十四・五話 混迷する論議
窓から生暖かい風が吹いた。
いつの間にか吊るされていた風鈴がチリンと鳴り、清涼感の欠片もない夏の風情を漂わせる。
「結論は出します。出しますけど、出るわけがないんです。だって、最初から結論が出ない話を考えようとしたんですから」
吐き出されたタバコの煙がゆらゆらと昇っていった。
「『必要悪はあるけど、必要悪という大義名分を理由に行われるものは単なる悪だ』って話に似てるね」
残暑の蒸し暑さが残る部屋はやはり蒸し暑く、だらりと垂れた頭を、たらりと汗が垂れる。
「運命もそんなもんアル。決められていると理解した上で、自分で決めて歩くアル」
ぐるぐると頭が回り、ぐらりと目が回る。暑さと煙と言葉に酔ったような心地だ。
「ただ矛盾しているだけじゃないか」
酔いのままに迷路へ足を踏み入れれば、結果など目に見えている。
――しかし、やはり酔っているようだ。
「そうやって、いつまでも延々と回り続けるんだ」
何が嬉しくてそんなことをするのか。
「分からないんですか? 『いっそ終わらなければ』なんていう、青春漫画と同じですよ」
そんな台詞はよく聞く。この夏が、この時が終わらなければどれだけいいか。そんな言葉で哀愁を演出する。
「終わってほしくないのだから、終わりのないものを求める。そして、終わらせるために苦心する」
堂々巡りだ。
「なら、問題提起しましょう」
静かな声。
「終わらないはずの論議が終わりました。終わらないはずのものが終わったのですから、当然、その答えは間違っています。しかし、当人は出るはずのない答えを出せたと歓喜しました。その人が出した答えは本当に間違っているのでしょうか?」




