第十六話 夏の嵐1
更新がかなり遅れてしまいすみませんm(_ _)m
“嵐”と言ってもシリアスではありません。
今回は複数視点です。
神様、仏様、ついでのついでにヒロキ様。
あたしは、今、図鑑や画面上でした見たことが無い部屋におります。
いえ!訂正します!監禁されてます!!
<申し訳ございません>
<……はぁ………>
<父をクビにすると脅されて……本当に俺の本意じゃないんです!>
ふっかふかの絨毯に両手と両膝をついてペコペコ頭を下げるのは、北欧系の成人男性…だって初めて会ったから名前も何も知らないもん…だ。
さっきからそればっかりを繰り返している。
謝罪はもういいよ。
貴方がご自分の意思であたしを拉致ったんじゃないってのもわかったからさ!
<あの、半端なく、マジで苦しいんですが……>
<命令ですので…>
<いつまで“こんな”なりで“ここ”にいればいいんですか?>
<ご命令が下るまでです>
今、あたしは、“いったい誰がこんなモノ作ったんだぁ~?”って言うシャンデリアがぶら下がっていて、“いったい何処で仕入れたの?”って言う、ロココ調って言っても良いのか“無駄に装飾があって実用的じゃない家具”が置いてあって、“いったい誰の趣味”って言う、ひっじょお~に座りづらいソファー(?)に踏ん反り返っている。
だって仕方ないじゃん!頭が重いんだもん!
某少女漫画で有名な、高校生でありながら“夫人”という呼び名がつくキャラ並みの縦ロールのあたしの頭のてっぺんには、何と、船が浮かんでいるのだ!!
腰はコルセットで締め付けられ、真夏だというのに“キャミワンピの上に”レースが何枚も何枚も重ねられた下着を着せられ、その上“長袖”の輪っかのドレスを履かされているのだ。
ご丁寧にも足には室内履きには大変相応しくないキラキおラな靴を履いている。
勿論、脚だって“素”じゃない。
総レースのニーハイ靴下……蒸れるっつーの!!……を履かされているのだ。
誰よ?こんな悪趣味なコスプレを命令したのは!
まぁ、十二単よりマシだけどさ…
せめてもの救いは“ここ”が冷房だけ完備されているルイ王朝風の部屋ってところだろう。
じゃなきゃ、熱中症にかかってるっつーの!!
一体どうしてこうなった?!
確か、あたしは日本から届いたとかいう国際郵便物を受け取った筈…だった。
宅配業者を装った犯罪は日本でも多発していたのに……なんでこんな古典的なヤツに引っかかるかなっ!あたしっ!!
ま、今のところ“このヒト”はあたしをどうこうしようって気は無いみたい。
悪趣味コスと言い、この部屋と言い、どうやら敵の目的はあたしで間違い無いだろう。
でもこの目の前の男性はあたしに謝罪ばかり繰り返している
もしかして、ヒロキ様関係の“恋人”でも、ご学友様関係の“お嬢様方”でも無いって事?
あたし個人が目的?それなら誘拐しかないじゃん!
<あの……>
<はっ…はいっ!>
<“身代金”は日本円しか出せませんよ?>
<はい?>
<今、まだ円が高いですよね?ユーロに換金すると手数料を含めば大損しますよ?>
<??????>
<そっか!カードって言う手があったか!!>
<あの……>
<あ、でも、ひいお祖父ちゃんソレもってたっけ?>
<……すみませんが…>
<そうそう。もし身代金を要求されるんでしたら、今、日本時間は“丑三つ時”なので4~5時間後にして下さいね?
じゃないと、ひいお祖父ちゃん、待たずにそのまま国際電話をかけちゃいますから>
<うし???>
真夜中の脅迫電話…ならぬ…身代金要求電話って迷惑だもんね。
でも、ドジっちゃったなぁ。
これから結花も交えてドロテア達との楽しい楽しい夏休み~♪だったのに…。
ひいお祖父ちゃんに手料理をご馳走するって約束したのに!
和食が大好きなひいお祖父ちゃんや、日本食に興味があるドロテアや、あたしの味付けが好みって言ってる結花の為に腕をふるうはずだったのに……。
あ~あ!見事におじゃん……って!!
「あーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
<はっ…はいい?!>
「火つけっぱだったぁ~っ!!」
<あっ…あのっ……>
「肉じゃがぁ~~~っ!揚げと豆腐とワカメの味噌汁!サバの味噌煮!!炊き込みご飯は……ジャーだから大丈夫か」
<さっきから何を……>
「ちょっと貴方!今すぐウチに行って!」
<は?>
「もうっ!だからっ!!今すぐウチの台所に行ってコンロの火を消してきてって言ってるの!」
<あの…何を仰って「早く行きなさいっ!!」…って!はい!かしこまりました!>
彼、あたしの迫力に転げるようにして出て行ったけど、大丈夫かな?
ウチの場所…わかってるよね?
*******
<で、コイツだれ?>
<多分、“馬鹿”の差し金だと思う>
<馬鹿……ああ。“大蟻地獄”ね>
<それあまりにもぴったり過ぎて笑えない……>
“ポコちゃん”様が言っていたのはドロテアの事だった。
彼女は、あの、“怪しい教皇様”の指示で動いているらしいが、性格とか好みとか相通じるモノがあった為、即、メアドを交換した。
あたし達がここに来て1週間が経った。
“あこがれの聖地”を観光し、すっかり外国生活にも慣れた私、ドロテアと二人で買い物に繰り出したのだ。
名付けて“紫苑をコーディネイトしようツアー”。
本人を連れて行けば一番なんだけど、“ポコちゃん”様からは必要最低限の外出以外は禁止令が出されているのだ。
ま、しいちゃん自身インドア派だしね?
