我ら探偵団・不可能犯罪研究会:第一話
どうやら先日の新歓公演は成功したようで、我らアニ研には度々新入生が部室へ訪れるようになった。今、俺と道木の目の前にいるのも新入生で、新美さんと言うらしい。
「先日の新歓公演でのアニメ、凄かったです!!」
「へへ〜、どうもっス!!」
「……まあ、楽しんでもらえて良かったよ。」
新歓用……もとい今年度上旬のコンテストに向けたアニメを描きつつ、俺と道木が彼女に呼応するように返答した。未だにこの間の新歓公演について、先輩方のことを許してはいないが、まあ最終的に新入生が来ればなんでもいいか。
「……へぇ、こんな感じで作っているんですねー。なんか大変そう……私でもできるんですかね?」
「大丈夫!所詮は低クオリティなんだから誰にだって、なんならワタシでもやってこれたんだから!」
「て、低クオリティだなんてそんな……」
「たしかに大変に思うかもしれないけど、意外とそうでも無いぞ。過去の作品とか見てみれば大したことないのも割とあるからな。」
「そうだよね〜。だから新美サンが初心者だとしてもできるよ!」
新入生を安心させるためといはいえ、俺と道木は歴代の先輩方を愚弄するという最低な行為をしている。恥を知らねば。
「へぇー。でも、低クオリティかどうかはさておき、どんなものがあるのか見てみたいです!」
「ああ、そうだな。ちょっと待っててくれ。」
そう言って俺は歴代の作品が眠るDVDケースの数々を漁った。
「あ、これとかめっちゃヒドかったよね!」
「……せっかくならいいものを観たいです。」
そりゃそうだ……あれ?
「待て、これだけ制作年度が書かれてないぞ。」
「なになに──『我ら探偵団・不可能犯罪研究会』……?なんだこりゃ?」
「あ!じゃあそれ観ましょう!」
アニ研では制作したアニメは後世に語り継ぐためにDVDに残して、そしてそのDVDに制作年度と制作した代を書くのだが、これにはその類いが一切書かれていない。つまり、このDVDは制作者不明で全くのブラックボックスだと言える。そんなものでもいいのか?
「これ、本当にアニ研のやつなのか?」
「まあまあ、新入生サマが観たいと言っていることだし、ここは大人しく観ましょうや。」
道木に急き立てられ、俺は流されるようにDVDをパソコンのDVDプレイヤーに入れ込み、それを再生した。すると、仮面を被った奇妙な二頭身が甲高い男の声で喋り始めた。
──『レディースエーンジェントルメーン!皆様ご機嫌よう、私は皆様の心の愉快犯“マインダリー・クライマリー”でーす!!
さて、このビデオを視聴している君たちがかの有名な探偵団、“不可能犯罪研究会”の少年少女という前提で進めますが……まあ、このビデオはある種、君たちへの挑戦状だと受け取って貰って構いません。
まあまあ、前置きはこの辺にして……早速こちらをご覧あーれ!!』
そう謎のキャラが言うと、映像は一枚の写真に移り変った。その写真を見て、俺たちはただ絶句するのみだった。
『……さて、これは正真正銘“死体の写真”です。彼はとある連続殺人事件の第一の被害者なのです。名前は──』
映し出された写真は、ファンタジー世界に出てくるような戦士の鎧を着た男の人が道路で仰向けになり、これまたファンタジーに出てきそうな杖で胸を一突きされているものだ。顔の横にはダイイングメッセージのように“M”と血文字で書かれている。
『さて、次はこちら……こちらはその事件の第二の被害者です──』
次に映し出された写真も、そういうもので出てきそうな僧侶の格好をした女の人がこれまた道路でうつ伏せになり、頭から血を流し倒れている。頭の近くには血塗られている、魔導書と呼べるような分厚い本が落ちており、そのすぐ近くにも同じく血文字で“G”と書かれている。
『そして、こちらの三人目が最後の犠牲者となりました──』
出された写真にはまるで絵に描いたような勇者の姿をした男の人が、前の二人とは違い畳の上、おそらく室内でうつ伏せになって倒れている。これまた前の二人とは違って特に目立った外傷もなく、しかしそれでも前の二人同様、顔の隣に血文字で“C”と書かれている。
