其之弐話 序章 中ノ話
【JK舞美】
ごく普通の女子高生、名前は、舞美。
時刻は、午後5時21分、いつもならば部活動でまだ学校にいる時間だった。しかし今日は、何年も部活を休んだ事がない顧問の先生がどういう訳か都合で練習に来られなくなった為、急遽部活動が休みになった。なので珍しくこの時間に帰宅していた。
台所では、母親が夕食の献立で悩んでいた。肉か魚か……悩んだ結果、今日の献立はガラカブの煮付けに決めた。当初、お昼の時点で今日の献立は、鳥の唐揚げと決めていたが何故か『魚』という文字が頭に浮かび急遽、献立を変える事になった。
手際よく魚をさばき大根、椎茸、生姜を刻み、大きめの煮炊き用の鍋を用意している時にある調味料を切らしている事に気づいた。
「しまった!煮物用のみりんを切らしてた!」
もうすでに材料もさばき終わり、あとは一緒に煮込むだけだったのに……と、ここで母親は思った。
「うぅぅぅん……ここでメニューを変える訳にはいかないしなぁ……買いに行くの面倒くさいなぁ」
材料の前で腕を組み、どうしようかと悩んでいる母親の視界に、ふとリビングでゴロゴロと寝転び、お菓子をポリポリ食べながらTVアニメを見ている舞美の姿が映った。
その姿に少々イラっとした母親。舞美にみりんを買ってきてもらう事を考え声を掛ける。
「舞美、ちょっとお使い頼まれてくれない?」
そう声を掛けると。
「今忙しい……」
と返す舞美。しかしその返し方に益々イラっとした母親は……
「それ、録画でしょ!? 帰ってからでも見れるじゃない!」
母親は、少々怒り気味に言い返した。
「きょうちゃんがいるでしょ!」
母に似て面倒くさがり屋の舞美は、このピンチを中学生の弟に押し付けようとした。しかしタイミングが悪かった。弟は昨日、自転車のタイヤがパンクしてしまい、その修理に自転車屋に行っているらしい。
「えぇぇ……面倒くさいなぁ……ちえっ恭介の奴、ぜんぜんっ使えないっ!」
そう言いつつもようやく観念した舞美。せっかく滅多にない部活動の休みの日なのにお使い頼まれるなんてと気持ちは一気に落ち込んだ。しかしグズグズ言っていても仕方がない、すぐに気持ちを切り替え『よしっ』と立ち上がった、こういう気持ちに切り替えが早い所が舞美の長所だった。
一番近いスーパーまで家から歩いて10分少々。母親からお金とエコバッグを受け取り家を出る。ふと時計を見ると午後5時55分、日が傾き始め、天空には、既に一番星が輝き始めていた。近くのスーパーまで少々急ぎ足で行けば明るいうちに帰ってこれる。あんなに面倒くさがっていたのに不思議と足取りは軽かった。
「みりんっ! みりんっ! お菓子! お菓子!」
舞美は、歌いながら家を出た。




