第十三話 世の中そんなに甘くない2(拓海side)
今回ちょこっとBL表現が入りますが絡みや“アノ”シーンはありません(ここは“なろう”ですからね…)
「で、どうだった?」
帰ってきた紫苑から事の詳細を聞いてはいたが、ソウからも聞きたかった為、俺はアイツが家に帰ってきた頃合いを見計らって電話を掛けた。
『玉砕。あっさり振られたよ』
やはり、ヤツから返ってきたのは俺の想定内の言葉。
俺は緩みそうな口元をきゅっと引き締めつつ相槌を打つ。
「そっか」
『ね、彼女、もうヒロの家に遊びに来ないのかな?いや!いっその事夏休みに彼女に会いに行くよ!』
「へ?」
今、コイツ何て言った?俺の聞き間違いでなければ“自分から”ラウラに会いに行くって言ってなかったか?
セックスしたくなった時に、自分で行かずに電話で女を現在地から最寄のラブホに呼び出すコイツが?
「“お前が”か…?」
「だってこんな気持ち初めてなんだよ!俺、ラウラを諦めたくないんだ!こんな…こんな感情生まれて初めてだよ……」
そりゃそうだ。何しろ紫苑は“この俺”が赤ん坊の頃から世話をして“この俺”が頭のてっぺんからつま先までコーディネイトして、ひいじーさん仕込みの淑女教育を受けてるんだからな?
そんじょそこらの下らなねぇ馬鹿女共と一緒にすんじゃねえよ。
「一目惚れってやつか?」
『悪い?だって、今まで何もしなくても女の子達が勝手に寄って来たんだもん』
コイツも俺と同じ幼少期を送ってきている。だが、俺と大きく違う点は俺は十年前に初恋と失恋を経験してるって事だ。
「あいつは駄目だ。まだ“その時期”じゃない」
『何で?俺がまだ学生だから?』
「それもある。どうしても彼女が欲しいなら“自力”で探し出せ」
『……どういう事?』
「お前の“父親”の力を借りればすぐ見つけ出せるが、それはこの俺が認めない。どんな手を使っても妨害する」
そう簡単にはやらねぇよ。喩えソウでも俺が紫苑を任せられると判断出来ねえ限りは。
それに、もうすぐ日本から“本当に”脱出する予定だしな?
『了解。何年経っても自力で探してみせるよ。その代わり、“彼女”を見つけ出せたら俺が貰うよ?』
「やってみろ。俺は一切手助けしない」
『了解。それじゃ』
自力で探し出す……か。ま、紫苑が日本に帰国した時は俺もソウも大学生だし、初対面から外国人と決めつけているヤツが、“彼女”が俺の妹って真実にそう簡単に近づける筈はない。
俺は携帯を切ると別の番号にかけ始めた。
*********
「へぇ~~。ロンドン支店長の娘がねぇ…」
「ああ。何でも社の創立記念パーティで初めて御曹司を見て一目惚れしたって話だ。
その場で告白したが冗談としか受け取って貰えなかったらしい。
だが、本人は“電波女”だから御曹司が照れていると勘違いしているけどな…」
某有名ホテルの、中でも最高級と言われる部屋で“事”をした俺と“主任”は寝心地が最高なベッドの上でまどろんでいる。
ま、“主任”がどう思っていようが俺にとっては単なる“情報収集”にしか過ぎないがな?
「くすくす……モテる男も大変だね」
「“お前”がそれを言うのか?…まあいい。まったくこっちは通常の仕事で手一杯なのに、御曹司を監視しろってさ」
………ソウ。こんな状態のお前に“俺の紫苑”を託せるわけねーだろ?