『えー、これまで連続殺人事件の被害者を見てもらいまして、さあこれから犯人は誰だ、となるところですが……実は犯人は──』
そう言って出された映像は女の人が警官に連行されているものだった。この女の人と被害者三人は共に仲良し四人組だったらしいが、トラブルでその女の人が三人を殺めてしまった、とされている。しかし、その女の人の証言によると“やってない”らしい。
『さて、ここまで連続殺人事件の話をしてきましたが、ここからが本題でーす。一体、“三人目の被害者の死因”はなんでしょうか!?それが君たち不可能犯罪研究会への挑戦状となります。
その謎を解ければ“私の正体”に一歩近づけるでしょう……それではまたいつかお会いしましょう──』
──そして映像は終了した。
「なんだこれは……」
「ワタシ達はコイツの言う不可能犯罪研究会じゃないし、ほんとにこのビデオはなんのために作られたんだろうね。」
「なんか悪いな。多分、全然関係ないやつ見せちゃって……」
俺が新美さんにそう言って恐る恐る顔を伺うと、むしろ光り輝くほど満面に期待感を乗せていた。
「これ、すごく気になります!ぜひ、この映像がなんなのか一緒に考えてみましょう!」
「あらそう?……うんうん、それもいいね!賛成!」
「おう……そうだな。」
何はともあれ新入生に喜んでもらえたようで何よりだ。しかし一体全体、これの正体がなにかすら分からない。とりあえず今部室にいる唯一の先輩、長町先輩に聞いてみるか。
「長町先輩、ちょっといいですか?」
ヘッドフォンで外界を隔たりつつ、コピー用紙にペンを走らせる長町先輩に声をかけると、そのヘッドフォンを首まで下げ、黒く光を放つ髪を揺らしてこちらに振り返った。
「ん、家内くんどうしたの?」
「あの、過去作のDVD置き場に置いてあったものなんですけど、このDVD見覚えありますか?」
「うーん──見覚えないわ。でもタイトルだけ書かれたDVDなんて見た事ないから、もしかしたらアニ研のやつじゃないんじゃない?ま、とりあえず私もちょっと見ようかしら。」
そう長町先輩が言い、再度そのアニメを観た。どうやら長町先輩にはウケが悪かったらしく、微妙な反応をしている。
「なにこれ……こんなんアニメでもなんでもないじゃない……」
「でもマインドなんちゃらはちゃんと動いてるし、ここだけアニメっぽいっスよね。」
「大分局所的じゃない。そもそもこれって誰に向けた映像なのかしら。コンテストやイベントで見せるためでもないし、まず不可能犯罪研究会って誰なのよ。」
「第一、オチがないですよね。いくら俺たちの先輩方とはいえ、未完成なものをDVDで残して意味なんてあるんでしょうか。」
「ま、新入生に見せるとしても、こんなよく分からないやつじゃなくてもうちょい面白いやつあるでしょ……例えばこれとか──」
「──待ってください!!」
!!突如そう叫んだのは新美さんだった。
「その……私、この作品の謎を解いてみたいんです!!だから部長さんも協力してくれませんか!?」
「そうっスよ、長町先パイ。誰より関心があるのが他でもない新入生なんスからね。」
「……はいはい、わかったわよ。正直、ちょっと作業に飽き飽きしてたところだからちょうどいいわ。」
「──!!ありがとうございます!!それじゃあアニ研改め、“『我ら探偵団・不可能犯罪研究会』研究会”設立でお願いします!!」
「……長いしいっそのこと“不可能犯罪研究会”でいいんじゃない?この作品が私たちへの挑戦状って体でさ。」
「それもそうですね!じゃあまた改めて“不可能犯罪研究会”設立でお願いします!!」
「よっし、じゃああの三人目の死因について考えていくっスよ〜!!」
「ああ、そうだな。」
そしてたった四人の縦割り探偵団が結成され、『我ら探偵団・不可能犯罪研究会』の謎を解き始めた。
第二話に続く
ここまで読んでくださりありがとうございました✨✨さて、かのDVDや不可能犯罪研究会の正体とは一体なんでしょうか?次回から解き明かして参ります……!!
感想などお待ちしております!次回も乞うご期待!!
by田中ゴン左衛門




