第18話 ドラゴンの巣への引っ越し
パーティから抜けて、第二の人生の始まりとばかりに街外れの家を買って、のんびり暮らし始めた。
はずなのに、何の因果かドラゴンの巣へと引っ越さなければいけなくなった。
龍の加護を得て、途轍もなく強くなったが、出来ることならパーティに居た時に強くなりたかった。
そうすれば、こんな隠居みたいな真似をしなくても済んだし、龍の用心棒をすることもなかったはずだ。
もっとも、此処に来なければ龍の加護を得ることもなかっただろうから、人生は何がどう転ぶか分からない。
そんなことを考えながら歩いていたら、昨日、ヴィーヴルと会った湖へと着いた。
着いてぼーっと湖を眺めていたら、ヴィーヴルが瞬間移動してきた。
人間の姿で、今日は服をきちんと着ている。
「なんじゃ? 残念か? 昨日は照れておったのに」
ヴィーヴルが微笑んでいる。
美人の微笑に、目が釘付けとなる。
「いや、そんなことはないよ。
時間的に、丁度良かったようだな」
半分、図星を突かれていたので、話の矛先を変えた。
「お主が来たら分かるようにしておいたのじゃ」
「そんなこともできるのか?」
「結界の応用じゃ。
ノアも魔法に慣れたら使えるようになるかもしれん」
「おぉ、じゃあ瞬間転送もか? ヴィーヴルは今日も昨日も使っていたろ? 俺も使えるようになれるのか?」
「まぁ、今後の練習次第じゃな。
使うに必要な魔力は加護により十分にある。
あとは、どのように魔力を具現化するかというイメージを持つことが必要なのじゃ」
「いまいち分からないが、教えてもらえるのか?」
「あぁ、妾が暇な時は構わんぞ」
「よろしく頼む」
「うむ、それで、荷物はそれだけか?」
「あぁ、これ以上は持ってこられそうになかったからな」
「ふむ、では行くか」
そう言って、ヴィーヴルは手を差し出してきた。
「妾の瞬間移動は、妾の触れているものも一緒に移動できる。
なので、ノアに触れておれば一緒に移動できるのじゃ。
荷物を持って、手を出すのじゃ」
「てっきり、龍の姿になって乗せていってもらえるのかと思っていたよ」
「それだと目立ってしまうのでな。
できる限り目立ちたくはないのじゃ」
俺は荷物を持って、ヴィーヴルが差し出した手を握った。
小さい手だ。
思いっきり握ったら、潰してしまうんじゃないかと思えるくらい、か細い小さい手だ。
「そんな握り方じゃ、途中で逸れてしまうかも知れんぞ」
ヴィーヴルが微笑んでいる。
そんなこともあるのかと思い、手を強く握った。
「冗談じゃ。
そんなに緊張せんでもよい。
移動は一瞬で終わる。
では……いくぞ!」
そう言った直後に目の前が一瞬、真っ暗になったかと思うと、目の前に洞窟がある森の中に居た。




