第十四話 嵐の前の静けさ1
更新が遅れてすみませんでした。
少し早いですが、いよいよ夏休み突入します。
「え?紫苑先輩、夏休みは海外で過ごされるんすか?」
「うん。毎年、母方の曽祖父に招待されてるの」
期末試験中により、部活動が一定期間休みになるこの時期、1~3年までは下校時間が一緒になる。
あたしは、たまたま昇降口で会った1年生と一緒に、駅まで歩いている。
男子生徒だが、あたしよりちょっと低いこの部員は器用なところがあり、パーカッションを担当している。
「すげっ…何か先輩が俺らより遠い存在になりそうっす」
「あははは……そんな事無いよ?君達だって休みの日に親戚の家に遊びに行くじゃん?
それと同じだよ」
「親戚の家…っすか?」
「そ。あたしはたまたま親戚が海外にいるってだけ!あ、部員の皆にお土産買ってくるね?」
「楽しみにしてるっす!!!」
『お土産』という言葉に反応したのか、やたらとはしゃぐ後輩くん。
その様子がすっごく可愛くて、頭を撫でたくなったが彼のプライドの為、手を引っ込める。
……でもさ、“幻のお耳と尻尾”があたしに『撫でて撫でて♪』と訴えかけてくるんだよっ!
その後は吹奏楽の事とか今、巷で話題になっている事など、他愛もない話をしながら歩いた。
身長差のせいか、あたしの目の下には天使の輪っかが見え、時折その横に幻のお耳がピンと立つ。そのたびに疼く手を何とかしつつ彼の振ってくる話題にも適当に相槌を打つ。
……男の人が小動物的女の子を見ると抱く感情ってこんな感じ?
自分の身長故にわかる思いに複雑になりつつ、漸く駅についたので、一緒に帰ってくれた礼を言うと「部長からの厳命っす!」と敬礼付きで返された。
……“後輩ちゃん”ったら、何を命令したんだろう?あたしが一人で寂しい思いをしないように…かな?まさかね?
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「しいちゃん!こっちこっち!」
「結花!」
ひいじいちゃん家に結花を招待したいと両親に言ったら、何故か「ヒロくんから聞いてるわよ」とかあちゃんに言われた。そして…
「これを石原社長から直々に渡されたよ。『娘の事をお願いします』というメッセージと共にね…」
苦笑しながらとうちゃんはそう言うとあたしに封筒を渡してきた。
それと受け取り、中を確認すると……
「これって……SAS(スカンジナビア航空)のビジネスクラスじゃん!」
「俺も断ったんだが『娘に初めて“親友”が出来たから』って仰られてね?
しかも本当は自家用ジェットを用意するつもりだったが、御嬢さんに頑なに拒否されたって仰るんだよ。
付添の専務……蓮氏にも『せめてものお礼なので』って頭を下げられてさ。
どうやら、結花さんのご家族全員で紫苑を歓迎しているみたいなんだ。
特に奥様に至っては『娘に初めて“お泊り”が出来る友達が出来た!』って吹聴しているって話だよ?」
結花……そんなに友達がいなかったの?そりゃあ貴方の特殊な趣味に付き合うにはちょっと知識と忍耐が必要だけどさ……
「紫苑は結花さんが“あの”石原社長の御嬢さんだと知ったのはいつかな?」
「え?突然何?……って、えっと……確か2年の時、違うクラスだったけど結花が学校を休んだ時があって、担任の先生に頼まれてプリント届けた時…かな?」
そうそう。確か手作りの柚子ゼリーを一緒に持っていったんだよね。
出てきたお手伝いさんらしき人に渡したらすっごく喜ばれたような……。
「あはははは……紫苑らしいね」
「へ?何で笑うの?」
「いや。仲良きことは美しき哉……結花さんを大事にするんだよ?」
何で武者小路実篤さんがそこで出てくるの?
そんな疑問符だらけの状態で2枚のチケットを受け取ったあたしは来るべく日の為に早めに就寝し、目覚めスッキリ荷物バッチリの状態で成田に来たのだ。
結花はやけに大きいサイズのスーツケースを置いて、小さな手をぶんぶん振ってアピールしている。
あたしは彼女よりやや小ぶりなスーツケースを転がしながら走り寄った。
「結花、コレ」
「あ~~っ!やっぱり“野郎ども”が届けに行っちゃったのか……ごめんね」
「ううん。でも、いいの?ビジネスクラスなんて…」
「いいのいいの!それよりさっさとチェックイン澄ましちゃお?」
「うん」
彼女に促されてあたしもスーツケースを転がしながらチェックインカウンターへと向かった。
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「思ったよりすんなりいったね?」
「夏休み初日だからあまり混んでいないのかも」
今あたし達はフライト時間までの暇をつぶす為ターミナル内をあちこち探索している。
薄いグレーのワンピースを着て白のカーデガンを羽織っている結花は、その下にショート丈のパンツを履き、足にはミュールを履いている。
ワンピースの丈はちょうどパンツが隠れるか隠れないかくらいで、裾にヒラヒラがついていて小柄な彼女にとっても良く似合っている。
対してあたしは……と言うと……
「ね、それって“ヒロキ様コーデ”?」
「やっぱわかる?6年ぶりにクローゼットから出したよ」
そう。あの日……初めてご学友様にお会いした日……の服装である。
“誰か”が見たら一発でバレるこの恰好。でも、もうあれから6年も経ってるんだし、時効……だよね?
これから行くひいおじいちゃんの家の事や、部員達や家族……勿論ヒロキ様も含む…に買っていくお土産の事を話していたら、突然誰かに腕を捕まれた。
がしっ
「っきゃあっ!」
「ちょっとあんた私の親友に何す……って、なぁんだ」
あたしの背後にいる人物に抗議てくれようとした結花。しかし、その人物の顔を確認したとたんに彼女の険しい表情が和らいだ。
「結花…?」
「紳士の振る舞いとしては少々乱暴過ぎませんか?」
「え?結花、知り合いなの?」
「もち。ってか、“しいちゃんの方”が知ってるよ?それじゃ、お邪魔虫はしばしの間退散しますので~~“つかの間の逢瀬”をご堪能下さいませ~」
そう言ってひらひらと手を振って去って行った親友。
ま、時間がくれば搭乗ゲート近くにいるから今離れても問題は無いと思うんだけどさ……
「いつまでそっち向いてる気?」
ぐいっ
「ひゃっ!…って!あっ!ごっ…ごごごご…」
「“ご学友様”は無しね?」
捕まれた腕をそのまま引っ張られ、無理やり振り向かされるとそこにはキラキラスマイルのご学友……もとい!飯崎先生が立っておられたのだった。
腹黒颯馬の事ですから、ありとあらゆる方法を使って紫苑の渡欧日を調べてます(相棒は絶対口を割らないので……笑)
あと数話で高校編が終わりです。




