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禁忌の第七王子と精霊の少女─その恋は王国の理を覆す─  作者: 七天宮 凛


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第6話 絶望の中で灯る、予言の光 

 リアンは退かなかった。

 迫る気配の中でも、その足は動かない。

 氷の気配が、静かに満ちていく。


 その瞬間。

 影のひとつが、動いた。

 視界の端。

 捉えたと思ったときには、もう遅い。

 一直線に、リアンへ。


 視界が追いつかない。

 狙いは明確だった。

 クラウスが弾かれた、その空白を突く。


 ――間に合わない。


 影が、間合いに入る。

 そのときだった。

 リリスが、踏み込んでいた。

 迷いはない。

 ティアラの前へ割り込む。

 白銀の尾が、鋭く振るわれる。

 振り下ろされた刃を、尾で受け止める。

 だが、押し返せない。

 刃がそのまま押し込まれる。


 次の瞬間、衝撃が弾けた。

 体ごと弾かれるように――

 そのまま、小さな体が弾き飛ばされる。

 壁へ叩きつけられ、鈍い音が響いた。


「……っ」


 息が詰まる。

 声にはならない。

 リリスは床へ崩れ落ちた。

 すぐには動けない。

 それでも、瞳は閉じない。

 探すように、視線が揺れる。

 ただ一人。

 リアンの背を。


 見つけた瞬間。

 わずかに息が震えた。

 痛みではない。

 別の、何か。

 言葉にはならないまま。

 なお――離れない。


 リアンの奥で、何かが軋んだ。


 ――リリスが。


 倒れた。

 胸の奥に、熱が走る。

 静かに保っていた均衡が、わずかに崩れる。


 だが――止まれない。

 ここで止まれば、終わる。


 リアンは視線を前へ戻す。

 氷の気配が、鋭さを増した。


 影は止まらない。

 間合いが詰まる。

 逃げ場が削られていく。


 寝台の上で、ティアラの指が震えた。

 布を握る力が、強くなる。

 ティアラの瞳が、揺れる。

 その瞳は、すべてを理解している色を帯びていた。


 自分が狙われていることも、

 そのせいで傷が増えていることも――

 だがなお――体が動かない。

 ティアラはリアンの背から視線を逸らせなかった。


 リアンは、一歩も退かない。

 その背で、ティアラを守るように。

 前だけを見据えていた。


 氷鎖が、床を走る。

 リアンの足元から、一直線に伸びた。

 砕けた水が軌道を変え、別の角度から絡みつく。

 夜織の足を絡め取り、踏み込みを止める。

 その隙を縫うように、クラウスが消えた。


「……そこだ」


 次の瞬間、夜織の懐に潜り込んでいた。

 足を払うように一撃を入れ、体勢を崩す。

 影の動きが、わずかに止まる。

 その背後へ――ユラが踏み込む。


「……終わりです」


 一閃。

 肩口を浅く斬り裂き、動きを削る。

 致命には届かない。

 それでも、確実に体勢は崩れる。


 その隙を逃さず、

 少し離れた位置から、アルバートが踏み込む。


「逃げられると思うな」


 踏み込みと同時に、刃を振り下ろす。

 刃が床を叩き、衝撃が走った。

 その揺れが足元を崩し、影の踏み込みを鈍らせる。


 その隙を、リアンが突く。

 足元の水が凍り、掌へと収束する。

 氷の短剣が、手元で形を成した。


「――凍れ」

 

 一閃。

 振り上げられた夜織の腕へ、短剣を叩き込む。

 触れた瞬間、腕を起点に氷が走った。


 押し込んでいる。

 優勢――だが、決定打に届かない。

 手応えが足りない。

 仕留めきれない。


 次の瞬間。

 空気が変わった。


 夜織の動きが、一段速くなる。


 ひとつの影が、氷鎖を踏み砕いた。

 クラウスの背後へ回り込む。


 ――速い。


 次の瞬間。

 背後に回り込んだ影が、間合いを詰める。

 振り抜かれた一撃が、クラウスの体を捉えた。

 衝撃。

 クラウスの身体が、壁際へ弾き飛ばされる。

 間髪入れず、別の影が前へ出る。


 ユラが動く。

 クラウスと影の間へ、横から割り込む。

 だが――わずかに遅い。

 影が重ねるように、一撃を打ち込む。

 クラウスは壁へと押し込まれた。


 ユラの刃が走る。

 影の太腿を斬る。

 だが、止まらない。


 アルバートも踏み込む。

 だが間合いに入る前に、影が一歩退く。

 距離が開き、刃は届かない。


 連携が崩れる。

 崩れた一角を突くように、影が滑り込む。

 さらに一体が踏み込んだ。

 狙いは、リアン。

 低く滑り込む軌道。

 速い。

 視界が追いつかない。


 ――止められない。


 その瞬間。


 リリスが、無理やり、踏み出していた。

 地を蹴り、リアンの前へ割り込む。


「……っ」


 迷いはない。

 ただ、その一撃を受けるために。


 次の瞬間――

 衝撃。

 小さな体が弾かれ、壁へ叩きつけられる。

 鈍い音が響いた。

 視界の端で、リリスが崩れる。

 それでも、意識は途切れていない。

 リリスは顔を上げる。

 その視線は――リアンへ。

 ただ、それだけを追っている。


 リアンの奥で、何かが揺れた。


 ――やめろ。


 感情が、軋む。

 だが止まらない。

 包囲が狭まる。

 押される。


 そのとき。

 夜織が踏み込む。


 狙いは――リアン。


 一直線に間合いを詰め、

 刃が振り下ろされる。


 捉えきれない。

 回避も、防御も――間に合わない。

 防げない――そう思った、その瞬間だった。


 リアンの内側で、何かが弾けた。

 

 ――まだだ。


 終わらせない。

 意志に応えるように、

 光が溢れ出す。

 青白い光。

 静かに。

 だが、確かに強く。


 振り下ろされた刃が――触れる。

 次の瞬間。

 弾かれた。

 鈍い音が弾ける。

 刃は届かない。

 見えない壁に阻まれるように、押し返される。

 踏み込んでいた夜織の動きが、止まった。


 リアンの体から、青白い光が溢れ出す。


 空気が震え、

 その場の全員の動きが止まる。


 誰も動けない。

 ただ、その光だけが揺れていた。

 取り囲む夜織の一人が、息を呑む。


「……これは――」


「……予言の光……?」


 その言葉に。

 アルバートの視線が、はじかれるように後ろへ向いた。


 リアンの背。


 そこから――

 青白い光が、静かに滲んでいた。

 それは、確かにそこにあった。

































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作品を読み始めてまずインパクトを受けたのは、頭の中にすっと入ってくる詩的な文章。素晴らしいです( ´ ▽ ` ) 変な言い方になりますが、感じたままを述べると、「綺麗な小説だな」と思いました。 この六…
コメント失礼します。 予言に沿いながらも抜け道を探した王。それは父としての感情か、王妃の意志を汲み取ったのか、ほかにも理由があったのか。色々想像しながら読みました。 リアンさんとティアラさんの出会いで…
刺客は、王家直属ということで、この人たちが弱いようなら王政が維持できているわけもないので、やはり手強いのですね。ビッシビシ追い詰められていく様が、容赦のないこの感じが刺客らしくて、とても良かったと思い…
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