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11 神殺しの魔女

「神を殺したのは、貴方でしたのね。」


フリーデリンテは「何のことかな。」と肩をすくめた。


「聖母像を破壊したのは、貴方達でしょう。

貴方達は、ガースン神父を追放する機会を伺っていた。

そんな折に起きたこの事件を貴方は利用した。」  


「私はマヤの死を心から悼んでいる。

だからこそ友の死を無駄にしたくなかったんだよ。」


悲しげに目を伏せたフリーデリンテに、カメリアは「わかっておりましてよ。」と声をかけた。


「貴方がマヤの死に関与していないことは存じていますわ。

しかし、私をこの学園に呼んだ時から貴方の筋書きは始まっていた。

礼拝堂にロザリオの珠を残しておいたのはフリーデリンテ様でしょう。」


「あんなことをせずともカメリア嬢なら真相に辿り着いたと思うと、余計なお世話だったかな。」


フリーデリンテの返答は肯定の意を示していた。


フリーデリンテはマヤの遺体を発見した時、マヤが握りしめたロザリオを見て犯人に気づいたに違いない。

そして、グレーテを介してカメリアを学園に呼んだ。

魔女裁判で罪を明らかにし、ガースン神父を追放するために。


「フリーデリンテ様は何故、ガースン神父を追い出そうとしていたのですか。」


思わず口を挟んだ私に、フリーデリンテは「ヒルダさんにも教えてあげようではないか。」と口角を上げる。


「古い価値観から脱却するためさ。

ガースン神父が信じていた、弱者による怨恨に満ちた価値観はもはや我々には必要ないのだよ。」


フリーデリンテは少女でありながら、高い知性と強い意志を持っていた。

彼女たちの箱庭を根底から揺るがすほどの、強い意志を。  


カメリアはフリーデリンテに問いかける。


「これは憶測ですが、ニコラウス先生の婚約者はフリーデリンテ様ではありませんか。

ゆえに彼も貴方の手札のうち。

貴方の見事な演説は、貴方こそが学園の頂点だと示していましたわ。」


「ご名等だ。」


フリーデリンテは窓の向こうに見える校舎に視線を向ける。


「この学園は、私たちにとって檻なんだ。

出られないのなら、全てを手に入れるまでだ。」


カメリアの方へ向き直ったフリーデリンテは、「しかし、私は権力で持って皆を支配するようなことはしない。」と宣言する。


「彼等は同じ志を持つ同士だ。」


カメリアは「それこそがフリーデリンテ様の武器ですものね。」と頷いた。


私は真夜中にグレーテに会ったときのことを思い出した。

グレーテは友人と禁書の貸し借りをしていた。

生徒たちの間には、新たな学問に基づく価値観が浸透していたのだ。


「カメリア嬢、私も貴方に聞きたいことがある。」


カメリアは「なんでもどうぞ。」とフリーデリンテを促した。


「私の意図をわかっていながら謎を解いたのは何故だい。

カメリア嬢の推理によって我々の勝利が完成するとわかっていただろう。」


「探偵の役目は、謎を解くことですわ。

どんな事件であっても、私は役目を放棄したりは致しません。」


カメリアは迷いなく答えた。

フリーデリンテは「何だ、カメリア嬢が賛同してくれたというのは自惚れだったな。」と残念そうに言った。


「フリーデリンテ様は今後どうするおつもりなのですか。

学園を手に入れただけで貴方が満足するとは私には思えなくてよ。」


フリーデリンテの瞳がきらりと輝いた。


「我々はまだ若く、希望に満ち溢れている。

世界を変えることさえできると、本気で信じているのさ。」






フリーデリンテは学園を去るカメリアを門まで見送りに来た。

カメリアが馬車に乗り込む時、フリーデリンテは「カメリア嬢。」と声をかけた。


「貴方に手紙を書いてもいいだろうか。

貴方の友人として。」


カメリアは振り返る。


「いつでもお待ちしておりますわ。」


魔女は嬉しそうに笑った。

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