コスメや服、アクセや靴を買いまくって…円高万歳!……嬉々として帰還した私達は家の前をうろつく怪しさ満点の男を見つけた。
その背後にこっそり忍び寄り、膝かっくんの後に手刀で気絶させ、両手首と両足首をロープでしばり、“ズボンを脱がして”で床に転がしてあるのだ。
<とりあえず情報収集ね…>
私はそう言うと、バッグから『タ〇ガーバーム』を取り出し、少し屈んで男の鼻先にあて、
キャップを捻ってその臭いで覚醒させた。
<っ……!!なっ…何だ?>
<お・は・よ・う♪キミに聞きたいことがあるんだけど?ウチの前で何してたの?>
<………………>
<ふぅん……だんまりか。ね?ドロテア、今まで“大蟻地獄”が使ってきた手口ってどんなのだった?>
<え?何急に?そうねぇ……紫苑が“こっち”に来るタイミングを見計らって届けられる“ガーデンパーティの招待状”とか、突然開催される近所のスーパーのセールでしょ?
“この期間だけオープンする”オーガニック素材を使ったファミリーレストランもどきに……えっと後は……。
ああ。“日本語教師求む”ってのもあったわ!
でも、それらを“私達”が全部シャットアウトして来たんだけどね…>
何それ?ばっかじゃない?手口が見え見えで呆れるわ。
本当に自分は土の中に引っ込んでいるのね……。
<で、とうとうしびれを切らしたか…>
<おそらくそうね>
だったら、一番情報を持っている人間を“使う”っきゃないでしょ?
私は転がっている男の顔を覗き込んだ。
タ〇ガーバームがよほどきつかったのか、いまだに眉間に皺を寄せている。
<ふうん……ね?黙示権を使ってるって事はご主人様に指示されているから言えないのよね?貴方のその忠義心、いつまで持つかしら?今から試して良い?>
そう言うと、ポケットから輪ゴムを取り出し指にひっかけると、ピストルを撃つ真似をして輪ゴムを標的に向かって飛ばした。
ピシッ
<ひぃっ…!>
<あら?ごめんなさいね~。私コントロールが悪いからご自慢の顔に当たるところだったわね。でも、お楽しみはこ・れ・か・ら♪」
もう一つゴムを取り出すと同じように指にひっかけ…
ピシッ
<~~~~~~~~~っ!!>
今度は“標的”にあたったらしい。
苦痛に顔を歪ませ、えびぞり状態のまま転げまわるイケメンって見応えあるよね……
幼少期から護身術を習わされていた私は、いざと言う時、男性の“どこ”を攻めればいいのかを熟知している。
ま、趣味でも結構役に立っているんだけどね?
気絶させた時、ちょびっとだけ媚薬を飲ませた男は“ナニ”を立たせた状態で転がっている。
………もちろんその“ボクちゃん”には私が今手に持っているモノと同じモノがしっかりと巻かれているんだけどね……
青い瞳から涙を流し、引き締まった口元からは涎。うん。こんなシチュあったよね?
満足そうな私に、ドロテアが話しかけてきた。
<面白そう!私にもやらせて!>
<いいよ。それじゃこのゴムを左手の人差し指にひっかけて?そうそう。それで右手でゴムを思いっきり引っ張って……離す!!>
ビシィ!!
<うああああああっ!!>
ドロテアも結構好きモノみたいね。見事“ボクちゃん”に命中させたわ。
<さて、どうする?忠義を貫いてこのまま黙示する?それならまだ方法があるんだけど?
そうね……たとえばコンセントを使うとか……。
ね?知ってる?拷問方法で男の人の大事な部分に電流を流すってのが<いっ…言う!言うから!もう勘弁してくれええええええええっ!!>そう。聞き分けの良い子は大好きよ?さ、洗いざらい話してもらいましょうか?
貴方はしいちゃんが今どこにいるのか知ってる?>
<っ……ブっ…ブルーノ様に言われて彼の屋敷にっ!おっ…親父をクビにするって脅されたんだっ!!>
<ふんふん。なるほど。で、さっきうろついていたのは?>
<かっ…彼女に頼まれて>
<彼女…しいちゃんね。何を頼まれたの?>
<日本語だったから、よく……確かニクとかミゾ……サーパがどうのと>
ニクは肉よね?ミゾはおそらく味噌で、サーパ?調味料の事?
これじゃしいちゃんのSOSがわからないっ!!
……落ち着け私!よく考えるのよ!
しいちゃんは今日はお留守番。そして、彼女の性格なら留守番している間何をする?
肉…味噌………料理!それも日本食だわ!
肉は……肉じゃが?それなら味噌は味噌汁とか味噌煮とか?サーパ…サパー…サパ……サバ…鯖!!
<ドロテア!火よ!>
<え?何?コイツの言ってた事がわかったの?ナギサ?>
<ええ!コンロの火を止めるようにしいちゃんはコイツに頼んだのよ!!急がないと私達のお昼がっ!>
<大変!!>
私達は大急ぎでリビングを出ようとしたのが……
<火はとっくに止めたぞ?それより何の騒ぎかね?>
寝癖をつけてあくびをしながらリビングに入ってきたのは、とっても素敵な北欧紳士だったのだった。
紫苑は冷静ですが、間違った方向に行ってます。
片や、結花は趣味等で得た知識を実践中。調教とか調教とか調教とか……(笑)




