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纏物語  作者: つばき春花
第壱章 五珠の御魂と月下の刀
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其之弐話 私は舞美! クリィミ―舞美!(なんちゃって)

前回までの『纏物語』は……


 男が舞美に気付いた時には、もう遅かった……猛烈なスピードが出ていたバイクに止まる術はない。


 男のバイクは、ほぼブレーキを効かせない状態で舞美と激突した。


 真横から跳ね飛ばされてしまった舞美は空中を舞い、地面に叩きつけられ、その後何十メートルも転がり、壁に激しくぶつかってようやく止まった。


 ここ某県榊市は、県の南側にあり人口は県で2番目に多く、都市部からは結構離れてはいるが近年、インフラ整備が進み福祉、医療なども大幅に見直され口コミで『日本で最も住みやすい街』と全国区で取り程だ。榊市は、緑豊かな街でもあり四方を高い山々に囲まれそのいくつかの山には、神話や伝説がある。

 

 そして今、この街で一番設備が整った榊地域医療センターに一人の女子高校生が瀕死の状態で運ばれてきた。バイクにはねられ、全身を強く打ち意識もほとんどない。




【舞美、禿ジジイ達との遭遇】

 

 「私は東城舞美、地元の県立高校に通う普通の高校1年生。みんなには、普通にまみって呼ばれてる。


 舞美って名前は、お母さんが子どもの頃に観ていた大好きなアニメキャラクターの名前からつけたんだって。その影響なのか私もアニメが大好きな女の子。


 高校生になっても毎週『プリキュア』は欠かさず見てる(ふたりはプリキュアが一番面好き)他にも「セーラームーン」も大好きだし「カードキャプターさくら」とか昔のアニメをお母さんとアニメ専門TVで観ている。


 アニメのタイトルで分かるけど私は女の子が格好良く変身したり、魔法を使って悪い奴をやっつける美少女物が大好き! 


 そういえば子供の頃、友達と変身ごっこをしてよく遊んでいたなぁ。同じ変身でも仮面なんとかは怖くて見てなかったけど……。男の子とどっちが強いか言い合ってよくケンカになっていた。


 部活は、バスケットボール部。私は、小学校三年生からバスケットボールを続けてる。だけど自分で言うのもなんだけど自分自身、結構運動オンチなのでなかなか上手にならない。


 だから始めた頃からずっと補欠メンバーだ。それでも私はバスケが大好きだからずっと続けている。そういえば……私……どうしたのかなぁ……確かぁ……バイクとぶつかって……ここは、どこ?」

 

 



 舞美は、そう思いながらゆっくりと目を開けた。すると周りの景色に違和感を感じて頭を横に向けると自分の体が宙に浮いている事に気が付いた。


 ふわふわと空中を漂う舞美。ふと目線を上に戻すと目の前に白い天井が迫っていた。そこで慌てて体を捻ると真下に視線が向いた。その視線の先には、沢山の機械に囲まれ頭を包帯でグルグル巻きにされベッドに寝ている自分の姿と、その横で泣き崩れている母親の姿があった。


「ごめんなさいぃぃまみぃぃ! 私が!私がお使いを頼んだばっかりにぃぃ!!」

 

 母親は、ベッドの横に跪き、舞美のベッドに縋り付き、些細な感情から舞美をこんな目に合わせてしまったという自責心に崩れ泣き叫んでいた。


 それを見ていた舞美は、思い出して呟いた。


「そうだ……私、お母さんにお使いを頼まれて……その途中で……バイクにぶつかった……んだ」


 居た堪れなくなった舞美は、母親の隣にゆっくりと降り立ち、両肩に手を添え弱々しく震える母親の背中に頬をあて呟いた。


「悪くない……お母さんは、悪くないよ……。そんなに自分を責めないで……お母さん…………」

 

 自分は、死んでしまう、家族を悲しませてしまう、しかしどうする事もできない。声を出して泣いても、語りかけても返事は帰ってこないし、自分の声は、ここに居る大好きな家族には聞こえない……。


「お母さん泣かないで……。みんな……泣かないで……」


 弟は俯いていたが父親は上を向き、涙を流していた。、舞美は、立ち上がりゆっくりと後ろへ下がり深々と頭を下げた後、呟いた。


「じゃあ……私……いくね。さようなら……お母さん……お父さん……恭ちゃん……」

 

