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怪物は一日にして成らず  作者: ランナー
5章 春眠、怪物は目覚める
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131話

 土曜日、佐和ちゃんと哲也は抽選会の為に会場へ。岡倉も記録員としてスコアブックの付け方講習会の為に同行。

 グラウンドの指揮は佐伯っち。選手の先頭に立っているのは、副キャプテンの大輔。

 俺はと言うと、自分のペースで、誉にボールを投じる。


 「ナイスボー!」

 俺の球を捕るなり、誉が大声を出す。いや、今のボールは対してナイスボールじゃないぞ誉?

 運動神経だけは良い誉は、捕球や送球などはある程度出来るが、いかんせんキャッチャーとしての経験が足りないし、リードが下手すぎる。

 頭いいからリードの仕方を教えれば、めきめきと力をつけるのだろうけど、誉はセカンドをメインに守っているし、控えキャッチャーには里田もいる。そこまでする必要もないだろう。



 「おらぁ! お前ら集合だぁ!」

 ここで佐和ちゃんの声がグラウンドに響く。どうやら会場から帰ってきたようだな。

 はたしてトーナメント表は、どんな感じになっているのだろうか?



 ベンチ前で円陣を組んだ。


 「よぉし、トーナメント表を配るぞぉ」

 そうして佐和ちゃんの手からプリントが配られていく。

 プリントには、今大会のトーナメント表が書かれていた。


 今年は去年よりも一校増えて58校でトーナメントをおこなう。

 Aシードは全部二回戦から出場。Bシードは一回戦から出場が2校で、二回戦から出場が2校となっているようだ。


 「俺達は右上か」

 一番右上にあるAシードに我が「山田」の名前が書かれている。一回戦はシード、二回戦からの登場となる。

 初戦の相手は、城東高校と鶴山高専(つるやまこうせん)の勝者。十中八九、城東高校だろう。鶴山高専と城東ではレベルが違う。

 俺個人の思いは、城東が勝ち上がって欲しい。去年の借りを返したいしな。


 佐和ちゃんや俺が最も警戒している斎京学館は反対ブロック。

 良ちんとは決勝戦まで戦えないようだ。残念でもあるが、反面ホッとしている自分もいた。


 それにしても斎京学館、酷い組み合わせだな。

 Bシードながら一回戦から登場。初戦の相手は丸野港南。いきなり三強同士の対決だ。この組み合わせが決まった時、抽選会場ではさぞや大盛り上がりになった事だろう。

 その丸野港南に勝っても、丘城東工業が待ち受けている。さらにそれに勝てば、三回戦は県内強豪校の酒敷工業、順当に行けば準々決勝で、春の大会準優勝の酒敷商業とぶつかり、準決勝では春に敗れた荒城館とも対決することとなる。

 敵ながら同情してしまう組み合わせだ。まぁ我が校も対して変わらんか。


 相馬高校は順当に勝てば、準々決勝で我が校と戦うこととなる。まぁその前に三回戦でBシードの関東学園がいるブロックの勝者と戦う事になるんだけどさ。


 その他、県内強豪校の位置を確認していく。

 それにしても県内三強と呼ばれる斎京学館、丸野港南、酒敷商業が全て反対ブロックにいるとは、滅多にないことだし、十数年ぶりに夏の代表が三強以外になるかもしれない。

 個人的には残念なトーナメントになってしまった。できれば三強全てを打ち倒して甲子園に出場したかった。


 「初戦は城東が良いなぁ。昨年の借りは返したいし」

 龍ヶ崎が声をあげていた。

 そら去年の夏、面白いように打ち込まれてたもんね、そら借りを返したいですよね。


 「いや、鶴山高専のほうがいいだろう。弱い方が気が楽だ」

 一方誉は格下と対戦したい様子。 

 まぁ一発勝負の夏の大会だ。格上を相手するよりも格下相手と試合をしたほうが気持ち的にも楽だろう。

 だが俺は、常に格上の相手と対決したい。そういうチームをねじ伏せてこそ、俺の実力を証明できるというものだ。


 「どちらにせよ、初戦の先発ピッチャーは亮輔で行く。英雄は控えスタートだ」

 「何故(なにゆえ)?」

 佐和ちゃんの指示に首を傾げる俺。

 いや、そこは夏の大会初戦なんだし、景気づけにエース先発が妥当でしょう。


 「甲子園優勝までの道のりは長い。それまでに何回お前を休ませられるか分からない。そうなると、休ませられる時に休ませておきたい」

 いや、その気持ちは分からんでもないっすよ?

 そら戦略的に考えるなら、控えピッチャー投げさせても勝てる可能性の高い試合は、控えピッチャーに任せたほうが戦略的ではありますよ?

 でもさ、俺が高校野球で投げれる試合数はもう限られてるだよ。一試合でも多く投げたいんだよ。

 春の大会は、まだ本番じゃないって事で亮輔に先発を譲ることもあったが、夏の大会は最初から最後まで先発として投げ抜きたい。


 「不満な顔をするな英雄。城東相手にお前はもったいない」

 そう言って佐和ちゃんの不敵な笑み。

 去年ボコボコにされた相手に何言ってんだこいつは?


 「だからそう不満そうな顔をするな。最終回ぐらいは調整登板って事で投げさせてやる」

 「…分かりました」

 先日、佐和ちゃんの甲子園行きたい度を知ったし、今回はこっちが折れてやろう。

 甲子園に行くためであるならば、控えスタートも甘んじて受けてやろう。


 「安心しろ英雄。甲子園で好成績を収めれば国体に出れる。夏の大会で投げれなかった分はそこで補えばいい」

 いや、それだったら夏の大会も全試合投げて、国体でも全試合投げたいんですけど?

 まぁ仕方がない。ふてくされつつ、佐和ちゃんの案に頷いた。


 ともあれ7月13日に夏の県大会が始まる。

 予定通りならば12日後の25日に決勝戦がおこなわれる。

 はたして俺は、7月25日を笑顔で終えられるのだろうか? 今から楽しみだ。

 

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