↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬほどしょうもない特殊能力  作者: 雨宮 弦


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/24

第15話「自分のスマホを落とす1秒前だけ分かる女」

「あ」


美和の頭の中で、短い警報が鳴った。


一秒。


右手からスマホが滑る。


美和は左手で受け止めた。


同僚の篠原が目を丸くする。


「今のすご」


「いつもの」


「何が?」


「落とす一秒前に分かる」


篠原が尋ねた。


「スマホを?」


「自分のだけ」


篠原は少し考えた。


「便利じゃん」


「一秒だよ」


「でも画面割れない」


「たまに間に合わない」


「じゃあ微妙じゃん」


その評価が正しかった。


美和は自分のスマホを落とす一秒前だけ分かる。


一秒あれば、反射的に握り直せることもある。


しかし両手に荷物を持っているときは、「落ちる」と理解した上で落下を見届けることになる。


そして他人のスマホには一切反応しない。


金曜日の夜、美和は大学時代の友人たちと居酒屋にいた。


久しぶりに会った加奈が、スマホをテーブルの端に置く。


美和は気になった。


「そこ危ないよ」


「大丈夫」


「落ちそう」


「美和、自分のスマホしか分かんないんでしょ?」


美和は言った。


「そうだけど」


「じゃあ普通の心配じゃん」


十分後、加奈のスマホは落ちた。


「ほら!」


「能力関係ないじゃん!」


幸いケースのおかげで無傷だった。


帰り道、美和は駅のホームで電車を待った。


篠原からメッセージが来る。


《明日の映画、十三時で大丈夫?》


《大丈夫》と打ちかけたところで、警報。


一秒。


スマホが手から抜ける。


今度は受け止められなかった。


ホームの床に落ち、するりと滑った。


黄色い点字ブロックの手前で止まる。


美和の心臓が跳ねた。


拾い上げる。


画面に細いひびが入っていた。


「……分かってたのに」


後ろにいた年配の女性が心配そうに見る。


「大丈夫?」


「はい」


大丈夫ではない。


翌日、修理店で画面交換の見積もりを見た美和は黙った。


隣で篠原が言う。


「一秒前に分かるならさ」


「うん」


「ストラップ付けたら?」


「……」


美和は店頭のストラップを見る。


翌週から、首からスマホを下げるようになった。


能力はほとんど発動しなくなった。


「特殊能力、封印した感じ?」


篠原に聞かれ、美和はストラップを持ち上げる。


「文明に負けた」


その日の夕方。


警報が鳴った。


一秒。


手からスマホが滑る。


ストラップが首元で止めた。


美和は無言でスマホを見た。


篠原が笑う。


「能力いらないね」


「言わないで」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。