↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬほどしょうもない特殊能力  作者: 雨宮 弦


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/24

第20話「閉まる直前の自動ドアだけ分かる男」

「止まれ」


健人が急に言った。


隣を歩いていた同僚の麻生が足を止める。


その一秒後。


目の前の自動ドアが閉まった。


麻生が健人を見る。


「……何?」


「閉まると思った」


「見たら分かるでしょ」


「いや、閉まる直前だけ分かる」


麻生が尋ねた。


「何秒前?」


「一秒くらい」


「短っ」


健人には、自動ドアが閉まり始める直前だけ、それが分かる。


すべての自動ドアではない。


自分が今から通ろうとしているものだけ。


コンビニ。


スーパー。


病院。


駅ビル。


マンションのエントランス。


閉まる直前になると、頭の中に小さな違和感が走る。


それだけだ。


「それ、役に立つ?」


麻生が聞く。


「挟まれない」


「普通の人もだいたい挟まれないよ」


その通りだった。


健人自身、三十年間で自動ドアに挟まれたことはない。


能力のおかげなのか、普通に歩いているからなのかは分からない。


ある日の昼休み。


健人と麻生はコンビニへ向かっていた。


入口の前に、小さな女の子と母親がいる。


女の子が先に走り出した。


その瞬間。


来た。


健人は反射的に手を伸ばす。


「待って」


女の子の肩を軽く止めた。


すぐに自動ドアが閉まり始める。


女の子は驚いた顔をした。


母親が慌てて駆け寄る。


「すみません」


「いえ」


センサーの反応が少し遅かったらしい。


ドアはすぐにまた開いた。


麻生が言う。


「今のは役に立ったな」


健人も少し得意になった。


「だろ」


その日の夕方。


会社を出ると、雨が降っていた。


健人はビルの自動ドアの前で立ち止まる。


来る。


一秒後、閉まる。


「よし」


タイミングを見て出ようとした。


だが、後ろから誰かが近づいてきた。


ドアがまた開く。


健人は止まる。


また閉まりそうになる。


来た。


一歩出ようとする。


今度は外から人が入ってきた。


また開く。


「何してるんですか?」


後ろにいた後輩が聞く。


「タイミング見てる」


「普通に出ればよくないですか?」


健人は黙った。


能力を意識しすぎて、逆に出られなくなっている。


三回目。


今度こそ。


来た。


健人は小走りで外へ出た。


雨に濡れた。


傘を開くのが遅れた。


後輩が続いて出てくる。


「能力、役に立ってます?」


健人は傘を差しながら答えた。


「今日は微妙」


週末。


健人は恋人の紗英とショッピングモールにいた。


店を出るたび、健人は一瞬だけ自動ドアを見る。


紗英が気づく。


「さっきから何見てるの?」


「閉まるタイミング」


「なんで?」


健人は能力のことを説明した。


紗英は少し考えてから笑った。


「健人らしい」


「何が」


「どうでもいいところだけ慎重」


「褒めてる?」


「たぶん」


次の店で買い物を済ませ、二人は出口の自動ドアへ向かった。


来た。


閉まる。


健人はいつものように少しだけ足を速めた。


紗英は急がなかった。


健人だけ先に外へ出る。


ドアが閉まる。


ガラス越しに紗英と目が合った。


紗英が笑っている。


健人も笑った。


すぐにドアがまた開く。


「置いていった」


「いや、閉まるから」


「待てばいいじゃん」


「……確かに」


健人はそこで初めて気づいた。


閉まりそうなら、別に急いで通らなくてもいい。


また開く。


それだけのことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。