10 かく語りき
魔女裁判は犯人の自白で幕を閉じた。
犯人が警察に連行され、庭園に残された生徒たちはどよめいていた。
「静粛に!」
その場を制したのは、やはり生徒会長フリーデリンテだった。
彼女は前に進み出て、生徒たちに語りかける。
「ガースン神父は古より続く作法にしたがった魔女裁判を逃げ出した。
これはつまり、彼の信じていた教えが間違っていたと認めさせたことに他ならない。」
フリーデリンテは大きく手を広げて、力強く言う。
「生徒諸君、誇りたまえ。
我々は勝利したのだ。
忌まわしき罪人を追い出し、我らが学舎に安息を取り戻した。
この勝利は、我々生徒の団結と長きに渡る努力により勝ち得たものなのだ。」
庭園に生徒達の歓声が響き渡る。
フリーデリンテは声高らかに続ける。
「我々は自由を手に入れた。
今こそ、怨恨に満ちた古き価値観から脱却するときだ。
我々を律するのは我々自身、我々を導くのはこの心のみ。」
雲間から差し込む日の光がフリーデリンテを照らす。彼女の話に耳を傾ける生徒達は、憧憬の眼差しを向けていた。
そして、フリーデリンテは述べたのだ。
「私はここに宣言しよう。
この学園において、神は死んだのだと。」
「カメリア様、馬車のご用意ができました。」
屋敷へ戻る支度が出来たことを伝えに来た私に、寮の部屋で待っていたカメリアは「ありがとう。」と微笑む。
「でも、少しだけ出発を待ってくださるかしら。
お話ししたい方がいますの。」
「もちろん構いません。
その方をお呼びいたしましょうか。」
私の提案を、カメリアは「それには及びませんわ。」と断った。
「ちょうど来られたようですから。」
ノックの音がした。
私は扉を開けた。
「待たせてすまないね、カメリア嬢。」
カメリアの部屋を訪れたのは、フリーデリンテだった。
「貴方が行ってしまう前に挨拶がしたかったのだよ。」
カメリアは「私も貴方にお話ししたいことがありましたの。」とフリーデリンテを招き入れた。
カメリアに勧められ、フリーデリンテは窓際に置かれたテーブルセットの席についた。
窓の向こう、校舎ごしに見える空は朱色に染まり始めていた。
西陽を受けて向かい合う彼女たちは、互いに口元に笑みを浮かべながらもどこか緊張感があった。
「さて、私に話したいこととは何かな。」
首を傾げるフリーデリンテに、カメリアは「お分かりでしょうに。」と微笑む。
「神を殺したのは、貴方でしたのね。」




