予算案は水に流せない:生徒会室/解編(後編)
⚠️注意⚠️
このエピソードは後編となります。是非前回、前々回を読んだ上でお読み下さい。
前回のあらすじ
生徒会室に予算案の紙があるだろうとアニ研のケイ、道木、長町は生徒会室に向かった。ところが彼らが生徒会室のありそうな場所を探してもそれは見つからなかった。アニ研兼書記の水書が朝、生徒会室に持っていったという証言があったのにも関わらずである。しかし、生徒会の副島、会津の何気ない日常会話からケイと道木はあることに気付いた。予算案が唯一部屋の中で探してない場所、ゴミ箱に入っているかもしれないことだ。実際、それはゴミ箱に入っており、見つけたと同時に誰が犯人かの確信がついたのだった。
思いもよらない事実、予算案の紙は生徒会室のゴミ箱に入っていたのだ。誰がこんなことをしたのか、俺と道木は既に見当がついている。あとは犯人になぜこんなことをしたのか聞くのみだ。
「とりあえずこれをやったあの人に問い質そう。」
そう言って俺と道木は──
──会津先輩へと足を運ぶ。
「会津先輩、あなたがこの予算案をここのゴミ箱に捨てたんですよね。」
「お、予算案を見つけたんだな、感心だ。しかし、なぜ俺がやっただなんて言うんだ?根拠でもあるのか?」
「うっス、あるっスよ。じゃあまず根拠マルイチっス。ワタシ、さっき鍵貸出表を見たんスけど、今朝ココの鍵を借りた人が会津先パイだったっス。んで、次に生徒会室の鍵が貸し出されたのが放課後で、借りたのは会長だったんスよ。さっき、水書先パイが予算案を会長の机に置いたって言ってたじゃないスか。仮に放課後無くなったとして、放課後真っ先に開けた会長が気付かないとおかしいっスよね。つまり、今朝にここで無くなったんスよ、会津先パイが鍵を開け閉めしたココで。」
「それで根拠二つ目です。これ、ゴミ箱で見つかったんですよ。何が付いていると思います?」
「……なんだ?」
「“鼻水”です。まあほぼ乾き切ってますがね。多分この紙で鼻を擤んだんでしょう。そして、おそらく今朝この部屋に来た人で鼻を擤む必要があった人……花粉症の人はあなたしかいません。」
「君は何が言いたいのかな?まさか俺が予算案で鼻を擤むなんてバカなことするわけ……」
「それを会津先パイはしたんスよね〜。よっぽど今朝鼻を擤みたくて、でもティッシュがない!何処か使える紙〜あれ、会長の机の上のやつ使おう!あれ?これ、アニ研の予算案じゃん!しまった〜。そして、こんな愚行を繰り返さないためにさっきティッシュを買ってきた、そうっスよね?」
「……うッ!!……し、しかし、たとえそんなバカなことをしても会計の俺が予算案を捨てる分けないだろ!?そんなことして俺にもメリットはないし……だから俺じゃ……」
「俺、ずっとなぜ“頂先輩が”予算案を探しているのか気になったんですよね。多分、会計がまとめる前に会長が目を通す決まりがあったのではないのですか?その必要があったって考えるとこれを捨てた理由は、他の人……というか頂先輩にこんな愚かなミスをやらかしたことを悟られるのが──」
「「──恥ずかしかったから。」」
「隠せばいいものを、如何せん鼻水が付いた紙をバッグの中に入れたりするのを躊躇ってゴミ箱に捨てたばかりに結局、証拠が付いたまま見つかるとかいう足元すくわれる結果になるんスよ。まあ隠し場所がバッグでしたら本格的に詰んでたんスけどね。」
「ただそうなると、なぜゴミ捨て場に持って行かなかったかよく分からないんだよな。どうせなら今日ゴミの日だから捨てればよかったのにと……」
「まあ、それは私が既にゴミ替えして持ってっちゃったからじゃないかな。」
「み、水書先輩!?話聞いていたんですか?」
「うん。あんた達の推理、よーく聞いてたわ。それで話の続きなんだけど、私が既に持ってっちゃったせいでゴミ箱の中身がほぼ空だった、つまり予算案だけが入ったゴミ箱だったはずなんだよね。そんなほとんどゴミが入ってない袋をゴミ捨て場に持っていくのも気が引けたんだろうね。会津は“ヤサシイ”、からね。そんなヤサシイ会津が、よもや重要な紙で鼻を擤むなんてやらないよ、ね?」
水書先輩の皮肉と嘲笑が入り交じった言霊が会津先輩を襲っている。と、ここで颯爽と長町先輩が堂々とした態度で出てきた。
「会津くん、君がやったことは重大な犯罪行為である!私たちの推理が間違ってるというのなら反論しなさい!でなければ観念しなさい!!」
私たちの、って長町先輩は特に……まあいいや。あと別に犯罪ではないと思いますよ……とは言っても、これは許されざる行為なのには変わりない。さて結果はいかに。
