表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/116

第82話 均衡の中心

広場の空気は、凍りついたように張り詰めていた。


 遠巻きに人がいる。だが誰も近づかない。夜の灯りが揺れ、石畳に影を落とす。その中心で、レオと黒い外套の男は向かい合っていた。


 互いに動かない。


 だが、次の一歩で全てが変わると、誰もが感じていた。


◇ ◇ ◇


「終わらせると言ったな」


 男が静かに口を開く。


「何を終わらせる? この町の混乱か、それとも——」


 一瞬だけ間を置く。


「自分の立場か」


 挑発ではない。事実の提示に近い声だった。


 レオは揺れない。


「どっちでもいい」


 短く言う。


「全部止める」


 その言葉に、男はわずかに笑った。


◇ ◇ ◇


「できると思うか?」


 問いは軽い。だが、その裏には確信がある。


「人はもう疑っている。信頼は壊れた。一度壊れたものは戻らない」


 男はゆっくり歩き出す。


 円を描くように距離を詰める。


「お前が何をしても、遅い」


◇ ◇ ◇


 レオは一歩も動かない。


「戻すつもりはない」


 静かに返す。


 男の動きが一瞬止まる。


◇ ◇ ◇


「壊れたなら」


 レオは続ける。


「作り直す」


◇ ◇ ◇


 その言葉に、男の目が細くなる。


◇ ◇ ◇


「面白い」


 低く言う。


「だが、理想だ」


 次の瞬間、男の体が消えるように動いた。


◇ ◇ ◇


 間合いが一気に詰まる。


 刃が走る。


◇ ◇ ◇


 レオは最小の動きでそれを受け流した。


 衝撃を逃がし、足を半歩引く。反撃はしない。まずは読む。


 男の動きは速い。無駄がない。だが、急いでもいない。


 試している。


◇ ◇ ◇


「守る動きだな」


 男が言う。


 次の一撃が来る。


 今度は低い位置から。足を狙う。


 レオは体を捻り、刃を避けると同時に、相手の腕の軌道を外へずらす。


 力ではない。


 崩し。


◇ ◇ ◇


 男がわずかに距離を取る。


 初めて、完全に間合いが切れる。


◇ ◇ ◇


「なるほど」


 男は小さく息を吐く。


「ただの理想家じゃない」


◇ ◇ ◇


 レオは何も言わない。


 呼吸を整える。


 視線を外さない。


◇ ◇ ◇


 そのとき、広場の外周で動きがあった。


 ガレスと町の男たちが、騒ぎを抑えながら外周を固めている。兵も配置につき、逃げ道を塞いでいく。


 戦いは、二人だけのものではない。


 だが中心は——ここだ。


◇ ◇ ◇


「終わりにするって言ったな」


 男が再び構える。


「なら、見せてみろ」


 空気が変わる。


 今度は本気だ。


◇ ◇ ◇


 レオも一歩踏み出した。


 迷いはない。


 守るためではない。


 終わらせるための動き。


◇ ◇ ◇


 次の瞬間、二人の間合いが再び交差する。


 刃と刃がぶつかる音が、夜の広場に響いた。


 その音は、合図だった。


 フェルトハイムの均衡を巡る戦いが、ついに決着へと動き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