中庭に畑i
楽しんでいただけると嬉しいです☆彡
「レイ、中庭に畑作って良いか?」
寝ぼけ眼のレイにお伺いを立てる。
「ひろむ? 中庭に畑?」
「俺の作る果樹園とか畑って生気に満ちてるらしいから、ここでも畑つくれば…」
「わかった、中庭を好きに使ってくれていい。」
「それとちょっと畑を作る為にお願いが…」
「なんだ。」
「ちょっとだけ家に戻ってもいいかな? もちろん、すぐ戻ってくるから。」
「いいだろう。」
「え? 本当に良いの?」
まさかの許可…いいのか? 俺って本当に客人扱いだったの?
「あぁ、ただし。護衛ともう一人誰かを付き添わせる。」
「じゃぁ、アニマとエドでも、いいかな?その二人くらいしかしらないし。」
「いいだろ。中庭に護衛、アニマだったか?と来てくれ。」
そう言ってレイは行ってしまった。
俺はアニマをともない、中庭に行くとレイとエドはもう来ていた。
「3時間ですませられるか?」
「うん、たぶん3時間あれば大丈夫だと思う。」
「わかった、3時間後にまた扉を開く。それまでに用事をすませて戻れ。」
「わかった、ありがと。」
中庭に現れた扉の向こうは俺の…ティの家の畑だった。
「すご。一瞬で帰れた。」
「王は偉大ですから。」
「王、すごい。 オレ 尊敬。」
俺は手早く、農具と苗とタネと…と色々開墾に必要そうな道具をそろえた。
苗とは別に少し育ったりんごの木も1本根っこから起こしてもっていくことにした。
「私は少し席を外します、1時間ほどでもどりますので。」
そう言ってエドはどこかにいってしまった。
それと、小さい目の養蜂箱と…
「ひろむ」
突然名前を呼ばれて振り返るとティがいた。
「ティ…」
駆け寄りたかったが我慢した。
今ここでティに触れたら向こうへ戻るのが嫌になるのは目に見えていたから。
だからティの声に気づかぬふりで急ぎ準備をすませるとちょうど扉が現れた。
「ごめん、ティ。俺は大丈夫だから。 少し待ってて。事情はまた説明しにくるから。」
本当にこれるかどうかはわかんないけど…
俺たちは荷物を運び扉に飛び込んだ。
ティが手を伸ばしていたが俺はそれには答えられなかった。
ごめん、ティ。
後ろ髪惹かれる想いで扉に入ると後ろでバタンと扉の締まる音がした。
あっと、振り返ると扉が半分消えかけていた。
「ティ…」
思わずノブを回して向こうに戻ろうとしたが、ノブは俺が手を触れる前に消えてしまった。
「おかえり。」
レイが迎えてくれた。
ティ…きっと怒っているだろうな。
心配かけたのに何も言わずに消えちゃって。
があああああん
ずぅぅぅぅぅん
「なんだ、このうっとおしい落ち込み方は」
「ティがひろむに捨てられたんだと。」
「捨てられてなんか…捨てられてなんか…ないんだからね。」
泣きそうなティリエルの声にサーベルがやれやれと首をすくめる。
「なんだ、それで落ち込んでいるのか。落ち込んでいるところすまんがな。我はまた向こうへいってくるぞ。」
「ダメですよ。なに言ってるんですか、これから戦です。あなたにはここにいてもらわないと困ります、カー」
「クラウス、我は向こうにいきたいんだ、待たせている者がいるからな。」
「なんといってもダメなものはだめです。さぁ、ティもいつまでも落ち込んでないで、きりきり働いてください。早くひろむを迎えにいきたいでしょ。」
「でも…ひろむ…」
クラウスの声にも浮上しないティリエルの首根っこを押さえラウスが部屋から出ていく。
「ほら、カーもルゥも戦です。出番ですよ。」
「はぁい…」
不承不承という感じでカーエルとサーベルもクラウスの後に従った。
中庭の唯一日が当たる芝生を掘り、木を植え替えした。
きっとすぐに大きくなるだろう。
俺はそれから毎日中庭を開墾した。
きちんと敷き詰められた石畳を掘り返し、野菜を植えていく。
持ってきた苗やタネはほぼ全部植えきった。
忙しくも充実した毎日をすごし、気が付くと3か月ほどたっていた。
結局あれからティには会えていない。
もう一度戻りたいなんて無理だろうと勝手に考えていた。
エドもレイも毎日中庭に様子を見に来ていた。
「ひろむ、ティリエル殿に手紙かきませんか?」
まさか俺の焦りがわかったのだろうか、エドが突然そんなことを言い出した。
言われて手紙を書こうとしたが、何を書けばいいのかわからなくて書き上げるのに1月ほどかかってしまった。
エドは大使として時折ティのところに行っているらしく、手紙も届けてくれた。
ティに会いたい。すごく会いたい。
ティが俺をただの食糧としか見てなくても良い。
ティに会いたい。
もしかしてもう俺のことなんて見捨ててしまったかもしれないけど、
ティに会いたい。
そんな気持ちを忘れようとするかのように必死で畑や果樹園の世話をした。
毎日、毎日。
そして俺は…倒れた。
あまり食事もとらずにずっと働きづめだったから、おそらく過労ではないかといわれたが、ここには人間をみる医者もいないのであくまでおおよその診断しかできないと言われ、ベッドに寝かしつけられた。
働くことには慣れていると思っていたのに、意外に心の比重が重かった。
眠っているとティの事ばかり考えてしまう。
