第22話「集合写真で誰が半目になるか分かる男」
「田中さん、次、半目になります」
カメラマンが止まった。
「え?」
俊介は一列目の端を指す。
「たぶん、その人」
田中が困った顔をする。
「俺?」
「はい」
「じゃあ目開けとくわ」
「それすると別の人が半目になります」
「なんだそれ」
俊介には、集合写真のシャッターが切られる瞬間、誰が半目になるか分かる。
正確には撮影の約二秒前に分かる。
一人で撮る写真では発動しない。
二人でもほぼ発動しない。
なぜか四人以上になると安定する。
その日は会社の創立記念写真だった。
社員四十人が玄関前に並んでいる。
カメラマンが声を張る。
「では撮りまーす!」
俊介の頭に浮かぶ。
――田中。
「田中さん!」
「分かってる!」
田中が目を見開く。
シャッター。
今度は隣の部長が半目になった。
「あ」
「どうした?」
「部長です」
「何が」
「いえ」
写真を確認したカメラマンが言う。
「もう一枚いきましょう」
部長は本当に半目だった。
俊介は気まずくなった。
能力で未来を変えると、半目になる人も変わる。
つまり完璧な集合写真を作れるわけではない。
ただ半目の人を移動させられるだけだった。
二週間後、妹の結婚式。
親族写真の撮影で、俊介はまた能力を発揮した。
――父。
「父さん、目開けて」
「開けとる」
「もっと」
「怖いやろ」
シャッター。
今度は叔母が半目。
もう一枚。
今度はいとこ。
「お兄ちゃん、何してるの」
花嫁姿の妹が笑う。
「半目対策」
「普通に撮ってもらえばいいじゃん」
「でも分かるんだよ」
「分かるから気になるんでしょ」
その一言で、俊介は黙った。
次の撮影。
能力が反応する。
――自分。
俊介は一瞬迷った。
「撮りまーす」
何も言わなかった。
シャッター。
後日、出来上がった写真を見る。
俊介だけ、見事に半目だった。
妹からメッセージが来た。
《お兄ちゃんだけ変な顔》
《知ってた》
《なんで直さなかったの?》
俊介は写真を拡大した。
みんな笑っている。
父も母も、妹も、その夫も。
《別にいいかなと思って》
送る。
すぐに返事。
《じゃあ能力いらないじゃん》
俊介はしばらく画面を見た。
《それは前から思ってる》




