第68話 瞬間移動を学ぼう(3)
「それで、目印となる魔力を置くにはどうしたら良いんだ?」
「ノアよ、土魔法でそこにブロックを作ってみるのじゃ」
「良く分からんが、クレイ」
土のブロックが地面に出てきた。
「今は土のイメージじゃったから、土の塊が出来上がった訳じゃ。
では、目印は何で出来ておるか? と言う事じゃ」
「さっき、ヴィーヴルが瞬間移動していた時には、何もなかったと思うが……」
「目に見えておらんだけで、存在はあったのじゃ。
純粋な魔力の欠片が置いてあったのじゃ」
「魔力の欠片?」
「行使者によって形は様々じゃが、妾は三角形にしたものを地面に打ち込んでおるのじゃ」
「そして、ノアよ、先ほどの魔力の込め方では、瞬間移動ができんのじゃ」
「そうなのか?」
「瞬間移動をする時には、先ほど、ブロックを作るときに込めた何倍もの魔力が必要となるのじゃ。
また、その魔力は妾が『紐』と言っているように、細くなければいけないのじゃ」
「太いと駄目なのか?」
「そうなのじゃ。
妾も色々試してみたのじゃが、このくらいの太さが限界だったのじゃ」
そう言って、親指と人差し指で輪っかを作った。
大きさは大体、1cmも無いぐらいだった。
「そして、瞬間移動の場合には、最初に紐に与える魔力の濃さを決めてから、その紐を目印に向けてどんどん伸ばしていくような感じなのじゃ」
「小さい紐をイメージして、その中を満たしていくのでは駄目なのか?」
「では、ノアは1cmぐらいの大きさで、先ほどと同じブロックが作れるかの?」
「え?……クレイ」
出来上がったブロックは、ブロックとはとても呼べない代物だった。
1cm四方の中に、うまく魔力を収めることができずに、魔力が横からあふれていた。
また、魔力の密度が低いので、持ち上げることも出来ずに、すぐに崩れていた。
「そういう事なのじゃ。
ノアは魔力を放出する時に、ある一定の濃度を広い範囲で放出していたのじゃ。
そうなると、その範囲から外れている魔力は濃くなることなく、零れ落ちておったのじゃ」
「そうか……だから、最初に濃度を決めておかないと駄目なのか」
「まぁ、もう一つ。
ノアは例えばここからドワーフの家の前まで、どの位の紐を作ればよいか分かるかの?」
「それは分からないかな。
歩いてどの位って、掛かる時間は分かるけど」
「先ほどの方法で、必要な紐の長さをどうやって用意するのじゃ?」
「あ、分からないから、作れないのか」
「紐をどんどん伸ばしていく場合には、どうじゃ?」
「成程。
長さが分からなくても、どんどん紐を作って伸ばしていけば辿り着けると言う事か」
「そうなのじゃ」