俺は暗闇の中、独りで立っていた。
右も左も上下でさえわからない、闇の中。
寂しい、寒い、怖い…
ティが恋しい。
ふいにあたたかいものに包まれた。
俺は丸くなってその暖かいものに包まれる。
「ティ…」
小さく呼ぶとその暖かいものがぎゅっと俺を抱きしめた。
「ティ…?」
もう一度呼ぶとまぶたに唇の感触…
突然の覚醒。
ぱちっと目をあけると目の前には羽毛布団…
「ひろむ」
名前を呼ばれて頭が働きだす。
「ティ? え? なんでティ?」
「なんでって久しぶりの再会なのに喜んでくれないのですか?」
「いや、うれしいよ。嬉しいけど、なんでティがここにいるの?ここデーモンの国だよね?」
「そうですよ。悪魔族に勝利したので来ました。」
「意味が分かんないんだけど…?」
ティが言うには俺が帰った日、エドはその日のうちにティに面会を申し込み俺をさらった説明をして、悪魔族にお脅されていて、俺をさらってくるようにエルフの王に化けていたデーモンに命令したらしかった。
悪魔族はデーモン族をだましてこんな魔障の海に沈んでしまう土地に移住させ、しかも食料のないこんな土地で魔障を取り込みなんとか生きてきたデーモンに血と肉の味を覚えさせ人間やエルフを誘拐しては下級デーモンたちに与えていたらしく、何人かのデーモンはすでに悪魔族の言いなりになっていたらしい。
なので、レイは3種族で和平が成立した時点で天使族に一緒に悪魔族を倒してほしいと交渉にいくつもりだったところへ俺が帰りたいと言ったので、渡りに船とばかりにエドを大使として俺と一緒にティのところへ行ったそうだ。
通りですんなりと帰る許可がおりたと思ったらそういうこと…
で、カーとルゥはやはり強くてそもそも少ない悪魔族はアッという間に倒してしまって憂いのなくなったティはここに招待されたということらしかった。
なんか知らない間に色々あったんだなぁっとただ畑の整備に明け暮れてた俺は全部蚊帳の外…
でも、今俺はティの腕の中でぬくぬくしている。
まぁ、終わりよければすべて良しってとこだろうか。
と気楽に考えていると目の前の空間がゆがみまたも黒い人が現れた。
「おのれ、天使族、その異世界人と共に消えろ。」
赤黒く膨張したそいつは自爆した。
ものすごい爆発に、あぁ俺死んだ? でもまぁティと一緒ならそれもまた良いのかな? なんて考えていた。
爆風がやみ、恐る恐る目を開けた。
「ア、アニマ?」
「オレ、護衛。ひろむ 守る。ひろむ 無事 か」
目の前あった小山が崩れ落ちた。
「え…アニマ。うそだろ。しっかりして。」
アニマに駆け寄り抱き起すが浅い呼吸を繰り返すだけでもうなにもしゃべらなかった。
「アニマ、いやだ。目をあけて。」
「なにがあった。」
レイが飛び込んできた。
「悪魔族の残党のようです。」
「ティリエル殿とひろむは無事か。」
「大丈夫です。このデーモンがまもってくれました。」
アニマを抱いたまま動かない俺をティがやさしく抱きしめてくれた。
「ひろむ、あいつは大丈夫だ、頑丈なやつだから。」
そう言ってレイがアニマを別室へ連れて行った。
ティは残務処理があるので、すぐに帰ってしまった。
一緒に帰ろうと駄々をこねられたが、俺はアニマを置いたまま帰れないし、畑もまだ途中なのでもうしばらくこちらに残ることにした。
その夜、俺はなかなか眠れないでいた。
アニマは大丈夫だろうか、あれから俺も見舞いたいと言ったのだが駄目だと言われた。
けがはひどいのだろうか。
俺を守ったせいで誰かが傷ついてほしくないと思いながらも俺にはどうしようもなかった。
俺は無力でなにもできない。
誰かの助けになることもできず、ただ足手まといなだけ。
なのに自分の欲望には忠実だ。
ただティのそばにいたい。
それだけのことさえままならないふがいない自分に涙がでる。
「ひろむ、眠れないのか?」
いつの間にかレイが部屋に入ってきていた。
「レイ、アニマは?無事なの?けがは?」
勢いで尋ねたがレイは無言で首を振った。
「うそ…でしょ? なんとかならないの?」
「ひろむが気にすることじゃない。あいつは職務を全うしただけだ。」
「そうかもしれないけど、でもいやだ。おれのせいで…俺の…」
「お前のせいじゃない。あいつも本望だろう。」
「なにが、俺なんかを守って…」
「なんかじゃない。お前は唯一無二。この世界を救う者だ。」
なんか話がいきなり大きくなった…
この世界を救う?
俺は畑つくるくらいしかできないけど…?
それでいいなら頑張ろう、それしかできないのだから。
世界を救うとかそんな大それたことわかんないし。
ただ、できることをしよう。
アニマも果樹園を楽しみにしてくれていた。
レイの手がやさしくて俺はいつのまにか眠っていた。
夢の中でアニマが俺の果樹園で楽しそうにしていた。
「花 きれい オレ はな 好き。」
何時間も飽きずに花と花の周りを飛び回る蜂を楽しそうに見ていたアニマ。
果物も食べてほしかったなぁ
そんな夢がうれしくて、少しだけ気が楽になった。
誤字脱字、文章ミス等多々あると思いますが、見つけ次第訂正していきますので、ご容赦ください。




