第17話 遭遇後の帰り道のこと
家に帰ってヴィーヴルの住処へと引っ越しをする。
あれよあれよという間に、ヴィーヴルの用心棒をやらされることになった。
用心棒をやる代わりにと龍の加護を貰った。
腕力がどれだけ増えたかは分からないが、今後試す機会はあるだろう。
問題は魔力の方だ。
今まで俺は魔法を使うことができなかった。
それが、加護を貰ったら魔法を使えるようになった。
ちょっとファイヤーを打ってみただけで、1mもの火の球が出た。
本職の魔術師でも2~30cmぐらいの火の玉が精々だろうけど、それでも威力としては申し分ないはずだ。
加護を貰っただけの俺があれなのだから、ヴィーヴルが本気で打ったら……
国が壊滅するんじゃなかろうか?
でも、人化した時は美人なんだよなぁ。
あそこまでの美人は、ここ最近見なかった。
ヴィーヴルの事を色々考えながら歩いていたら、遠くの方で何かが動いたような気がした。
草陰に隠れて、動いた方の様子を見た。
ゴブリンが2匹いた。
2匹ならば、加護を貰う前の状態でも問題なく狩れるただろう。
安全に狩れるのならば、それに越したことはない。
『ギギッギッギッ』(今日は木の実だけか)
あれ? ゴブリンの言っていることが分かるぞ? どういう事だ?
『ギギギッギッギッ』(何も無いよりいいだろ?)
うん、分かるぞ……分かるけど、もう少し様子を見るか?
『それで、なんで、人間が襲ってくるんだって?』
『言葉が通じないからな』
『言葉が通じなくても、そのまま通り過ぎればいいだろ?』
『何言っているのか分からないのに、そのまま通り過ぎれるわけないだろ?』
『なんで?』
『なんで? って、お前は動物の横をそのまま通り過ぎるのか?』
『いや、狩るだろ。
食料だし』
『それと一緒だよ。
言っていることが分からないから、戦いになるんだよ』
『じゃあ、人間を皆殺しにすればいいんだな』
『皆殺しって、どれだけいるのか知っているのか? 俺たちよりずっと多いらしいぞ。
それに、俺たちよりずっと強いしな』
『見つからないようにしているのが良いってことか」
『そういうことだな。
動物だって、俺たちに見つからなければ生きていけるだろ』
隠れてゴブリンたちの会話を盗み聞きしていたら、いつの間にかもう、手の届きそうもない所まで行っていた。
例え手の届くところにいたとしても、今の気分では襲えないだろう。
言葉が通じないから躊躇なく狩ることができる。
言葉が通じたとしたら、戦う意思のあるものとは戦えると思うが、命乞いをするものや戦う意思のないものとは戦いにくいだろう。
今まではゴブリンと動物は、心の中では同じように扱っていたと思う。
いや、人間を襲うことがある分、ゴブリンの方が狩りやすかったのかもしれない。
何かモヤモヤしたものを胸の中に抱えながら、その場を後にした。
それにしても、何故、ゴブリンの言葉が分かったのか?
最近の出来事で一番の変化は、龍の加護を得たことだろうから、何か関連があるのだろう。
明日にでもヴィーヴルに聞いてみよう。
家に帰って、引っ越しの準備をした。
此処に引っ越してから半年も経たないうちに、また引っ越すことになるとは……