「……はい。私がやりました……。今朝どうしても鼻が擤みたかったのに、ティッシュどころかどこにも使えそうな紙が見つからず、つい出来心でアニ研の予算案を使ってしまいました……。」
さっきまでの高圧的な態度とは一変して、かなりへりくだった態度で、そして更に床で正座している。
「じゃあなんで捨てたのかしら、会津くん?」
「一年の彼らが仰った通り、予算案は私がまとめる前に必ず頂に見せる決まりがあるのですが、勿論こんな私めの鼻水が付いた紙を見せる訳にはいかないじゃないですか。そうです。“恥ずかしかった”のです。」
「へー、そんな理由で私たちのアニ研の予算をチャラにしようとしたんだ〜。おい、アニ研の野郎共、こんな畜生、許せねぇよなあ!?!?!」
「「「オー!!!」」」
……つい流れに乗ってしまった。にしても普段からは想像できない長町先輩の口調だ。これは相当ブチ切れてるぞ。
「じゃあさ会津くん、私の“お願い”、聞いてくれるよね?」
「……はい、なんでしょうか。」
「ウチらの来年の予算、今年度の倍増しでお願い♡」
「!?そ、それは……」
「あれれ〜?会津くんって確かボンボンだよね?だから自腹切ってくれるんだよね?違うの?そうだよね?ね?」
ありえない念押しだ。
「ッッ!!……そ、それだけは……」
「へー、じゃあこの学校中に会津くんの所業、バラしちゃおっかな〜。それを知ったみんながキミの愚行を嘲笑って、そして信用を失うだろうね。そして最終的にキミの高校生活はオシマイだね!どんまい!!」
鬼か。いくらなんでも言い過ぎだしやり過ぎだ。でも長町先輩の苦労が水泡に帰すところだったことも事実だ。今だけはキレさせてあげよう。
「そ、それだけは!!」
「さっきから聞いてればそれだけはそれだけは……ねえ、どうなのかな?会津くん?」
「……はい、自腹切って差し上げます。来年度のアニ研の予算は今年度比二倍とさせていただきます。そのため、今回の事件はこれでご勘弁いただけないでしょうか。」
──土下座して頭を垂れる会津先輩に怒りが込められた冷徹な眼差しを送る長町先輩と水書先輩、むしろ少々哀れんでる様子の道木、もはや呆れ顔で見つめる頂先輩と副島先輩……。お通夜にも似た静寂な空気の下、この事件は幕を下ろした……
──そして時は流れ、今では部活の指揮は我々の代が執っている。今となってはやはりあの事件にはむしろ感謝を述べたい。少々会津先輩への罪悪感はあるが、今はただこの懐の余裕感に浸るのだ。
「いや〜、にしても助かったよね、会津先パイの自腹には。古かった家具も一新し、オマケにハイスペックのデスクトップも買っちゃって、贅沢三昧だよ〜。」
「ああ、最高だよな。しかし、来年度の予算はどうなるんだろうな。」
「会津先パイの自腹もないし……てことは予算半減……?」
本来なら例年通りと言うべきだが、贅沢を味わった生活からは戻ることができない。
「やっぱそうだよな……ああ、来年度の予算案どうしようか……。今年度こんなに使ったなんて書けないぞ。……ちなみに今の所、予算から引いて何円使えそうなんだ?」
俺がそう言うと道木はピースサインを出した。
「……20万円?」
「……2000円。」
──!!……夢か。新歓のために公開する予定のアニメを描いている時に眠っていたようだ。それにしてもはるか未来であったが、あまりにも恐ろしい夢だ。しかし、明日は我が身。たしかにあの時会津先輩の自腹を切るとは言っていたが、だからといって贅沢三昧は避けるべきだ。ああ、長町先輩の管理能力はなんて凄まじいのだろう。来年度同じことをやろうに我々でできるのだろうか。そんな不安を胸に再びアニメを描き進める。
「ねえケイ、来年度の予算でハイスペックなデスクトップ買お〜。」
「いや、ここは慎重に検討を重ねた上で購入すべきだ。そもそも本当に会津先輩は自腹を切るのか?相当な額だぞ。」
「大丈夫、それについては安心して。ちゃーんとあの日の後、本人に確約を貰ってるから。……お金の問題は簡単に水に流せないからね。」
あの事件以来、少し長町先輩のことが怖い。とは言いつつお金が関わる問題は慎重に考えるべきだ。だからこそせっかくの予算を無駄に使ってはいけない。
「……ああ、このパソコン重いな!」
「ほらー、ケイ。だから言ったじゃーん。」
「……買っちゃうか。」
「……買っちゃお。」
──無駄使いだのなんだの知らないが、とりあえず来年度のアニ研は豪遊に浸ることにしよう。
予算案は水に流せない~完~
最後までお読み下さり、誠にありがとうございます✨✨感想などぜひお待ちしております✨✨
続きは未定(ネタが思いつかない……)なので今しばらくお待ちください✨✨次回も乞うご期待!!
by田中ゴン左衛門




