざる者』のスキルをベースに徹を高みに押し上げることとなった。


「イレギュラーが3回も続くってことは、変則的(イレギュラー)ではなく、必然(レギュラー)だということ」

「だとしたら…」


徹の言葉を追従するようにつぶやくカシアはすでに思考能力がマヒしていた。


「まず、初めのチェイサーとの遭遇は、ディーナシーが俺のことを(モニターし)ていたってことだ。俺の存在を見たうえで、あれ(チェイサー)を送ってきやがった。そして、今回の落とし穴は、明らかに俺たちを誘ってやがる。いらっしゃいってな」

「考えすぎじゃなくて…?それに、隠し部屋の奥にある縦穴を見つけたことは?」

「あれは、多分偶然だと思うよ。普通では開けられないものを無理やりこじ開けたからね。むしろ、あれを俺たちが見つけたからこそ、余計にディーナシーは俺たちを最下層に招待したいのかもね」

「そんな…じゃあディーナシーってなんなのよ!」

「え?迷宮管理者でしょ?あそこに住んでるんだよ。どんなモンスターか知らないけど、少なくともかなりの知能を持って、迷宮の運営管理を行っているのは確かじゃない?罠の位置も変わってるし、モンスターもちゃんとすみわけとかしてるしさ」

「あっそっか…」


カシアはどうにも今自分の頭がはたいていないことに気が付いた。

徹にしたら、ごく自然なつっこみだが、カシアに取ったら常識自体が脆く崩れ落ちていく気分だった。


「ま、これは仮説の域を出ない。だけど、俺の中では、十中八九あたりだと思う。だから、次に迷宮に潜る時に行くかやめるかみんなに聞こうと思っている。それでまず、カシアはどう思う?」

「まって、そんな話急にされても混乱するだけだから、今言おう。それで、次に迷宮に行くまでに考えてきてもらわないと無理よ。そんな急に結論出せなんて」

「そっかなー?」

「はぁ…もう…じゃあみんなをここに呼んでくるね」


カシアはため息をつくとともに、痛みを感じたこめかみをもんだ。

そして立ち上がって、みんなを集めるために街へ向かっていった。


(ふふ。でも、コンラドなんかは一も二もなく賛成しそうだけどね。彼は彼独特の価値観で動いてるからね)


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