だが、これだけじゃ情報が足りない。俺は腹の中で『うぇっ』と思いつつも“主任”好みの男を演じる。
「ふうん………そんなにモテる男ならお嬢様の他にも惚れちゃう女子が続出じゃない?」
「……俺らが“ソレ”をけちらしてきたんだよ。
ま、一般庶民にとっては所詮“高嶺の花”だしな?傷は浅い方に越したことはないだろ?」
へぇ~。“そう言うやり方”をとったんだ。この男もそうだけど命令した“お嬢”って最低女だな。
ま、聞くからには頭悪そうだし?この男さえこっちで押さえておけば“アレ”に火の粉が降りかかる事もないだろう。
「女の子達を傷つけるなんて酷いと思わない?」
「これも仕事なんだよ」
「あっそ。それじゃ“仕事”で“御曹司の親友である俺”に声かけたの?」
俺は柄にもなく拗ねた振りをしてみる。
ちょっとくらい“ピロートーク”してやらねぇと情報くれなくなるからな……
すると、単純なヤツは……
「まさか!タクは俺にとっては“オアシス”だよ」
「くすくす……嬉しいこと言ってくれるね。でも、俺の親友の方がすっげえ綺麗だし、細いし、俺よりちょっとだけ背も低くて“抱きやすい”と思うけど?」
「こら。俺はタクが良いんだ!タクが俺の愛を疑うならこれからソレを証明するしかないな?」
「くすくす……明日も学校だからお手柔らかに…ね?」
そう言って自分から両腕をヤツの首に絡ませ、唇を寄せる。
この男はかなりの野心家で、出世欲の為にソウに懸想する女の父親に従順な振りをしている。
故に、コイツに“だけ”は、紫苑の事が知られないようにしないといけない。
いくら紫苑がソウに全く気がなくても、女ってやつはてめえの好きな男にでなく、“ソイツが好きな女”に手を出してくる生き物だ。
ましてや電波女と来たら……ソウがその女に騙されてる……そう思い込むに違いねえ。
アイツに懸想する……本当は本人が懸想してるんだが……ヤツは父親の力を使って殲滅するべしってところだろう。
“主任”が俺の事を調べているのと同じように俺も“主任”の履歴をすべて把握している。
俺を抱くこの男がどうやって26という若さで主任にまで登りつめたか……
紫苑の存在をこいつに知られたら“何に”利用されるか……
その為だったらいくらでも“男”に抱かれてやるよ。所詮、俺は“女”を愛せないしな?
“主任”は俺の本名を漢字では知っていても“読み方”までは調べていない。
だからこそ俺の事を“タクミ”からとって“タク”と呼ぶ。
俺の妹という存在は知っていても、ソウが一目惚れした外国人女性が彼女という真実にたどり着くのはコイツの穴だらけの調査方法からしてほぼ不可能だ。
確かにひいじーさんの親戚で“ラウラ”という名前の女性は存在するが…現在5人のガキの母親だし。
それに、何と言っても……
幸いな事に変な趣味持ってねえから“アレ”も気持ち良いしな?
俺は“俺のやり方”で紫苑を守り続けている。いつか紫苑に好きな男が出来てアイツを守れる存在が出来たとしても、俺はやめるつもりはねえ。
何故なら、報われない思いも努力も、俺にとっては赤ん坊のお前を世話した時と同じでちっとも苦じゃねえからだ!
「ったく!折角“アレ”を装備させたっつーのに、今度はソウにたかろうとする“蝶”を食う“カマキリ”に寄生する“ハリガネ虫”からも守んなきゃなんねーのか…」
俺は物心ついた頃から紫苑の“害虫”退治や“虫よけ”をして来た。そしてソレらが寄り付かないように本人自身に“超強力虫よけ”を装備させた。
その努力も合わせて決して面倒とは思わない。だが……
――――――なぁ紫苑。もし二人生まれ変わったら今度は身内じゃなくて他人になろうな?
ヒロキ様sideのお話でした。
二作続けてちょっとシリアス濃いめでしたが、次回からはまたちょいギャグ風味の主人公sideの話に戻ります。




