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まといものがたり  作者: つばき春花
第弐章 六人の宮司と蘇りし鬼姫
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第弐章 prelude其之壱 悪夢 

 私が小学生の頃、時々見た怖い夢。お化け? それとも妖怪?……図書館で見た妖怪図鑑に載っていた何か人みたいで……人じゃない……。それは顔が真っ赤で耳まで裂けた口、瞳が蛇の様に縦に割れて……そのお化けが私の足を掴んで暗闇に引きずり込もうとするの。物凄く怖くて身体も動かないし声も出ない……だからその時、心の中でこう思うの……

 

(おばぁちゃん……舞美おばぁちゃん……助けて…………助けて舞美おばぁちゃん!)


すると目をしっかり閉じていても分かるような光を感じてそっと目を開けると目の前に蒼い光の柱が立っているの。でもそれは、柱じゃなくて段々人の形に見えて来て……するとその柱がぴかぴかぁぁって目を開けていられない位に輝いて……私は、あんまり眩しくて顔を手で覆いながら顔を背けた。それから指の隙間からそっと目を開けて見たんだ……するとそこに居たのは体が青白く輝いて着物のような服を着た髪の長い女の人……。その人は、手にキラキラ光る長い刀を持っていてそれをお化けに突きつけ振り向きながら私にこう言ったんだ。


『もう大丈夫よ』


って。


その声は、舞美おばぁちゃん? ううん……違う。舞美おばぁちゃんじゃない。 だってその女の人の髪は、銀色に輝いて肌は、透き通るように白くて若くてすっごい美人だった(舞美おばあちゃんも美人だけど)。その髪は、私の部屋の中なのに川の流れの様に靡いていた。そしてはっきり覚えているのは……そう……お化けに向けて差出したキラキラ光る刀を持った腕には、青い蛇が巻き付いていたんだ。そしてその女の人は、私を化物から引き離すと胸元に抱きよせ、耳元で優しく囁いてくれた。


『優……目を閉じていなさい』

 

(この人……私の名前を知っている……)


私は、言われた通りその人の胸に顔をう埋め、目を閉じた。すると次の瞬間、またぴかぴかぴかぁぁって光が部屋の中一杯に広がったのを感じた。そして……


『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』


って物凄い叫び声が聞こえて……辺りが静かになった後、恐る恐る目を開けて後ろを見ると、お化けは居なくなっていて……振り返ってお礼を言おうとしたら……


「お姉さん、ありがとう……あれ? 居ない……」


女の人も、居なくなっているんだ。私はその後、何事も無かったかのように眠るんだけど次の日の朝、目を覚ますと昨夜あった事が……現実だったのか……夢だったのか……。その頃の私には、よく分からなかった。


だけどそんな夢を見た日から、何日間かは、必ずお化けが見えるようになる。それは、他の人には見えない者達……それが昼夜を問わずはっきりと目に見えて幼かった私は、とても怖かった。本当は、この事を誰かに聞いて欲しかったけどそんな事を誰かに言える筈もなく……自分が見えるお化けの事を他の人に話せない事が見える以上に怖くて……。勿論、お父さんお母さんにさえ言う事ができなかった。でも何故か遠く離れた舞美おばぁちゃんには、何でも話せた。


「大丈夫よ、優。私が付いてる!」


舞美おばぁちゃんのその言葉を聞くだけでとても安心できたんだ。だからいつもお化けが見えて辛い時は、親に内緒で、こっそり舞美おばぁちゃんに電話をして話を聞いてもらっていた。


舞美おばぁちゃんは、私のお母さんのお母さんで遠く離れた榊市の広い家に一人で住んでいる。涼介おじいちゃんは、私が生まれてすぐ、天国に行っちゃったからおじいちゃんの事は、良く知らないしおじいちゃんを写真でしか見た事がないけど、とても優しそうなおじいちゃんだ。遠くで一人で暮らしている舞美おばぁちゃんを心配して、お父さんとお母さんがこっちで一緒に暮らそうって何度も言ってるんだけどいつも返事は……


『私がここを離れたら涼介が寂しがるじゃないのぉハハハッ!』


そう言いながら高々に笑って誤魔化されているらしい。大好きな舞美おばぁちゃんと一緒に住めるなんて私は、大大大賛成なのになぁ……。


つづく……


 

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