蔵の中の少女
「やめて、怖いよ……――」
その時サクラは土蔵の角に縮こまって、耳を塞いでいた。後から後から鳴り響く雷鳴は、サクラにとめどない恐怖を与える。
カオルが飛び去ってしまった後、しばらくしてサクラは蔵へと戻った。乾く間もなく降り続いた雨によって、今もサクラのセーラー服は水浸しだ。ぽたりぽたりと水がしたたり、サクラの周りには水たまりができている。
真っ暗な土蔵の中で、稲光だけが明るい。窓からその光が見えるたびに、サクラの心は恐怖でいっぱいになった。轟く雷の音は地響きのようで、蔵全体が震えている気がしてしまう。バリバリと空を割る光が、いつ自分を襲いにくるやも知れなかった。
「カオル、どこにいるの……」
いつもなら、カオルがそばにいてくれた。カオルは雷を怖がることはなく、むしろ楽しんでいたくらいだった。けれど雷を怖がるサクラを見ると、手を握りながら一緒に雷をやり過ごしてくれた。
一人でいる蔵はとても広く感じ、雷鳴は常にもまして大きな音を立てている。それだけではない、風雨も酷くなっているようだ。
シンがくれた助言を思い出そうとするが、後から後から轟く雷鳴に思考がまとまらない。誰もそばにいないということが、恐怖に拍車をかける。
「どこ行っちゃったの、カオル。私を一人残して…………怖い、怖いよ……――」
黒髪から滴る雨粒とともに、サクラの頬から涙が流れた。耳を塞ぐ両の手を放すこともできず、涙を拭ってくれる人もいない。
「早く止んで、お願いだから……」
サクラはガタガタと震えながら懇願するが、雷雨は全く聞こえないようで、容赦なく地へと降りそそいだ。
「誰か――カオルも清光も、どこにいるの? ……誰か。シン、助けて……」
か細いサクラの声は、外の嵐にかき消されていく。