 舞美は母親と父親、そして弟に別れを告げ、ゆっくりと顔を上げ指で涙をぬぐった……。


 しかし……ふとあることに気が付いた。


「んっ?……私……行くって……どこに行けばいいの?」


 アニメや映画でならば、よくあるシチュエーションとして、空から天使が降りてくるとか空から光の階段が降りてくるとかあるはずだが……降りてこないし何も起きない。舞美は、急に怖くなり考えた。

 

「もしかしたら私、成仏できないの⁉ このままお化けになるの⁉ それとも……ひょとしたら、黒くて大きな鎌を持った奴が来る⁉ イヤァァァァ‼」

 

ここから逃げなきゃと思うが窓もあかないしドアも開かない。どうやっても部屋から出られない。どうなってるのと途方に暮れていると、何処からともなく声が聞こえてきた。


(慌てるな舞美……お前はまだ死んでおらぬ……)


 何処からともなく聞こえてくる野太い声に、舞美が問いかける。


「何っ!? 誰! 誰なのよっ⁉」


 すると吐息のような微風とともに、微かにあまい御香のような香りが辺りに漂ってきた。


 そして四方の壁と天井に五つの光が浮かび上がり、光の中からぴかぴか光る何かがにゅ〜っと筍のように生えてきた。


「ギャァァァァァァァァッ‼」

 

 舞美は、口から心臓が飛び出るぐらいの悲鳴を上げ、恐怖のあまり顔が楳〇かず〇画風になり、頭を抱えて蹲ってしまった。


「きゃぁぁぁ! 悪いことしてごめんなさい! 弟のおやつを黙って食べました、ごめんなさい! お父さんのパンツを箸でつまんでます、ごめんなさい! それとそれと……ああぁぁ地獄だけは勘弁してください! お願いしますぅ!」


 恐くて顔を上げられず震えていると、肩に手を添えられ優しい口調で誰かが語りかけてきた。


「舞美、だからお前はまだ死んでおらんて。顔をあげよ」

 

 舞美は、恐る恐るゆっくりと顔を上げた。するとそこには、頭がつるぴかで仙人のような白い着物を纏ったお爺さん達が立っていた。


 よく見ると顔は、違ったが同じ様に禿げたお爺さんが、五人立っていた。


 皆同じような着物を着ていたが、手首や首にそれぞれ色や形が違う首飾りや腕輪があった。

 

 舞美は、ゆっくりと立ち上がった。そして何が起こっているか分からず、引きつった顔をしていると、眉毛が太い老人が歩み寄り、語りかけてきた。


「マミ、落ち着いて聞かれよ」


 と禿たオジイが言った。次の禿たオジイが言う。


「ようやくお主と話しができるようになった」


 次のはげたオジイが言った。


「我ら五人はお前達の祖先、遠い昔のじいちゃんだ」

 

 また次のはげたオジイが言った。


「悲しんでいる……母親には気の毒だが……今回の事故は……我らが仕組んだもの」

 

 次のオジイは何故か


「だからお前は、死なんと言っとろうが!」


そう怒り気味に怒鳴った。


 オジイ達は、秩序もなく次々と語りかけてくる始末、終いにはもう目が回り徐々に気分が悪くなってきた。


 その内に、舞美はイライラし始め、ついには大声で怒鳴った。


「ハゲた爺が揃って一度に話かけないでぇ! 誰の話を聞けばいいのっ!? 誰か一人が話してぇぇ!!」

 

 五人は、顔を見合わせ『それもそうだ』という事で話し合いを始めた。その結果代表は、太い眉毛が特徴のオジイが話す事になった。


 名前は東城虎五郎。この爺は、首に赤いガラスのような玉が連なった数珠を掛けていた。落ち着いた舞美に虎五郎が静かに語り始めた。

次回予告……


「舞美、お主は聞いた事がないじゃろう……。東城家は、儂らの時代、そう……現世からすれば遥か昔の事、神守、すなわち神に仕える事を生業にしておった。


 神に仕える者として、御座す処を清めるばかりではなく、民に降りかかる災いを祓い、そして時には、災いをなす悪霊をも祓い清める事を生業としてきた。


 しかし我等は気付いた……人の命は短く儚い。そこで東城家3代目当主、東城右近は、自らの魂を守護の珠に変える術『御魂の術』を編み出した。



          次回……『其之参話 古の神守 東城家』


                      ご一読よろしくお願い致します。


                               つばき春花




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